■宴会の規模が徐々に大きくなっている気がする
里奈は東方旅団のリーダーとして他クランのリーダーと話をしている。
一方の久遠は部屋の片隅でお茶と少しのお菓子を口にしている。
「あなたってぼっち気質?」
頼果が久遠の隣に座る。身長差もあって久遠からすればかなりの存在感だったろう。
「それが嫌みになると思ったら大違いだよ」
好きでやってるんだからと言いたいのだろうか。
「自分が得意なことだけ饒舌なのよね」
「君からはそう見えてるんだな」
「他の目から見ても明らかじゃない。こういう場だと急に大人しくなるんだから」
困ったものだと頼果は言う。
「僕は騒いだりは苦手なんだよ」
「そのくせ寂しがり屋だったりするのよね」
「あのさ、僕を理解した気になったような物言いはよしてくれよ」
「誰もあなたのこととは言ってないじゃない」
久遠はガクリとうなだれる。
「君もいい性格してるな」
「よく言われる」
頼果はくすりと笑った。
「これからは覚悟しなさいよ。もう誰も久遠くんのこと放っておかないから」
「どういうことさ?」
「みんなが君を見つけた。だからって私も片岡も逃さない」
久遠は首を傾げている。
「く、蔵脇ぃ!」
頼果の目の前に顔を紅潮させた克馬がいた。
「お前を一目見たときから忘れられねぇ。どうか、どうか俺とつき合ってくれ!」
しばらく間ができる。何を言われたか即座に理解できなかったためだ。
「克馬先輩には本当にお世話になりました。けど、やっぱり好みじゃないんです。ごめんなさい」
隣にいる久遠はドン引きしているようだった。どうせ断るなら、これくらいストレートな方がいいかと思ったのだが。
克馬は放心状態だった。
「これからつき合いもあるんだから言い方ってものがあるだろ……」
久遠の言うことも一理あるが、自分はもう走りだしたのだ。だから誰彼に構ってなどいられない。
ふらふらと克馬は別の卓に座ると明里と乃々子がやってきてジュースを差し出す。
「まあ、呑めよ」
「そうよ。男はアタックあるのみ。一度、フラれたくらいでへこたれちゃ駄目」
それはそれで無責任だろうと頼果は思う。
「蔵脇ってモテるんだ」
いつの間にか里奈が久遠を押しのけて頼果の隣にいた。
「いい女感が溢れてくるからね」
頼果は立ちあがり、反対の空いてる久遠の隣に座る。
「じゃあ僕はこれで」
久遠が立ちあがる仕草を見せると、両腕を二人の少女にがっちり絡められて動きが止められる。
「離してほしいんだけど……」
「あんた、この期に及んで自分に話が及んでないなんて思ってる?」
「むしろ無関係を装う神経が信じられないわ」
久遠は黙ったまま座り直す。
「最初に言っておくけど、口説いてきたのは久遠くんの方だから」
「知ってる。私も入団認めたし」
異様な雰囲気の三人に少しまわりは距離をとっている。
「あいつら、やっぱり面白いよねぇ」
少し離れたところで笑っている明里の声がただ響くのであった。
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