■幼なじみ
「それで二人はどういう関係なの?」
まどろっこしいので里奈はストレートに訊ねた。
「世里姉は従姉で僕たちにとってはお姉さん的な感じかな」
「家も近いしね」
ベタな話を聞かされているなと里奈は思った。
「それで長和先輩はここまで久遠に会いに来ただけですか?」
その質問に世里は首を横に振る。
「私をこのクランに入れてほしくて来たの。先ほどクラン募集を打ち切っているということだったけど、目途は立っているのかしら?」
里奈はそうきたかと顔を引きつらせる。久遠はどうだろうか。
「世里姉こそ大丈夫なの? クランにはすでに所属しているんでしょ?」
「クランは脱退したら終わりでしょ。あなたこそ何を言ってるの?」
久遠はきっぱりと言い切られる。どうも世里の前ではいつもの弁が立たないらしい。
「久遠ちゃんがいるということは玲美ちゃんもいるんでしょう」
すると久遠は「いや」と言う。
「本当は二人で東京へ向かうはずだったんだけど、僕が直前で寝込んでしまったんだよ。そのせいで玲美だけ先に東京に行ったんだ」
それ以来、ずっと探しているということらしい。
「だったら、尚更じゃない。私も玲美ちゃんを探すの手伝うわ」
身内の会話だ。ついていけないなと正直、里奈は思った。何より世里というこの美人が自分の知らない久遠を知っている。
そのうえ距離の取りかたもこれ見よがしである。
それはもう不満も不満である。それは周囲の女性陣も同じようだった。
「駄目かな、里奈?」
久遠の懇願に里奈は困る。どうしたらいいと里奈は由芽に視線を向けた。
「私はいいと思うよ」
由芽は答えに迷わなかった。
「どうしてか聞いていい?」
「東方旅団に入団する人は誰かの紹介だったりだったよね。いきなり見知らぬ誰かを入れたことはなかったはずだよ」
確かに言われてみれば――と博文に里奈は視線を向ける。
「そんな目で見ないでくれよ」
博文は頬を掻いている。
「ま、博文先輩は例外ということでいいでしょ」
実際、博文は東方旅団によく馴染んでいると里奈は思っている。
「入団については東方旅団、あるいは親しいクランリーダーの紹介。最終的には里奈ちゃん――リーダーの判断ということでどうかな?」
なるほど。この際、入団条件も決めてしまおうということかと里奈は得心する。さすが由芽である。
「その基準だと世里先輩は条件に当てはまるわね」
「クランの方針も他のところと違うわけだし、誰彼入れていいとも思わないんだよね」
それこそ以前、里奈と由芽が所属していた三月の戦士団のようになってしまう。
徹底的な選別こそが強い絆を形作るということだろう。
「わかったわ。大枠の案はそれでいきましょう」
これで話はまとまったと見て問題ないだろう。というわけでと里奈は世里に顔を向ける。
「世里先輩、東方旅団はあなたを歓迎します」
「ありがとう。皆さんもよろしくお願いします」
世里がペコリと丁寧なお辞儀をする。本当に久遠の親族かと疑いたくなるほどだった。
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