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巡導の運命  作者: 焼きだるま
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第二話 幻影(2/3)

 グレンたちは、依頼主の記した場所へと向かう。しかし、それは罠であった。グレンたちの結末は――


 ――ライラックが時間を稼いでいる内に、俺も合流しなくてはならない。路地を進み、建物の出入り口がある側へと向かう。


 角を曲がり出入り口が見えた時、扉の前で立ち尽くす者がいた。鳥のマスクをしたあいつは、俺の拳銃を破壊した張本人だ。


「鳥頭、そこを退け。今度は、お前が斬る前に俺が撃つ」


 鳥頭はあの時、依頼主の隣に居た。相変わらず、マスクで顔も見えない。無口で、何を考えているかわからない。


「聞こえたか? 鳥頭。そこを退けと言ったはずだ」

「……」

「そうか」


 次の瞬間、俺は迷わずに心臓を撃ち抜いた。血は、煉瓦造りの地面に飛び散る。しかし、鳥頭の男は微動だにしなかった。


「……ワタシハ、恐レナイ」

「……確かに心臓を撃ち抜いたはずだ。何者だ? あんた」

「ワタシヲ殺セルノハ、ヒトツノミ」


 マスクでこもった声。恐らく、男だろう。鳥頭のコートから腕が出てきたと思えば、それは巨大な刃だった。鳥頭の腕と一体化した、人間の腕ほどの太さを持った刃。


「やってみろ、鳥頭」


 俺は瞬時に、ハンドガンをナイフへと切り替える。恐らく、鳥頭にハンドガンを使うタイミングはない。使うタイミングがあったとしても、心臓を撃ち抜いて生きているのならば、意味はないだろう。


 鳥頭は構えると、前動作もなく動き出した。常人ならば、防ぎようのない速さ。鳥頭による攻撃をナイフで防ぎ、躱していく。大きく振り回されながら、その刃の速度は瞬きにも満たない。


 師匠の訓練がなければ、これほどの動きに対応はできていなかっただろう。慣れていなければ、トマトスライスにでもなっているほどに素早い。それでいて一撃は重い。受け流すようにナイフを扱わなければ、まともに攻撃を防ぐことはできない。


 鳥頭の男は、攻撃の手をやめない。俺に反撃のタイミングはない。不利なのは、間違いなく俺の方であった。


 ライラックは今、あの男で動けない。こっちは一人でやるしかない。少なくとも、雪夜が目を覚ませば状況は変わるだろう。


「雪夜は――何をしている」


 変革の石(トランフォーストーン)は、俺のポケットの中。これの力に賭けてみるか? いや、この石にどういった力があるのか、情報がない。下手に使い、無駄に終われば俺たちに明日はない。


 鳥頭に流されるがまま、気が付けば俺たちは路地から出ていた。大通りに人は歩いていない。それどころか、銃声で外に出られないだろう。


 戦闘が長引けば、いずれ体力勝負となる。勿論、相手の体力が尽きる可能性もあるが、直感的にそれは考えにくい。


「何か……打つ手は――」


 瞬間、地震のような音が鳴り響いた。次に、岩雪崩のような音が響く。目の前に、巨大な槍のような岩が、階段状に生えてきたのだ。


「なっ――⁉︎」


 轟音と共に現れたそれは、俺と鳥頭を隔てるように現れた。何が起きたのか、その正体はすぐに分かった。


「とりゃ〜――‼︎‼︎」


 階段が現れた方向。そこに、金髪の少女が立っていた。腕には、赤いスカーフを巻いている。手には、岩のような見た目をした大剣があり、刃は持ち手にまで伸びていた。


 更に少女は、鳥頭の方へ向け大剣を地面に刺し振り払った。振り払われた方向に、地面から巨大な岩が槍のように現れる。


「ちょ〜っと死んでもらうね〜――‼︎」


 岩の槍は、鳥頭を突き飛ばすように現れた。鳥頭の体には大穴が空き、そのまま路地の方へと飛ばされていった。


「ふ〜! これで邪魔者はいなくなったね」


 少女は俺を見ると、手を差し出した。


「あなた! 変革の石(トランフォーストーン)を持ってるんだよね? アタシにくれない⁉︎」


 どうやら少女の目的も、変革の石(トランフォーストーン)のようだ。


「それが欲しければ、俺から買い取るといい。金はいくらある?」

「そう……なら残念だけど、こうだ――‼︎」


 少女は大剣地面に刺し、今度はこちらへと振り回してきた。


「ッ――‼︎」


 地面が大剣によって削れると、削られた方向に向けて斜めに階段状の岩の槍が順々に突き出してくる。どうやら、あの大剣は異物の一種らしい。


 横へと回避をし、次に距離を取る。岩の槍は、次々こちらへ向かって突き出してくる。しかし、その方角は決まっている。すぐに躱せば造作もない。


 ハンドガンへ切り替えると、走りながら少女を捉え放つ。しかし、少女は大剣を足元に突き刺し、目の前に盾となる岩の生成した。銃弾は岩に当たり、少女には届かない。


 しかし、これも想定内だ。


 着弾した岩は一秒後、爆発により砕け散った。爆石弾。融合事件以降、各地に散らばっている異物の一つ、爆石を弾丸に加工したものだ。ある、特定の衝撃を与えることにより爆発させることができる。


