■三人は同じ部屋
結局、三人はコンビニでおやつを購入して、泊まるホテルでルームサービスを利用することにした。
「……広い」
圭都は思わずつぶやく。感情のこもっていない抑揚のない声は感動しているのかも定かではない。
「高そうっていうか高いよね」
セミダブルのベッドが洋室に二つ。それと六畳ほど和室。三人で寝泊まりするには広すぎるくらいだ。
「お風呂は普通くらいだったよ」
圭都の久遠と同室になろうという案にあからさまに難色を示した由芽に提示された妥協案がこれであった。
誰もここまでしろとは言っていないのだが、久遠はこういったことにお金をケチったところを見たことがない。
特に人の関わることとなれば容赦がなかった。
机の上に並んでいるのは三人分の夕食である。
由芽は困った末にオムライスを頼んでしまったが、久遠は和食弁当。圭都はラーメンと炒飯である。
「久遠くん、結構渋いよね」
「君たちが偏ってるだけだと思うよ……。圭都なんて、いつも似たような感じだしさ」
「ダメ?」
圭都は首をかしげる。
「ダメとかじゃないさ。せっかくだから、明日は色んなもの食べてみようか」
どうせ三日くらいは帰らないんだろうしと久遠はつけ足す。
「私って実は好きなもの食べてると思ってるだけなのかな?」
久遠は「さあ」と肩をすくめる。そして「ただ」と言葉を続ける。
「年齢があがっていくと味覚は変わるっていうからね」
「それって昔はまずいって思ってた食べてたものがおいしいって感じるかもってこと?」
圭都はそんなことを考えたこともなかったと視線を宙にさまよわせる。
「でも、なんだか楽しそう。私は賛成かな。圭都ちゃんは?」
「ん」
圭都は短く肯定の意を示す。
「それじゃあ決まりだ。せっかくだしついでに二人とも道すがらレベル上げもしようか」
「東京迷宮の、だよね?」
久遠は首を縦に振る。
「二人は武器ランクをあげるときに何を優先してる?」
由芽と圭都は互いに顔を見あわせる。
「私があんまり魔物に接近するのは怖いから槍にしたけど」
投擲や弓矢もよかったが、飛び道具はお金がかかる印象だった。なんせ投擲する道具や矢は使えば減る仕様だったからだ。
圭都はそもそもゲームをほとんどプレイしていなかったのもあって、どう答えればいいのかわからないという表情である。
「理想は八種類の武器も万遍なく鍛えることだけど、それじゃあお金がついていかない。だからランクを上げる武器種は絞った方がいい」
この久遠の講義はテンプレそのものだ。だが、久遠の言うことだ。ここからは少し変わっていくに違いないと由芽は確信していた。
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