■移り変わり万華鏡のように
あれから時間が経過して久遠の両サイドを固めているのは由芽と圭都であった。
少し出店で買いこんだ上で校舎の裏庭に来ていた。案の定、人通りはほとんどない。
校内に詳しい人間はいまのところ少ないのだ
「たこせんおいしい」
圭都がパクリとかぶつきながら感想を言う。
「久遠くんは顔が知られるようになったね」
久遠は歩いてるだけで見られていたと思う。それで由芽や圭都と歩いている姿を見てコソコソと話されているような気がした。
「あんまり目立つのは好きじゃないんだけどね」
あれだけ暴れておいてどの口が言うのかと由芽は呆れかえる。
「久遠」
圭都がたこせんを割って、半ば強引に久遠の口に放りこむ。
「あ、おいしい」
「これだけやっていて明日には勝手に片づけてくれるんだよね。ちょっと信じられないなぁ」
テントの設置から片づけまではすべてAISIのプログラム内で行える話だ。明日、学校に来れば今日の学園祭の痕跡など一切残らないはずだ。
「うまく使えばこんなこともできる。よかったんじゃないかな、いろいろな事がわかってさ」
仕掛け人の久遠が至って他人事なのに由芽からすれば信じられなかった。もっと誇らしげでもいいのではないかと思うからだ。
「久遠くんはもっと何かやろうとかは思わないの?」
「僕は特には。当初の目的から脱線もしたしね。これはちょっと反省かな」
だが、実際のところはどうなのだろうか。中島という女性が発端ではあったが、今回の件が何の発展ももたらさなかったとは思えない。
「ねむ……」
圭都が大きくあくびをすると久遠の肩にもたれかかる。
「圭都ちゃん、引っつきすぎ」
「だって人気ないよね。つまりそういうことじゃないの?」
久遠は顔を引きつらせている。自分をなんだと思っているのだ。そんな表情だ。
「こう見えてスケジュールはタイトなんだから。ダーメ。終わったらね」
このデートが終わればすぐに後夜祭の準備が待っている。だが、由芽は不思議と悪い気はしていない。
充実してると思うことさえある。
もっとも久遠と圭都がどう思っているのかまではわからなかったが。
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