 砂埃が辺りに舞う。しかし、少女は生きていた。


「っ〜! 危ないなぁ〜」


 すかさず銃を構え直す。その時突然、


「ッ――‼︎」


 後ろから現れた小柄な男に、変革の石(トランフォーストーン)を盗られてしまった。


「すまねーな!」


 小柄な男に銃を向ける。しかし、現れた岩に阻まれた。


「ごめんねー! 貰ってくよー!」


 少女のその声を最後に、岩が崩れ始める。砂埃と共に、二人は俺の前から姿を消した。残されたのは、崩れゆく岩の生えた道だ。どうやら、時間と共に崩れるようだ。


 すぐに、サイレンの音が聞こえてきた。どうやら警察のおでましらしい。見つかる前に俺は、その場を去った。


 ◇◆


 ――ベランダの上。空き部屋の中から、ライラックは男に銃口を向けていた。


「まぁ、少なくともこうしてれば、あなたは動けないでしょ」


 男は鼻で笑う。ライラックとしては今のうちに、男の後ろで気絶している雪夜に目を覚ましてもらいたかったのだ。しかし、その願いは叶わない。


 変わることのない現状に、先に変化をつけたのは向こうであった。


 ベランダの縁に、鳥頭の男が現れた。


変革の石(トランフォーストーン)はどこだ?」

「邪魔ガ入ッタ」


 すると男は、ライラックの方を見た。


「これで二体一だ。その銃で撃っても構わないが、君たちの欲しい情報は手に入らない。そして、この娘の命もない。大人しくするといい」

「へぇ、それは困ったねぇ」


 ライラックは男の足元に向けて、一発の弾を放った。




「……」

「これでどうですかい?」


 ライラックは、そのまま銃口を男へと向け直した。


「無駄が分からないとは、愚かなものだ」

「さぁて、それはやってみないと分かりませんとも!」


 先に動いたのはライラックだった。男の頭に向け、銃弾を放つ。近距離のそれを、男が躱す手段はない。しかし、閃光のような速さで、鳥頭の刃が銃弾を防ぐ。


 鳥頭がライラックの前に立つ。


「無様ナ死ヲ」


 ライラックは銃口を鳥頭の男に向け、二発放った。一つは頭を捉えたが、鳥頭の男は生きていた。


「無駄ダ」

「ッ――‼︎」


 次の瞬間、鳥頭の男はライラックの横腹を蹴り付けた。動きは速く、勢いも凄まじい。ライラックは壁を貫通し、隣の空き部屋まで蹴り飛ばされた。


 うつ伏せに横たわり、天井と壁は衝撃によって一部が剥がれ落ちる。小さな落石が、部屋の中に落ちてくる。


 ライラックの背に、鳥頭の刃が貫通した。


「ガッ――‼︎」


 男の方は、雪夜の髪を引っ張り頭を引き寄せた。そのまま引きずるように、ライラックの前へと持ってくる。


「お前の愚かな選択が導いた結末だ」


 雪夜が目を覚ます。自身の置かれている状況に、雪夜の顔は更に悪くなる。ナイフは首に当てられている。雪夜の目の前には、酷い姿で倒れているライラック。


 鳥頭の男は、もう片方の刃を雪夜に向けた。


「男ヨ。オ前ニトッテ、最悪ノ光景ヲ見セテヤロウ」


 すると、鳥頭の男はライラックから刃を抜く。次の瞬間、まだ動くことのできない雪夜の足先を切り落とした――。


 悲鳴が、夜の街に響き渡る。暴れる少女に構わず、鳥頭の男は雪夜の足をスライスするように切っていく。叫び声は、言葉になっていない。


「やめ……ろ……」


 ライラックの言葉も虚しく、雪夜の足は無くなっていく。男によって腕は折られ、意識も飛ぼうとしている雪夜の頭を強引に引き寄せた。


 男は、苦しむようナイフで喉を切っていく。ギコギコと動かし、時間をかけて切断する。痙攣するように力無く暴れ、溺れ声ような音を鳴らし続けている。


 最後に勢いよく切り取られた瞬間。先程まで痙攣するかのように動いていた体は、支えるものを失ったように動かなくなった。血の池は、床に広がり続ける。


「残念だな。グレンがここに来た時には、絶望することだろう。だが、その前に我々が仕留める」


 そう言うと、鳥頭がライラックに近付く。


「自身ノ行イヲ悔ヤムガイイ」


 すると、鳥頭の男はライラックの首を一太刀で切断した。頭は転がり、返り血が男たちに飛び散った。


 男は雪夜の頭を放り投げ、部屋の出入り口へと向かう。


「グレンを始末しに行くぞ」

「アァ」

 あとがき

 どうも、焼きだるまです。

 性癖が爆発しました。それ以外に言うことはありません。私は満足です。では、また次回お会いしましょう。

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