彼はクランを抜けて東京を出ると言った
「片岡さん、三月の戦士団は君を追放することにした」
里奈はその言葉の意味を理解するのに時間がかかった。
「理由の一つとして君をかばいきれなくなった。もう一つは明日付で三月の戦士団のリーダーは小岩君になる」
あの小岩がリーダー? 予想されていたことだが、実際のこととなると身の毛もよだつ事実だった。
「それって私のせい?」
「そうじゃないと言って信じてくれるかい?」
その自信はいまの里奈に備わっていない。
「君は僕をリーダーから引きずりおろすための材料として使われたんだ。君を連れてきた僕に責任の一端があるということでね」
「やっぱり私のせいじゃない」
悔しさで涙が流れる。
「かばいきれなくなったというのは君について不安を感じるメンバーが増えたせいだ。できるかぎり払拭することに努めたけどダメだった。これはリーダーとしての僕の責任だ」
だから君は何も悪くないと翔は言った。
「リーダーの座を譲ったのはけじめのつもり?」
「それもある。でも、年長がいつまでもリーダーというわけにもいけないしね」
いずれこうなるはずだったと翔は言った。
「追放して私に野垂れ死ねってこと?」
「そのことについてだけど、これから三月の戦士団は大きく生まれ変わると思うんだ。そこに僕ら創設側の理念は押し潰される。そんな予感がする」
翔は里奈を見ずに天井を見あげる。
「僕はリーダーを小岩くんに譲った時点でクランを抜ける」
その一言が強烈だった。
「……抜けてどうするの?」
「東京を出る。僕はもう東京に未練はない」
まだ一年近くも東京で過ごす時間があるというのに未練がないなんて、里奈は衝撃を受けていた。
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