表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
158/266

■由芽は久遠おかえりを伝えたくて

 寮が近くなる。


 空けていたのはほんの二日程度なのにずいぶんと懐かしく感じていた。


 由芽なりに久遠という少年についてわかったことがあった。


 たしかに彼はゲーム中や東京での生活について驚くような行動をする。しかし、何を考えているのかというと、その実は普通の少年なのではないだろうかと思うのだ。


 ここ数ヶ月の間で東方旅団(とうほうりょだん)は規模を少しずつだが、大きくしていっている。他のクランとの交流も増えつつあった。


 それでも久遠が帰る場所はこの寮なのだ。それはどれだけの変化があっても変わらない。


 ここにまた帰ってこれるよう自分は久遠にかけるべき声があるのではないか。


 それをしなければ次に何かあったとき久遠は帰ってこないかもしれない。


「乃々子さん、明里さんと寮にいるってさ」


 圭都が報告してくる。それを聞くと由芽も気が重たい。


 どうもあのノリ的なものが由芽は苦手だ。それでもある程度は受け入れなければならないのだろう。


 やはり由芽にとってもあの寮は居場所になりつつある。


 それに新たに仲間が増えるかもしれないのだ。それも待望の後輩だ。


「宴会場にするのはやめてほしいんだけどね」


 でも、どうしようもないかもしれないと久遠はあきらめ口調だ。


 寮の玄関を由芽は早足で久遠より先に入り、くるりと旋回して久遠に顔を向ける。


 いま彼に伝えるべきはきっとこの一言なのだ。


「久遠くん、おかえり」


 久遠は立ち止まり最初はキョトンとしていたが、急に顔を伏せる。


 久遠は右手で目のあたりを拭ってから顔を上げる。


「……ただいま」


 久遠ははにかんだような笑顔でそう言った。

お読みいただきありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

感想、評価、お気に入り登録も今後の励みになりますので、ぜひお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