■里奈は打ち明ける
「東京迷宮の解明、ねぇ」
里奈にとって考えてみたこともないことだった。
あれから話は一旦切りあげることとなり、博文には談話室で寝てもらっている。この流れも随分と慣れたものだ。
自室の机に座ると図ったかのようにコールが鳴る。
『は~い。里奈ちゃん』
真鈴である。
「何でいつもこう唐突かな?」
『私が話したい気分だったの。話を聞きたいと思ってね』
「こんな夜更けに体調は大丈夫なの?」
『それがさ。つわりがひどくてさ……』
真鈴はため息をついている。
『こんなことしてるの母さんに見つかったら怒られるだろうなぁ』
「そう思うんなら、しっかり寝なさいよね」
「へぇ、いたわってくれるんだ。ありがと」
「やめてよ。社交辞令なんだから」
里奈は我ながら照れ隠しとしてはイマイチな返しだなと思ってしまう。
真鈴はニヤニヤとした笑顔だ。照れ隠しはバレてしまっているようだ。
「嫌なことかもしれないけど聞いていい?」
「内容によるかな」
「東京での生活はどうだったの?」
すると真鈴は少し考えこむ。
「退屈だった。お店に来る人は似たり寄ったりの話しかしないし。私もほとんど引きこもってたみたいなものだったから。だから、久遠くんといたときはこんな世界があるんだって驚いちゃった」
それはどことなく四月に入るまでの自分に似ている気がした。
「小学校も退屈さでいうと大概だったからさ。東京に来たら何か変わるかと思ってた」
――そして裏切られた。
これは里奈も一緒だった。
「いまはどうなの?」
「悪くない、かな。いろいろ思うところはあるけど、私は彼と過ごした数日でお腹いっぱいだよ」
懐かしむような、そんな表情を真鈴は浮かべている。
「あ、そうだ。久遠くんにはしっかりアピールできてるの? ちゃんとやっておかないと頼果ちゃんにさきこされるよ」
あ、そうきたかと里奈はたじろいでしまう。
「だ、だって……」
夜長の話はもうしばらく続くのであった。
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