リーダーの決断は彼女を追放すること
翔は里奈と一緒にカラオケボックスの一室に二人きりでいた。
歌うことが目的なのではない。東京でカラオケに行くのは少数で密会をするときと決まっていた。
だから里奈も当然知っているはずだ。
――参ったな。
翔は里奈の泣きはらしたあとがある顔を見てしまった。そこには後悔があった。
聞けば一件以来、由芽とまで距離をとっているらしい。そのうえ、クラン内では小岩を中心に向けられる蔑称の視線。
一二歳の女の子がここまでの仕打ちを受けているのにも関わらず何もできない自分がもどかしかい。
――彼のときと状況は似ていた。以前は彼から辞めると言わせてしまった。
それが翔の後悔である。
「片岡さん、君をここに呼んだのは他でもない。これからの処遇についてだ」
里奈の体がこわばる。顔も真っ青になっている。
この思いを彼女に伝えたところで理解はしてもらえないだろう。それは甘えでしかない。
この現実を突きつけたところで、到底受け入れられるものではないだろう。
彼女にはいま頼れる人はいない。
本来であればそれは翔の役目なのかもしれない。いや、それは違うと何となく確信じみたものがあった。
彼女に告げるのは死の宣告だろう。
「片岡さん、三月の戦士団は君を追放することにした」
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