■朝起きて二人
由芽は目が覚めたものの気怠さが纏わりついていた。
久遠は和室でまだ寝ているようだった。無理もないかと思ってしまう。
小さな箱の封は切られている。
「……痛い」
由芽はベッドに両足をつけると思わずつぶやく。
里奈と出会ったときをふと思い出す。
顔にはそばかす。小柄でいまも身長もろもろの成長が遅いと嘆いている。
特別美人とも、可愛いとかの言葉とは無縁だと本人も口にしていた。
なのに不思議と周囲の目を惹くし、バイタリティがあってまわり引っ張っていく。
そんな里奈は由芽にとって憧れであった。
由芽には妹がいる。
仲はいいほうだと思っている。
それでも気にしてしまうときがあるのだ。
行動的で可愛らしい自分とは対照的な妹を。
対して自分は地味で目立たなくて端っこで読者していた。人と話しているより勉強している方がやっぱり性に合ってると実感するのだ。
「じきに慣れるよ」
あくびをしながら気怠げに話しかけてきたのは圭都だった。
ショートのくせっ毛が寝ぐせでさらにひどいことになっている。
由芽は先ほどの言葉が何を意味するのかと気がついてしまうと赤面してしまう。
「圭都ちゃんはいまの生活に慣れた?」
「どうだろ? 思うのは不快でないって事くらい」
その意図するところを考察するのは難しい。おそらくボルテージをあげたりしないなりの圭都の価値基準というものがあるのだろう。
「私はいまのほうがいいなって思っていたけど……」
少しわからなくなってしまっているのかもしれない。
「これからお風呂、入れるけど?」
話はそこそこに圭都が聞いてくる。
「だったら私も入ろうかな」
「ん」
圭都はお風呂場へ行ってしまう。
「……おはよ」
久遠がのっそりと上半身だけ起きあがる。
「おはよ、久遠くん」
久遠はあたりを見て圭都がいないことに気がつく。
「圭都は?」
「朝風呂の準備に行ったよ」
「朝風呂か。いいね」
「久遠くんも入る」
「うん」
朝食は何しようか。どこへ行こうか。考えることはたくさんある。由芽はそれが何となく楽しかった。
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