■玲美は認めたくない
玲美はお風呂から上がると談話室にきていた。
空きスペースにはすでに布団が三組敷かれている。
「玲美なら一人で寝れるんじゃないかな」
「ダメよ。頼果ちゃんのときは横で寝てあげたんでしょ。このクランならあなたが一番ボディガードとして役に立つんだから」
久遠と世里が会話をしているところだった。
「それとも私や玲美ちゃんに邪な気持ちを抱いたとか?」
「それだけは断じてない!」
久遠が全力で声を振り絞って否定する。こんな姿を見るのも珍しいかもしれない。
「二人とも身内なんだよ。それに僕を節操なしみたいに言うのはやめてくれよ。さすがに傷つくから」
世里はため息つく。
「みんな久遠ちゃんに対して本気みたいだから言いたくないけど、私は関心しないわ」
「世里姉、何のこと?」
玲美に世里は訊ねられて「しまった」という表情をする。
「それはね……」
ちらりちらりと世里は久遠に視線を向ける。
「玲美はいまのクランからこっちに移ろうとか考えているの?」
久遠が訊ねる。まあ、話題そらしの意味もあるのだろうが、たしかに答え如何によってどこまで言っていいかの判断はつくだろう。
「まだそこまで考えてはいないよ。いまのクランも嫌いじゃないから。ところで久遠、世里姉がさっき言いかけてたわよね?」
話してもらうからと玲美が久遠に無言の圧力をかける。世里はこうなると久遠は白状することを知っていた。
そして案の定、久遠は白状した。
「――ずいぶんとモテるようになったんだねぇ、久遠は」
にこやかに笑みを浮かべているようで玲美の目は笑っていない。
「僕もどうしてこうなったかわからいんだ」
「成り行きだけで行動してるから、こうなったんじゃないの?」
久遠の女性関係は玲美がドン引きするほどの派手さであった。
「久遠はそれで子供でもできたらどうするの?」
「一応、責任はとれるかな」
ころりとした軽い口調に玲美が鬼の形相で睨みを利かせる。
「……すみません」
「世里姉がいながら、何てことなの」
玲美は頭を抱えはじめる。
「私も再会したのは先月だったのよ。その時にはもう手遅れだったかなぁ」
あははと世里も渇いた笑い声をあげる。
「ああ、もういいわ。決めた! 私が久遠を矯正する!」
玲美の宣言に世里はそこはかとなく嫌な予感がするのであった。
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