■二階層での休憩
二階層へ入ると同時に久遠はテントというアイテムを使った。
言葉通りのものでテントに入っている間、魔物はこちらを襲えないというアイテムだ。
「ただし効果は三〇分です」
隠れ身効果もあるため、魔物はこちらを見つけられない。
「テントって何で存在してるのかわからなかったんですけど、こういうときは有効ですね」
通常であればログアウトすればいいだけだが、強制ログインゾーン内であればということだろう。
「私は休憩できればとりあえずって感じかな」
真鈴は走り通しだったのでさすがにキツくなっていた。
「脱出できそうなの?」
あと二階層分抜ければという考え方もあれば逆の考え方もできる。
真鈴の心境はどちらかというと後者に傾いていた。
「とりあえずアイテムの出し惜しみはしないが鉄則です。どんなことが起こるかわかりませんから」
そのためにも購入したアイテムの効果を把握する必要があるという認識であった。
「……何か?」
真鈴は久遠を何気なしにじっと見つめていた。
それが照れくさかったのかもしれない。理由を聞いてくるのはそういうことなのだろう。
「頼りにしているよってこと」
真鈴はできるかぎりのいまの気持ちを伝えたつもりであった。
「その信頼には行動で応えるしかありませんけど、やれるかぎりはやるつもりです」
相変わらず生意気な口だと思うが、いまはおちょくる気になれなかった。
いまのプリズム・タワーは暗闇に閉ざされている。ただ、それを突き抜けていくだけだ。
「そういえば二階層に入ってから提灯お化けが追いかけてこなくなりましたけど、どうしてでしょうね?」
「そうだったの? 私は気がつかなかったよ」
むしろ久遠に言われて気づくくらいだった。
久遠は少し考えこむ。三〇分が終わるのは間もなくである。
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