不思議な出会いと別れ
会議から翌日になり里奈は少し体調がよくなかった。
由芽に事情を話したら「それは仕方がない」と言って休むことを勧めてくれた。
それだと何だか悪いし、寝こむほどでもない。里奈は宿の確保を買ってでることにした。
いまは駅前を歩いているところだった。
「ねえ、そこのあなた」
里奈は自分が呼びかけられている気がして、振り返るとそこには一七〇センチ台はあろうかという女性がいた。
「私、ですか?」
「そ」
女性は頷く。着ているのはクランの制服とかではなく、私服だった。それもかなり派手目で肌の露出も多い。
「私、もうすぐ一八歳になるからここを出ないといけないんだよね」
だからなんだと里奈は言いたくなる。知り合いでもないのに寂しくなりますねとでも言えばいいというのか。
「だから、あなたにあげる。六年間、私が味わった苦しみをたっぷり味わうといいよ」
少し狂気の入り混じる血走った瞳。ただならぬ雰囲気に里奈は警戒感を高める。
「ムダムダ。強制譲渡だから。あなたに拒否権はないよ」
何かが起こっている。それは理解できたが、それが何なのかがわからない。
「もうさ。強制譲渡は最後の一月からでないと開始されるとかワケわかんないよね」
ワケがわからないのはこっちだと里奈は言いたかった。
「終わった。あー、終わった。じゃあね」
女性は魂が抜けたような表情で瞳の焦点は定まっていない。
「待って!」
女性は走りだしたと思うと、駅の構内へ入っていく。
当然、里奈は追いかける。
だが、本調子でないために追いかけるのがやっとだ。
追いついたと思えば女性は電車に乗ってしまう。
乗り遅れた里奈はただ見送るしかなかった。
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