■圭都は久遠と歩く
朝食をすませて圭都は久遠に寮まで案内してもらうことになった。
今日は久しぶりに晴れ間が覗き、暑いくらいだ。
さすがの圭都も昨晩のような格好ではない。それでもホットパンツに胸元の少し開いたノースリーブのシャツという肌の露出の多い服装である。
この季節は不思議とこういう服装になってしまうのだ。だから何かを特別意識したわけではない。
「何だか気が重そうだね」
少し前を歩く久遠の足取りが重い。
「朝帰りに女の子を一人連れて帰るんだから、どう言おうかなってさ」
「そのあたりは私に任せてよ」
要は隠し事してるのがダメなわけで。呆れてくれるうちは問題ない。まあ、こればかりは久遠がもっとも懸念をしているであろう人物と実際に会ってみる必要がある。
「あ、でもさ。一発くらいは殴られる覚悟しておいたほうがいいかも」
それで許してもらえるのなら安いだろうと圭都は考える。
「本当に大丈夫なのかい?」
「さあ?」
保証はしかねた。
圭都は近道だという理由で公園を突っ切るよう提案する。
道の脇には色彩鮮やかなアジサイが植えられて満開であった。
「花って興味ないんだけど、いいものだね」
「そうだね……」
梅雨の季節風を感じさせてくれる。久遠は少しもの悲しげだ。何を考えているのだろうか。
「片岡さん、クランに入れてくれるかな?」
「怖いこと言わないでほしいな」
これについては久遠に全面的に任せるつもりだった。
途中にある自動販売機でカフェラテを買って、二人は小休止する。
「殴られる覚悟中?」
「好きに思ってくれたらいいよ」
久遠は圭都と視線を合わせようとしない。
広い方からいくつかの声がする。きっとどこかのクランが狩りをしているのだろう。
公園はこれから賑やかになっていくはずだ。
空き缶をゴミ箱に捨てると二人はまた歩きだす。
久遠が先行して歩こうとするところを圭都が久遠の右腕に掴まる。
「どうしたのさ?」
「これからよろしく」
寮についたら早速助けてあげようと圭都は思うのだ。
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