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■夕暮れした寮にて

「あらためて。よろしくお願いします。私は羅貴蘭々(らきらら)、一二期生の四月十一日生まれです」


 宴会が落ち着いたあと、蘭々と賢司を連れて東方旅団の面々は寮に戻っていた。


 蘭々は落ち着いた様子で深々とお辞儀をする。


「俺は森杉賢司(もりすぎけんじ)っす。一二期生、五月三日生まれっす」


 いかにも気合いの入ったあいさつである。


「これで男がようやく一人増えたか……」


 晴は心底ホッとしたようだった。


「久遠よ、メンバー募るときはもう少しバランス考えろよな。いつもいつも女ばかり連れてきやがって。いや、まあ、いいんだけどよ」


「……どっちなんだよ」


 晴にとっては悩ましい話のようだ。


「男なら僕もいますよ、晴先輩」


 伊織は自分を指さしながらアピールをする。


「ん……、ああ、そうだな」


 お前を純粋に男としてカウントするには抵抗があると晴は態度で物語る。


「最初に言っておくけど、宴会好きは明里さんたちであって、私たちだけのときはやらないから」


 里奈が最初に釘刺すと蘭々はどこかホッとしたような様子に対して、賢司はどこか残念そうであった。


「二人とも寮を利用するにはまず義務教育を受ける申請をしないといけないわ。その辺の手続きは久遠が教えてくれるから」


 いつも通り里奈は丸投げする。


「あ、今日は私も久遠くんに立ち会っていいかな?」


 由芽が手を挙げる。


「どうかしたの?」


「私も教えられるようにしておこうかなって。そしたら久遠くんの負担も減らせるし」


 里奈は「いいの?」と久遠に視線で問いかけると、久遠は首肯する。ならば問題ないだろう。


「それじゃあ、お願いね」


 里奈は隣にいる頼果に気がつく。


「……蔵脇も行くのよ」


 頼果は自身を指さしつつも首を傾げている。


「細かいことは久遠に聞いて」


 そう言いながら頼果を送りだす。


「一気に三人増えると大変ね」


 里奈はふうとため息をつく。


「なーに言ってるんだよ。まだ一〇人もいねえじゃねえか。苦労するのはこれからだよ」


 晴が隣で笑っている。里奈は思わず苦虫をかみつぶしたような表情になる。


「お風呂、先にもらっていい?」


 どこまでも圭都はマイペースだ。


「いいわよ」


「ん」


 圭都は風呂場のほうへ向かっていく。


 寮は空調が効いているというものの、やはり暑いことに違いはない。


 いろいろあったが、まだ八月は続くのだと里奈はふと窓の外、夕暮れへと視線を投げるのであった。

 

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