第六話 紅い炎(2/2)
誰にだって少年時代があった。それは、彼も同じだ。
一歩一歩が遅い。目の前の光景に、自身の目を疑う。そして俺はハッとなり、家の中へと入っていく。家と言うよりも、小さな屋敷とも呼べるその場所は、まだ人が入れるほどの炎であった。
「イズィラ! 父さん! 母さん! どこだに居るんだ! 返事をしてくれ!」
しかし、返事は来ない。二階へ上がろうとすると、柱が倒れてきて道を塞がれた。口を塞ぎ、一階にある妹の部屋へと向かう。
「どこだ! イズィラ! 返事をしろ!」
妹の部屋へと辿り着くと、俺はドアを開けた。
「イズィラ――」
血が散らばる室内。そこからのことは、あまり覚えていない。
気が付けば、外に居た。血に塗れた手、目の前に立つのは死神。俺を、燃え盛るあそこから助け出してくれた。
「――それが、死神との出会い……ですか」
雪夜がそう言った。
「あぁ、そして俺が、あの事件を追っている理由だ」
既に、休憩時間は終わっていた。
「稽古に戻るぞ」
「あの」
雪夜が俺を止めた。
「……どうして、裏万事になったんですか? 事件を追うなら、FCSでも……」
「選択肢なんてない。そんな選択を取れば、今頃師匠によって俺はこの世から消えている」
雪夜は、首を傾げたように聞いた。
「なら――どうして、死神はグレンのことを助けたのですか?」
俺は答える。
「わからない」
それが答えだった。
「……だが、後悔はしていない。現に今、FCSでも辿り着けていないあの事件を知る者を見つけることができた。必ず、必ず聞き出す」
紅い炎の記憶は、今は俺の決意となっていた。
◇◆
――扉が開く。地下室のある場所で、二人の男が話をしている。扉側の男が喋った。
「未来視の動きはありません。ボスの予想は外れたのでしょうか」
「いいや、必ず来る。この場所を特定して、やつらは来るだろう」
椅子に座っている男は、得物の手入れをしている。
「……相変わらず、変な武器ですね……それ」
そう言うと、椅子の男は顔を上げた。
「あ? これか。なんでも、六八戦争の時に使用されていた武器らしい」
「六八……この世界ではない、向こうの世界で起きた戦争……全ての始まり」
「安心しろ。武器だけじゃない。モノホンも一人? いや、一匹付いている。ボス直属のやつだ。六八を体験してる主力の一人が、俺たちの為に護衛に回ってくれている」
男は得物を仕舞い、立ち上がる。
「準備をしておけ、真正面から来るとは限らない。いや、真正面からしか来れないよう地下にしたが、何せ奴のせいで予想ができん」
「後出しジャンケンのようですね」
「命のかかった、後出しジャンケンだ」
男二人は、部屋から離れていく。地下室から少し離れたその場所で、小柄な男が耳に何かを当て、機械を弄っていた。
「なるほど」
そう呟くと、男は機械の電源を切った。
◇◆
「それで、雪夜ちゃんはめちゃくちゃに強くなったと」
「はい、めちゃくちゃに強くなりました」
雪夜ちゃんは、至って真面目な顔でそう答えた。
「実感は如何でしょうか」
「グレンの首に、十回は木製ナイフを当てました。前回は九回です。必ず獲物を仕留めます」
「なるほど、これってめちゃくちゃ強くなってるの? グレン」
僕が言うと、グレンも答えた。
「ぼちぼち、だな」
雪夜は分かりやすく落ち込んだ。
「まぁまぁ、良いじゃん。少しずつ、少しずつ! ね?」
「はい……」
すると、玄関のドアからノックする音が聞こえた。雪夜ちゃんが向かい、いつものように言った。どうやら、相手はお客さんらしい。
グレンが頷くと、雪夜ちゃんはお客さんを中へと招き入れた。
「どうも、死神さん」
黒のコートを羽織い、アタックケースを持った小柄な男がそう言った。雪夜ちゃんはいつものように、紅茶の準備をする。グレンはソファに腰掛け、お客さんも向かいのソファに座った。
「要件を聞こう」
「はい。裏万事の死神に、ある異物を取ってきてはもらいたいんです」
すると、その男はテーブルに資料を出した。
「情報はこちらで集めました。ですが、自分は中に入る技術がありません。ですので、お願いしたく」
グレンは僕に、その資料を見せてきた。僕はそれを確認して、パソコンで調べれるだけ調べた。結果は、
「凄いよグレン、これほんとに合ってる。よく調べ上げたね?」
「あはは、僕なんてまだまだです」
そう言った彼だけど、相当な手練れだろう。ここを頼る必要があるのか、分からないほどにだ。その素性もまた、名前を名乗らない時点で明かせないような生業なのだろう。
「分かった。だが、金はあるのか?」
「それでしたら、こちらに」
男はアタックケースを持ち上げ、テーブルの上に置いて開いた。
「……なるほど、良いだろう」
「金はもう渡しときます。それでは、お願いしますね」
「期限は――」
「じゃあ、一ヶ月以内で」
そう言うと、彼は足早に去ろうとする。
「待て、聞きたいことがある」
「なんですか?」
「一二年前に起きた、豪邸の火災事件。これについて知っていることはないか?」
男は間を開け、言った。
「知らないですね」
しばらくの沈黙の後、グレンは諦めて男の帰りを促した。
「では、失礼します」
その入れ違いで、雪夜ちゃんが戻ってきた。
「あれ? お客さんは――」
「足早に帰ったよ〜」
カップを三つトレーに乗せたまま、雪夜ちゃんは少し落ち込んでしまった。
「二つとも飲むから、ちょ〜だい」
「……はい」
きがとあ
。すでまるだき焼、もうど
でのいなとこく書に特。ねすでいらづみ読ソック
また、次回お会いしましょう。




