■夜長に彼氏彼女の間で起こること
案外と質素な夕飯を終えて、真鈴は寝室に敷かれた布団に寝そべっていた。
あの少年は真鈴の宿泊申請をしてくれていた。夜に出歩くのは危険なのだという。
「じゃあ君は安全なの?」
真鈴の完全な独り言だ。久遠はいまリビングにいる。
真鈴には寝室を譲り、少年はソファで寝るのだそうだ。
これで自分は紳士的だとでも思っているのだろうか。生意気な少年だ。
これが少年を少年たらしめているに違いない。
いや、そんなことはどうでもいいのだ。少年のためになど所詮は言い訳。
我が侭を通すための理由が欲しいだけだ。
「久遠くん、ちょっといい?」
布団から起きあがりリビングにいる久遠へ声をかける。抑揚なく元気がなさそうに振る舞う。
この少年には甘えた感じを出すより、こちらの方が効くだろう。
「どうかしましたか?」
――ほら。やっぱりだ。
予想が確信に変わる。
床をぎいぎいと軋ませながら足音が近づいてくる。その間にバスタオルをはだけやすいよう細工する。
「大丈夫ですか?」
背後から久遠が声をかけてくる。あえて返事は返さない。
久遠が右手を差しだしてくるのを横目で確認する。
あとは瞬く間のこと――。
真鈴は左手を伸ばして久遠の右手を掴む。
それからはくるりと一八〇度まわって、重力に従うまま後ろに倒れこむ。
「ちょっ……」
久遠が思わず声を漏らし、擦れる布の音がする。
するとどうだろうか。久遠はちょうど真鈴を押し倒す体勢になる。
うまくバスタオルもはだけてくれている。薄暗くても久遠には真鈴の白い肌がよく見えていることだろう。
久遠がゴクリと喉を鳴らす。
「何のつもりですか?」
少年の声は震えていた。状況が呑みこめないとかそんなところか。
「引っかかった」
真鈴は無邪気に笑ってみせる。
「からかうなら――」
そう言いかける久遠の唇を二本の指で抑える。
「君は私をここに連れこんだ。私もそれを受け入れた」
「あなたが泊まる宿がないっていうから……」
久遠の声は小さくなる。
「どうでもいいでしょ」
それよりも――。
「いつまで服着てるつもり?」
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