第三話 望まぬこと(2/4)
シスと二人で仕事をすることになった雪夜。しかし、相変わらず雪夜はシスに好かれていなかった。依頼も消化していき、残り一つとなったが――
仕事はまだあった。依頼の数は4件。本当はもっと沢山あったのだろう。だけど、他の依頼はグレンたちがやっている。私たちにできるのは、この4件ということだ。
手分けして依頼を消化しませんか?などを言ってみましたが……それもダメでした。私は毎回、帰れと言われるだけです。
そんな感じで、依頼も残り一件となった時でした。既に1週間ほどは仕事をしていましたが、最後の一件だけは、1週間以上探っても情報が出ませんでした。
「クソ!どこに居やがる?」
「あの……」
「邪魔だつってんだろ!帰れよ!」
「……情報……分かるかも……です……」
「はぁ!?」
「いや……その……話を……聞いていただけませんか?」
その言葉で、取り敢えずは聞く耳を立ててくれたらしい。
「なんだよ」
「グレンたちが、いつも情報が得られずに困ってた時は……あるところに行っていたんです」
「どこだよ」
あるところ、それは――
◇◆
「なるほどな、それでか」
カウンター席に、男が一人座っている。どうやら、店主と話をしているらしい。
「いつものやつ、まだあるか?……おう、頼む」
男がそういうと、店主らしい人は奥へと行ってしまった。その入れ違いで、店の扉が開く。
「こんばんは……」
「ん、おー!グレンとこのガキじゃねえか!」
笑顔でそう言った男は、雪夜たちに手を振った。
「元気してたか?」
「はい」
「おーそれはよかったよかった」
30代前半のその男の名は、アモウ・ガイリーン。それが彼のコードネーム。そして、彼もまた――裏万事だ。
「お?お前は……確か死神んとこのか?」
「……そうだ」
「お〜大けぇなったなぁ。二人揃ってとは珍しい。なんや?親に黙って酒でも飲みに来たか?」
アモウは豪快に笑った。
「いえ……フラワーさんは居ますか?」
そう言った時、店の奥からガタイのいいマッチョの、口紅を塗った――オカマが現れた。
「あらやだ!雪夜ちゃんじゃない!元気にしてた〜?」
「お久しぶりです……」
「もう〜久しぶりだってのに〜またそんな顔しちゃって〜!せっかくの美人さんなんだから、笑顔でいないと!ほら!ほ〜ら!」
そう言われ、雪夜は少し引き攣ったような笑顔をした。後ろで立っていたシスは、カウンターのそのオカマに問う。
「あんたがフラワー?」
「あらやだ、年上にそんな態度で言うんじゃありませんよ」
手でヒョイヒョイッとするフラワーに、シスは構わず話を続ける。
「こいつの居場所を知らないか?」
持っていた資料を、フラワーと呼ばれているオカマに手渡す。
「〜?こいつなら最近、店に来たわよ」
「どこに行った?」
「知らないわねぇ。なんだか、誰かに追われてそうだったわ。今頃隠れてるんじゃない?」
「あんたなら、どんな情報でも引き出せると聞いた。なんとかできないか?」
「う〜んそうねぇ。分かったわ、でもちょっと待ちなさいな」
そう言うと、フラワーはアモウの目の前に酒瓶を置いた。
「はい、いつものね。でもこれで最後だったわ」
「ありゃ〜また仕入れといてくれ」
「おっけー!」
キラッと星を出しながら、フラワーは雪夜たちの方に戻った。
「取り敢えず。こっちでも探しておくわ。また何か分かったら、グレンのとこに手紙でも届ければいいかしら?」
「はい、お願いします」
「分かったわ。そっか〜、雪夜ちゃんもグレンの補助無しで仕事するのね〜」
そう言うと、シスは拳に力を入れていた。
「帰るぞ」
「あら、もう帰っちゃうの?お酒飲んで行かない?」
「誰が飲むかっ!!!」
フラワーは冗談よ、なんて手をヒョイヒョイッとさせていたが、構わずシスは扉を開けて出て行ってしまった。
「上手くいってないのね」
「……はい……」
「落ち込まないの!美人さんは笑顔を振り撒かなきゃダメよ?じゃないとせっかくの美貌が無駄になっちゃうわ〜」
「……グレンがよければ……それで良いですから……」
「そう……」
フラワーは何故か、少しだけ悲しそうな顔をしながら、カウンターで何かを探し始めた。
「……そういえば、今日はヒィルさんは一緒じゃないんですか?」
カウンター席に座るアモウに、雪夜は言った。
「あぁ、あいつ風邪出しちまってな、今俺一人で依頼消化してんの。それでここに来た」
アモウの裏万事は、いつも二人でやっていた。今日は一人だったのを、雪夜は気にかけたのだ。
「そうでしたか……」
すると、カウンターから頭を生やすように、ヒョコッとフラワーが現れる。
「あったわ〜!」
そう言うと、雪夜の前にグラスを出して、飲み物を注いだ。
「丁度ね〜お客さんがくれたやつでね?有名でお高いりんごを使ったジュースなの」
グラスに注いだリンゴジュースを、雪夜に渡した。
「ほんとは、お酒に混ぜるなりしたら良いのだけれど、あんたはまだ未成年だから。でも、好きでしょ?りんご。せっかく来たんだから、一杯くらい飲んでいきなさい」
そう言われ、雪夜はグラスに注がれたリンゴジュースを飲み出した。すると、目を輝かせて言った。
「美味しい……です……!」
「そうでしょ〜雪夜ちゃん好きだもんね〜」
雪夜はりんごが好きだった。昔からというわけではないが、あることがきっかけで好きになったのだ。
「代金は要らないわ。代わりにお仕事、頑張りなさい」
「はい!」
横から見ていたアモウが、雪夜に突如、何かを手渡す。
「これやるよ」
雪夜はグラスを一度置き、アモウから何かを受け取る。
「……?なんでしょうか……これ」
「異物の類らしい」
渡されたものは、ただの石のようだ。
「依頼主がお前に渡せって言ってきてさ、報奨金だけ出して置いていったんだよそれ。誰か知ってるのか?」
「……?そんな人は……」
そうか、と言うと、アモウは酒を飲み出した。
「なんの特殊能力とか、変な効果も得られなさそうだし。お守りとでも思って持っててやんな。お前のファンかもだしな〜!はっはっは!」
そんなアモウに雪夜は礼を言い、リンゴジュースを飲み干した。
「リンゴジュース、美味しかったです。ありがとうございました」
「いいのよ。何か分かったら伝えるわ」
「お願いします」
頭を下げ、雪夜は店を出ていった。
◇◆
不思議な石をポケットに入れ、雪夜は帰路に就く。すると、フードを被った女が一人、雪夜の横を通り側に言った。
「逃げたほうがいいよ」
雪夜は振り返った。しかし、そこには誰もいない。顔は、フードに覆われ一瞬では見えなかった。
あとがき
どうも、焼きだるまです。
いや〜驚きましたね〜!まさか、グレンがラスボスで雪夜ちゃんは殺され、シスが本当は雪夜ちゃん大ちゃきちゅっちゅっだったなんて!
リステさんは自身の命を犠牲にしてまで、ライラックを守りました。何故、彼女がそこまでしてライラックを守ったのか――!?
次回、遂にその答えが――!
え?後書きで書いてる内容が本編と違う?……もしかして……パラレルワールドから来た人って……コト!?(また次回お会いしましょう。)




