第七話 閃光が走る(1/4)
新たな依頼を受け、グレンたちは動き出す。そして、そこに現れたのは――。
「名前のない組織なんて、今時珍しいね。情報は確かなんだけど、調べても組織の名前すら上がらない。公認されている組織以外が封印異物を管理してる時点で、やばい奴らなのには変わりないんだけど」
ライラックは片頬に手を当て、デスクに肘をつきながらそう言った。
「……」
「どしたの? グレン」
「いや、少しな」
手元の資料には、依頼された異物の資料も載っている。しかし、それが意味するのは――
――――第七話 閃光が走る――――
スーザリィ・フェルツァ。ポバティーの北東にある、工業が主となっている地域だ。
「こんなところに、異物が隠されているんですね」
夜の町は、あまり人が出歩かない。情報によれば、正面以外での侵入経路はないとのことだった。俺は雪夜と共に、建物の周りを軽く見回っていた。
「あぁ、警備も何もない。あまりにも杜撰だな」
ここに隠されているのは、封印異物。FCSでなくとも、所有したものはそれ相応の保管がされるはずだ。しかし、夜とはいえそれを守る人影すら見えない。
「中に入りますか?」
雪夜がそう言ったが、俺は待ったをかけた。
「正面突破なら、短期戦になる。敵勢力を殲滅する勢いでなければ、俺たちの方がやられるだろう」
「では――」
その瞬間、雪夜は鼻と耳で感じたようだ。
「二人……でも、この匂いは」
「来たか」
足音が近付いてくる。路地裏の陰から現れたのは、同じ裏万事を営むアモウ・ガイリーンだった。
「よっグレン」
その後ろから、もう一人現れる。
「久しぶり、二人とも」
そう言ったのは、アモウと共に裏万事をやっているヒィルという女だった。
「アモウさん、ヒィルさん!」
雪夜が驚いたように、近寄っていった。
「元気してた? 雪夜ちゃ〜ん」
「はい!」
頭を撫でられ、嬉しそうな表情をしている。雪夜はよく、ヒィルに世話になっていた。まだ、この仕事をするには訓練が足りない中、俺ができない時はヒィルが見てくれることもあった。
まだ、心を閉ざしてライラックに任せることはできなかった頃。同じ女性であったヒィルは、雪夜にとっても心の支えになっていただろう。
「不思議だよな〜。あんな笑顔が似合う少女でも、平気で人を殺せるんだから。世の中わかんねぇもんだね〜」
「雪夜は元々、この業界に向いているわけではない。むしろ、好き好んでこんな仕事はしないだろう」
すると、アモウは首を傾げる。
「ならなんでやってんのさ」
タバコに火をつけ、口に咥える。一度吸うと、俺は答えた。
「あいつは、感情を殺せるタチの人間だ。自身に不利な感覚の時は、感情を殺して動く。今は慣れてある程度こなしているが、感情の一部は殺したまま仕事をしているんだろう」
憐れむような目で、アモウは答えた。
「ま〜、普通の生活に戻れるかって言われたら、歪んだまんまだったろうな。いや、この都市群でガキ一匹で生きていけるかどうか……。居はするが、弱肉強食の世界だもんな〜。シスがそうだったか?」
そんな話をしていると、ひとしきり話して満足したのか、二人がこっちへ向かって歩いてきた。
「それで、作戦は?」
ヒィルがそう言うと、俺は答えた。
「ない、ただの殲滅作戦だ。真正面から突入する。幸い、ここら辺の工場地帯は人っ子一人居ない。警察やらFCSに通報されるのも、時間がかかるだろう。殲滅する時間はあるはずだ」
ヒィルが「おっけー」っと言う。アモウは武器のチェックを軽くして、いつでも行ける旨を伝える。雪夜は既に済んでおり、いつでも突入はできる状態であった。
「よし、行くぞ」
◇◆
中は暗く、機械が工場内を埋め尽くしている。
「……獣臭い」
雪夜がそう言った。
「獣? 皮でも扱ってるのかしら、この工場」
「そうは見えんが、ただデカい機械があるだけ」
何となく、俺の予想が当たっている気がした。いや、百当たっているだろう。
四人で進んでいき、ライトの明かりを頼りに情報にあったハッチを見つけた。
「この下か」
アモウはそう言うと、大きなハッチを一人で開けた。そこには、地下へと続く階段があった。
「ふぅ……行こうぜ」
それぞれ武器を手にして、中へと入っていく。
「さっきから、気味が悪いくらいに音がありません……」
嫌な顔をした雪夜は、オートマチック式の銃と片刃のナイフを構えたまま階段を下りている。照明になるものは、俺とヒィルが持っているライトだけだ。
「てか、ライラックとかは置いてきたの」
アモウがそう言った。
「とかってなんだよ……ライラックは留守番だ。そもそも戦闘向きの人間じゃない。師匠とシスは依頼があったらしい。二人を呼んだ理由は、そういうことだ」
二人が納得したような表情を見せると長かった階段が終わり、俺たちは通路へと出た。
「こっから先は、迷路みたいな構造になっているらしい。目的の異物の場所は不明。分かっていることは、相手は襲撃を想定した動きを見せているとのことだ」
「どうして、相手は逃げないんでしょう」
雪夜がそう言うと、二人も頷いた。
「確かに、逃げる時間なら合ったはず。アラスカなんて逃げる場所沢山あるんだから、こんなところに居なくても」
「罠だろうな」
ヒィルに対し、アモウは冷静に答えた。
「罠?」
「あぁ、恐らくは誘き寄せるための囮だよ」
俺も、アモウとは同じ考えであった。
「罠……だったら、依頼主が――」
「それも違うだろうな。こんなに複雑な構造なら、わざわざ弱点を教える必要はない。あの依頼主は無関係だろう。それより、匂いとかは何か感じないか?」
そう言うと、雪夜は答えた。
「人の匂いはします。でも、大勢ではない。少数精鋭でしょうか。それと……獣臭い……」
涙目で雪夜は、マフラーをマスク代わりにした。
「匂いに敏感ってのも、困りもんだな」
アモウがそれ言うと、雪夜は否定した。
「確かに困ることはありますが、獣の臭いが苦手なだけです。それに、恐らくこれは――」
「獣人、だろ?」
俺のその言葉に、雪夜は頷いた。
「あー、そーゆーこっとね」
アモウも何かを察したようだ。
「ねぇ、この通路まだ続くの?」
「こんなに長いとは聞いてないんだが」
返答はなかった。咄嗟に後ろを振り返る。
「……どうやら、これは本当に迷路のようだな」
どうも
焼きがき、あとだるまです。
もう七話になるんですね。しかし、まだまだ続きますので、楽しみにお待ち下さい。では、また次回お会いしましょう。




