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巡導の運命  作者: 焼きだるま
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第七話 閃光が走る(2/4)

 アモウとヒィルの協力を受け、四人は地下へと向かう。しかし、そこで四人は――


 瞬きをしただけだった。たったそれだけで、世界は暗くなった。そして、明かりがつく。一面灰色の世界は狭く、どうやらここは通路らしい。


 奥の方から、足音が聞こえる。曲がり角から、男が一人現れた。


「なるほど、本当にボスの予想は当たっていたのですね」


 ボロいフードを被った男は、蟲のようなものを分厚い装備の左腕から出していた。


「ボスってのはどこのどいつ? 教えてくんねーか」


 男は鼻で笑う。


「あなたには関係ありません。私から言えることは一つ。死んでいただけませんか?」


 俺の答えは一つ。


「やだね」


 その瞬間、蟲たちが翅を羽ばたかせてこちらへと飛んでくる。


 融合事件以降、異物のみならず生物の乱入により生態系にも影響は出た。しかし、ほとんどは死滅した。しかし、アラスカにのみ適応し現存するやつらがいた。こちらの世界で言う虫である彼らを、人類は蟲と呼んだ。


 アラスカにのみ適応し、生息する肉食の生命体だ。


「蟲たちの餌となりなさい!」


 幸いにも、蟲は虫と変わらない。


「オブジェクト・リリース」


 辺りに、燃えるような赤い球体が現れる。それは段々と膨れ上がると、大きな爆炎を引き起こした。


「相手が悪かったね。蟲使いさん」


 生き物は大抵そうだが、蟲は必ずと言っていいほど火に弱い。幸いにも、俺の扱う武器は炎だ。


「なるほど、炎を操る異物か。それも、体内に取り込んでいるな?」


 蟲使いが、あまり驚いた様子はなかった。


「これでも退かないんは、切り札がある言うことやな?」

「御名答」


 そう言うと、男は左腕から更に蟲を飛び立たせた。


「何度やろうと同じこと!」


 爆炎は蟲たちを包む、しかし――


「燃えねえ!」


 蟲たちは、炎を纏いながらこちらへと向かってくる。


「くっ――‼︎ 圧縮‼︎」


 距離を詰められる前に、俺は炎を圧縮させ爆発を引き起こさせた。効果はあったらしく、炎に耐性はあっても爆発には耐えられないようだ。


「爆発も引き起こせるとは、封印異物はやはり凄まじいですね」


 未だ驚いた様子もなく、冷静で居られるのは、もはや気味の悪さすら感じてくる。さっさと終わらせるのが吉だろう。


「圧縮!」


 爆炎は、中央に吸い込まれるように渦を巻く。そして、強烈な爆発を引き起こす。


「やったか――?」


 次の瞬間、黒煙の中から男が突如姿を現す。首を掴まれ、持ち上げられる。


「グッ――」

「私の鎧は、爆発すら通すことはない異物由来のものです。そして、この鎧の中には大量の虫を飼っている。それは、鎧の隙間からあなたの体へと渡り、次第に蝕んでいくでしょう」


 嫌な音が、感覚的に伝わってくる。こいつは本当にまずい。


 俺の封印異物は、呼吸を止められると発動ができない。体内に取り込んだ異物は、生命をエネルギーとし、強力な能力を放つことができる。だが、今は首を絞められて呼吸ができない。呼吸、即ち酸素を取り込むことは生命に関わるもの。エネルギーそのものだ。こいつは、その弱点を知っている――!


「クソッタレ!」


 すぐにナイフを取り出し、こいつの腕に突き刺す。しかし、鎧が硬すぎる。


「無駄です。諦めて蟲たちの餌となりなさい」


 鎧の隙間から、蟲が這い出てくる。窒息するのが先か、蟲に食い殺されるのが先か。


「グッ――」


 ◇◆


「――どこに行ったの〜? 誰か返事をしてよ〜!」


 暗闇の中を、一時間くらい一人で歩いている。


「ライトがあったからよかったけど……ここはどこなの? 足元は照らせるのに、先を照らしても、壁すら見当たらない」


 音は自分の足音だけ。不気味さが際立つこの空間で一人。


「お化けが出るなら出てきなさい……! 怖くないんですからね〜!」


 こわい。


「ヒャッ――‼︎」


 その瞬間、何かが私の体にぶつかった。人の感触だった。数歩下がり、ナイフを構えライトを当てる。


「ヒィル……さん!」


 そこに居たのは、雪夜ちゃんだった。


「雪夜ちゃん!」

「すみません。匂いを頼りに探していたら、ぶつかってしまいました……。お怪我はありませんか?」


 こんな状況でも、私よりも遥かに年下なのに雪夜ちゃんは落ち着いていた。なんだか、さっきまでの自分がバカバカしく思えてくる。


「大丈夫よ。雪夜ちゃんは怪我してない?」

「はい。ヒィルさんの感じからして……やっぱりグレンたちとは――」

「えぇ」


 雪夜ちゃんは鼻が効く。私の匂いを頼りにってことは……恐らく、二人の匂いはしないのだろう。


「取り敢えず、二人で行動しましょう」

「勿論です」


 私たちは逸れないよう、手を繋いで歩き始めた。


「雪夜ちゃんは暗いの、怖くはないの?」

「……怖いです」


 安心した自分が居た。その言葉だけで、私は強く居られる。


「大丈夫、雪夜ちゃんは鼻も効くし、私が付いてるわ」

「……はい」


 そんな言葉を言ったけど、今思えば耳も良い点、私の情けない声は聞こえていただろう。それでも、素直に雪夜ちゃんは私を頼ってくれた。


「あの……」


 雪夜ちゃんが私を呼び止めた。


「どうしたの? 雪夜ちゃ――」


 手を繋いでいたのは、雪夜ちゃんはではなかった。


「あの、こっちへ行きませんか?」


 得体の知れない姿で、雪夜の声を発していた。


「ッ――‼︎」


 乾いた銃声が暗闇に鳴り響く。手を握っていた感触は本物。幽霊じゃないのなら、


「容赦はしない!」


 しかし、二発撃ったはずの頭はすぐに再生した。顔も口も耳もない、土の色をした人の形は、段々と本来の姿を現す。


「おかしいなぁ、変装が解けてもうた。なんでやろなぁ?」


 泥のようなものを纏った裸の男が、私の前でそう言った。


「異物……雪夜ちゃんをどうしたの」

「泥の檻に閉じ込めたはずなんだけど……邪魔が入ったかもねぇ」


 変装と言っていた。恐らく、捕獲した相手の姿に変装することができるのだろう。ならば――少なくとも雪夜ちゃんは無事。


「ちょっと話し過ぎたわ。はよ死んでくれ」


 次の瞬間、泥のような粘土のようなものがこちらへと伸びてきた。


「生憎と、これでもポバティーじゃ有名な裏万事よ。偉大なる目的があるのかないのか知らないけど、女だからってあまり舐めないことね!」


 変幻自在な泥の異物。噂には聞いたことがあった。度重なる泥の攻撃を躱し、銃弾を何発も浴びせる。しかし、必ず泥のようなものに防がれてしまう。


「大人しく死んでくれねぇか? ちょこまかと動き回ったところで、意味なんてねぇんだからよ」


 確かに、意味なんてないだろう。だからこれは、単なる時間稼ぎに過ぎない。持久力だけなら、私は強い。


 距離を取って、無いよりマシ程度の思いで銃弾を浴びせる。それの繰り返しが、私にできる精一杯だ。一時間。それだけ待たせれば、誰かがここに現れるだろう。


 すると、男の表情が段々とイライラしてきているのが分かった。


「いい加減にしろよ女ァ」


 変幻自在に操れる泥だが、これでは宝の持ち腐れだろう。この男、単調な攻撃しか扱えていない。戦闘は、一〇分ほど続いていた。突然、男が攻撃をやめた。


「女ァ、気付かねえか」


 私は銃を向けたまま、相手の様子を伺った。弾は無限にあるわけじゃない。


「降参でもしてくれるのかしら?」

「降参するのはぁ、そっちの方だぜ?」


 瞬間、私の周りに網目状の檻が形成される。それは、全て泥のようなもので作られていた。


「――」

「女ァ閉じ込めて、逃げる隙間もない状況にすれば、簡単に殺せるだろう?」


 私は即座に、泥の網目に向かって弾丸を放つ。しかし、奴の体に弾が通るのを防がれたように、この檻は弾を吸収するように受け止めてしまった。


「無駄だ。その泥は異物。そんじょそこらのもので突破できるほど、柔なものじゃねえ」

「その割には、扱いきれてないように見えたけど」

「舐めた口を……」


 男は口を歪めて、檻を縮めていく。


「あんたも、檻に閉じ込められるがいいさ」


 正直、打つ手はなかった。私にあるのは、必ず助けがくると信じるのみだ。


「――オブジェクト・リリース」


 遠くから、青白い光とそんな言葉が聞こえた。


「何――?」


 男は後ろを振り返る。


 暗闇の中に、光を放ちこちらへ何かを構える少女の姿が見えた。


「ヒィルさんを、解放して!」


 雪夜ちゃんだった。手に持つ青白く光る閃光の槍は、男に向かって放たれる寸前であった。


閃光走る一雷(ユーピテル・ミカーレ)!」


 雪夜ちゃんから放たれる、閃光の一撃。眩いほどの閃光を放ち、光の速さで一直線に男の左腕を切断し、私が閉じ込められている檻をも破壊した。


「な――」


 男の表情は、困惑のただ一つであった。銃弾ですら貫通できなかった泥を、最も簡単に貫通したのだ。


「リベンジです。泥男!」

 あとがき

 どうも、焼きだるまです。

 眠いです。とっても、眠いです。おやすみなさい。(また次回、お会いしましょう。)

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