■里奈は当然ながら怒っていた
里奈は玄関で久遠を出迎えた。
「帰ってきた」
冷たい視線を久遠に送る。
「や、やあ……」
久遠は気圧されているようにある。
「朝帰りしながら女まで連れて帰ってくるってどういう了見よ?」
話を詳しく聞かせてもらおうかと里奈は久遠に詰め寄る。
この男、前回の件で懲りたはずではないのか? そもそも自分はいったい何に怒っているのか?
隣の女との触れるか触れないかくらいの距離感がまた腹立たしい。
「私からいいかな?」
その女が話に割りこんでくるものだから、久遠に確認する。
「この娘誰よ?」
「私は山入端圭都。八月十一日生まれの十一期生だよ。今日は私を東方旅団に入れてほしくて来たんだ」
里奈は目をぱちくりさせる。割とまともな返答が返ってきたので驚いたのだ。
「そりゃまあ、入団については一応話し合いはするとして……」
里奈は久遠に疑いの視線を向ける。
「まさか入団者を探すのに朝になったとか言わないわよね?」
「それはその……」
久遠は言うまいか迷っているようだった。
そうこうしているうちに由芽と晴がやってくる。それから何故か明里まで。
明里は興味深げに状況の観察をはじめている。
それもそうだろう。これはいわゆる修羅場というヤツだ。
圭都の気怠げな感じと雰囲気がそうさせない要因になっているに過ぎない。
「とりあえず私から包み隠さずに昨日のことを話すよ。いいよね、久遠?」
圭都が久遠に訊ねる。
「……はい」
お腹を押さえながら消え入りそうな声で返事をする。
「それじゃあね――」
圭都がクイーン・ナイツで起こったことを語ったあとである。
晴と明里は大笑いをはじめて、里奈と由芽は久遠の頬をぶった。
その時の由芽の形相はそれこそ里奈もすくみあがるほどである。
その後、圭都は東方旅団の正式メンバーとして満場一致で迎え入れられることになる。
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