■紅葉、正気に戻る
先ほどから里奈と頼果から久遠は頭に軽くチョップの洗礼を受けていた。
「あんたさぁ、とうとうNPCの女まで手を出しはじめるとかどんだけよ」
「くず、ばか、あほ」
いわれのない罵倒に久遠は呻く。
「あの状況なら首飾りを取ったら何かあるって思うじゃないか」
久遠は抗議をはじめる。だが、里奈たちからすれば久遠は女と絡むと何かを起こすというのが常だ。警戒するのは仕方がないのだ。
「……ここは?」
久遠が腕の中で介抱していた紅葉が目を覚ます。
「ここは動物園だよ。それから――」
久遠が説明しようとすると紅葉は遮ってくる。
「手つきがいやらしいのでそろそろ離してもらえますか?」
「え? ああ。失礼」
久遠はまさかそんな指摘をされると思っていなかったようで、紅葉から手を離すと自分で立ちあがる。
「まあ、私のように妖艶な女に触れてしまえば魅了されるのは仕方がないこと。先ほどの無礼については不問にしましょう」
「何こいつ? どう見てもぺったんこじゃん。色気とかあるの?」
里奈が思わず発言する。
「ふん。色気を体の体型でしか判断できないとは無様ですね。それに体型で言えばそなたのほうが貧相と言えましょう」
「何ですってー!」
飛びかかろうとする里奈の服を頼果が引っ掴む。
「あなた、NPCに何マジになってるのよ。ちょっと冷静になりなさいな」
「単刀直入に聞く。紅葉、君は何者なんだ?」
「私は住人のようなものです」
その返答に一同が顔を見合わせる。このキャラの存在もあまり知られていないからだ。
「その住人がどうして瘴気に蝕まれていたんだ?」
久遠の問いに答えたのは別の方向からだった。
「それについてはワシから話そうかのう」
行商人であることは一目でわかった。見た目はわかりやすくお爺さんだから行商人翁とでも言うべきか。
「それは瘴気の首飾り。おそらくどこかで精製されたものじゃろうが、場所は――」
翁はふとある方向へと視線を向ける。そちらはスカイツリーのある方向である。そこで作られたということだろうか。
「その首飾りを紅葉はどうやって手に入れたんだ?」
その問いに紅葉は首を横に振る。
「ある時期からの記憶が欠落しています。おそらく私はどこかで拉致されて首飾りを何者かに無理矢理装着させられたのではないかと。かけたのは間違いなくやらしいヤツです」
いやらしいかはさておいて、聞きたい話はたくさんある。
「どうせじゃ。わしらをお前さんらの拠点に案内してくれんかのう?」
話は意外な展開を見せようとしていた。
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