■頼果は久遠に連れられて学生食堂へ
学生食堂といっても無人である。調理場もなく冷蔵庫やら電子レンジや湯沸かし器があるくらいだ。
「エアコン効いてていいわねぇ」
食堂はいま頼果と久遠の二人しかいない。頼果は適当な席へ無造作にお尻を預ける。
「冷麺でいいかい?」
頼果は任せると邪魔くさそうに腕を振るだけだ。
頼果は久遠の背中をみつめながら、彼が自分に世話を焼いてくれるのか考えていた。
同時に出会って二日目だというのに彼のことをやけに頼りにしている自分がいる。
不思議とずっと昔から知っているような気がしてしまう。それは残念ながら里奈に対してもだ。
久遠が二人分の冷麺をトレイに載せて、机に置くと不思議そうに頼果を見つめてくる。
「……何?」
「君こそ、さっきから僕のことじっと見てるよね」
「気のせいよ」
照れているのではなく、自惚れるんじゃないという反論である。
「あなたってずっと#こんな__・__#感じ?」
「#こんな__・__#とは?」
「他人の世話焼いて貧乏くじ引いてるようにしか見えないわ」
そんなの馬鹿げているではないかと頼果は思うのだ。
「東方旅団は人助けをしようってクランだからね」
あくまでクランのルールで動いていると久遠は言う。
「久遠くんは好きでやってると?」
「好きかはわからない。でも、以前より嫌いじゃない」
頼果は息をつく。自分も気づいてしまったのだ。久遠のこういうところは嫌いではないと。
腕っぷしは秋影より強いし、度胸まで伴っている。これで頼りがいは十分だろう。それでいてお人好しなところも放っておけないと思ってしまう。
「あなたっていったい何なの?」
無意識から口に出てしまった言葉だった。
「質問の意図がわからないけど。君がどうしても迷惑っていうなら手を引くよ」
ピクリとライカの眉が動く。
この状況で久遠から手を引かれるのは何というか困る。というかわかってやっているのだろうか。
たまにすごく意地が悪く思うのだ。
「……あなたが私を助けてくれるとして、その見返りは?」
久遠は表情を変えずにこう言う。
「頼果が東方旅団へ入団すること。あとは一緒にゲームを楽しんでくれたらいいよ」
「……それだけ?」と頼果は呆気にとられる。
久遠は本当にそれしか要求してこなかったのだ。
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