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■山入端圭都は待っていた

 インターホンが鳴るとドアを開ける。そこには身なりを整えた少年がいた。


 対する自分はTシャツを一枚着ているだけだ。他は下着を着けているだけ。しかもだぼついているせいで、右肩は露出している。


「……待ってたよ」


 気怠げな印象を持たれたかもしれないが、意識的にやっているわけではない。普段からこうなのだ。


「君が山入端圭都さん?」


「そ。君が古輪久遠だよね。乃々子さんから聞いたよ」


 時計は夜の八時をまわっている。久遠自体は夕方に来ていたと聞いていたが、時間は随分と経つ。


「乃々子さん、香水きついからしっかりとっときなよ」


 久遠は「え?」となって、自分の臭いを嗅ぎだす。


 何があったかを聞くのは野暮だろう。なかなか抜け目のない(ひと)だと思う。


 それから会話を一旦打ち切って、久遠を部屋の中に招き入れる。


「あと、乃々子さんから伝言。『またきてほしいな』だってさ」


「……僕はどう答えたらいいんだい?」


「んー、こういうのは営業トークだから。君が乃々子さんを気に入ったらでいいよ」


 こんなことを言うべきではないのかもしれないが、久遠の前だとつい口が滑ってしまうような感覚である。


「でも、伝言残してきたんだから君のこと気にいったんだとは思うよ」


 実際その通りだし、誰にでも適応されるわけではない。なので残念がることもないだろう。


「僕も乃々子さんに悪い印象はなかったな。好きか嫌いかでいうと好きな方だと思う」


 どういう言いまわしなのだと圭都は呆れるが、その表情は果たして伝わったろうか。


「とりあえず好意は受けとったと伝えておくよ」


「任せた」


 久遠は肩をすくめる。どうやら言葉選びに苦慮した結果、ああいう言いまわしになったということのようだ。


「立ち話もなんだからベッドににでも座りなよ。疲れたろ?」


「まあね」


 久遠は遠慮なくとベッドに腰かける。


「夕飯はまだ?」


「おかげさまで食べ損ねたよ」


 それもそうかと圭都はクスリと笑う。


「実は私もこれからなんだ。ついででよければ、ごちそうしてあげるよ」


「それじゃあ、いただこうかな」


「ん」とだけ圭都は答えると、冷凍庫からチャーハンと餃子を取りだす。


「あ、ニンニク入ってるけど気になるほう?」


 特に他意はなかったつもりだが、「あ、いや」と困った表情で答える久遠が何だかおかしかった。

お読みいただきありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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