どうしようもないのだから、仕方がない
月に一度、クランイベントが運営側より開催される。
大体はイベント時のみポップする魔物をどれだけ多く倒せるかをクラン同士で競い合うという趣旨のものだ。
つまりクラン内の総合力がものをいうイベントになっている。
内部抗争まっただ中の三月の戦士団にあって、そのイベントは政争の道具でしかない。
「片岡里奈の処遇をリーダーの翔さんはどうお考えなんですか?」
小岩が黙っているかわりに取り巻きの一人が翔に質問をふっかける。
「彼女は自発的にいまの状況になったわけじゃない。それに所持しているスキルは強力だと思う。生かす方法で僕は何とかしたい」
「でも、当たらないと効果はないんですよね。短刀一本で精密以外のステータスは一。当然、HPをあげる手段も限られてくるわけだ」
「しかも魔物に狙われやすくなってるんですよね」
翔はなだめようとするも、まわりから衝きあげをくらうという構図がすでにできつつあった。
こんな会議が馬鹿げていることなど翔は百も承知だ。
小岩とその取り巻きは里奈を連れてきた翔へ責任追及を行っている。
今回はさすがに翔の側の旗色が悪かった。
里奈のステータスの話を聞いて、普段は翔の味方になってくれるはずのメンバーまでが難色を示しているためだ。
どうするべきかの処断を翔は求められていた。
イベント前にクランを割るわけにはいかない。そして、いまの翔が考えられる最善はこれしかなかった。
彼は声が震えてないか不安になりながらも、努めて冷静に言葉を発した。
「わかった」
――すまない。片岡さん。
翔は声に出さずに詫びたのであった。
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