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■二人と二人

 晴と世里。宗太郎と瀬名。四人は寮からほど近いファミレスに来ていた。


 これはこれで晴はもう帰りたいという気持ちがある。


「実はね。昨日の夜、あの談室で話をしていたの。そしたら宗太郎に告白されたの」


 瀬名が顔を赤らめながら体をモジモジと揺すっている。宗太郎も照れくさそうだ。


 晴は他人の恋路にまるで興味はない。では、なぜこんなところにいるかというと、朝にたまたま世里の目についてしまったのだ。


「俺、瀬名のことが好きだって気がついたらさ。もう黙っていられなくって」


 ――ふーん。あっそ。よかったね。晴の感想は以上だ。


 この二人に対して何の感慨もないので、当然のことかもしれない。


「二人はいがみ合ってたんじゃなかったの?」


 世里が質問をすると二人ははにかんだように目を合わせる。


 ――やってられねぇ。


 他人ののろけを見せられるのがこうも苦痛とは思わなかった。


「実は長和さんが抜けてからが俺と瀬名でとっちがリーダーかなって話になったんだよ」


 どちらも相手がなるほうがいいと譲らなかったそうだ。それがとうとう対立になってしまったらしい。


「結論は出たの?」


 二人は息をぴったり合わせたように同時に頷く。


「私が宗太郎を支えるわ」


 ――ああ、そうですか。勝手にやってくれよ。


 そうは思いつつも一応は新たなカップルの誕生に晴は心から喝采を贈るよう努めた。


 そして少し離れた席で三人組の一人が特に四人の出方を気にしていた。


「蘭々ちゃん、ジロジロ見すぎだよ」


 そう言って咎めたのは伊織(いおり)であった。


「あの感じだと晴先輩どうこうはなさそうじゃん」


 朝からナポリタン大盛りを食べながら賢司(けんじ)が言う。


 二人は蘭々の気持ちがどこに向かっているのかは十分に承知だ。


 兄の水呉と同じくクールそうな外見だが、恋愛ごととなるとまったく違う表情を見せる。


 まあ、何というか危なっかしいのだ。だから気がつけばブレーキをかけてやる必要があった。


「……先輩、やっぱり年上とか同世代がいいのかな」


 今日はやけに気弱だなと賢司は思った。まあ、たしかに人は見かけによらないというもので晴はクイーンナイツなんかで普通に遊ぶのだが、定まった相手はいない。


 案外と派手なのが真面目そうな久遠だった。久遠のことは尊敬はするが、女性関係ではいっさい真似したいとは思わなかった。


「そんなことはないんじゃないかな」


 伊織がまあまあとなだめる。まあ、それは気休めにしかならんよなと賢司は思った。


「私には素っ気ないし」


 蘭々は自分の胸元に視線を落とす。なるほど色気の部分を気にしているらしい。


「世里先輩って美人だとは思うけどよ。魅力は色気とかそっちの方じゃないよな」


「うん。優しいお姉さんって感じだよね」


 賢司と伊織の客観的な人物評であった。


「私、年齢とかで負けたくない」


 そう言うところは賢司が彼女に好感を持っているところだ。伊織と顔を見合わせて、この少女の恋路を応援してやるかと思うのであった。

お読みいただきありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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