■ああ言えばこう言われる
ショッピングモールへ入った瞬間、由芽は冷房の素晴らしさをあらためて実感する。
「そういえば表に立っていた大きな人型のモニュメントは何なの?」
「昔放映してたアニメに出てくるロボットを実寸大で造ったらしいよ」
「そうなんだ」
自分で聞いたくせにあまり興味のない話だったため由芽は生返事を返してしまう。
久遠は少し不満そうだが、仕方がないだろうと思ってしまう。
このモニュメントでどうやって話を広げればいいのかわからなかったのだから。
「結構、人来てるね」
ログインをしていないと何もないところに向かって突っこんでいったり、声をあげたりしているので、さぞ滑稽に感じることだろう。
実際、ログインしてみれば彼らが魔物と戦っているのがわかる。
「おい。お前らここで狩りをはじめるつもりか?」
突然、少し年上の男子が声をかけてくる?
「え?」
由芽は驚く。
「ここは俺たちのクランが占有的に狩りをしている。無関係なヤツは入ってこないでもらおうか」
「ショッピング目的でも駄目ですか?」
久遠が訊ねる。男子はしばらく考えこむ素振りを見せるものの、こう返してくる。
「ダメだ。出入りをしていいのは俺たちのクランだけだ」
そう言われて三人は追い出されてしまった。
「……何かすごいね」
由芽はこんなことになっていることに唖然となる。
「いい狩場は大手クランが押さえるって話は本当なんだね」
久遠は半ば他人事のような口調である。
ポップする魔物の数は有限である。取り合いになることを避けるためにああやって入場規制をしているのだろう。
「腹は立たないの?」
「大手と僕らが揉めてもいいことないよ」
たしかにその通りだ。その通りなのだが、納得はできないでいた。
「これからどうするの?」
「うるさく言われないところなら心当たりはある」
久遠が示したのは学校であった。
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