■閑話休題といきたいが、それでも里奈の悩みは絶えない
里奈は自室に入るとホッと一息つく。とりあえず伊織を連れ帰ってきたのは驚いたが、由芽たちが帰ってきて一安心である。
学習机の前に座ると計ったように連絡がくる。
ライブチャットの個別通信とでも言うべきか。そこにはある人物が映りこむ。
『里奈ちゃん、元気にしてた?』
誰かと思えば真鈴である。里奈は露骨に面倒くさそうな表情を浮かべる。
『その反応、ひどくない?』
真鈴はふくれっ面になる。相変わらずの美人だと思った。ここまでいくと嫌みも感じない。
「実家暮らしはどう?」
『それが妊娠してるのがわかってさ』
里奈はずるりと転けそうになる。
「ちなみに父親は誰?」
聞きたくもないが、どっちみち言ってくるつもりだろう。
「知りたい?」
「わかるからいい」
里奈はそっぽを向く。つくづくと嫌なヤツだと思った。わかってて言ってるからだ。
「まだ、先越されたこと怒ってるの?」
「……怒ってる」
「認めるとはやるじゃん」
真鈴はにんまりと笑みを浮かべる。
「両親に父親のこと言えてないんだよねぇ」
どうしたものか参った参ったと真鈴は明るい。
ちなみにそれが原因でケンカになることもあるらしい。それは真鈴が頑なに父親のことを明かそうとしないかららしい。
「産むの?」
「もちろん」
その言葉に迷いはないようだ。
「思い出だからね」
「子供ってそういうもの?」
何かが違う気がすると里奈は思った。
「それはそうと里奈ちゃん。何か困ってそうだから話くらいなら聞いてあげるよ」
その一言に里奈は苦笑いを浮かべる。
思えば真鈴とこうして話せている自分が不思議で仕方なかった。
この縁がこれから自分をどう変えていくのか。それはわからない。
とにかく世の中わからないことだらけだ。
「じゃあ言うけどさ――」
それでも里奈は口を開くのだ。
どうしたって明日はくるのだから。
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