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巡導の運命  作者: 焼きだるま
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第六話 紅い炎(1/2)

 遠い昔、ジシュラと呼ばれていた少年は、ある地獄と直面する。


 ――あれはまだ、俺が小さかった頃だ。二○一○年。十歳か、その辺りだ。俺の家は、金持ちだった。世界が融合して間もない頃、両親がアラスカの地に目をつけ俺を連れてこの都市群へ移住した。そこで両親は、異物を使用したビジネスを始めた。


 あの会社も、元は親の会社から派生したものだ。今や、異物を扱うところなんて大量にあるがな。


――――第六話 紅い炎――――


「おい、ジシュラ! おい!」


 少年が一人、空き地で名前を呼んでいた。


「なんだよ、もう帰ろうぜ……? 全然来ねえし、俺は眠いんだよ」


 ジシュラと呼ばれた少年が、溜息を吐きながらそう言った。


「違う! 来たんだよ!」

「え?」


 ジシュラは顔を上げる。


「ごめ〜ん! 遅れたぁ!」


 向こうから、額にシップを貼った少年とメガネをかけた少年が二人、幼い少女一人が走ってきている。それを見たジシュラは、仕方なく立ち上がった。


「遅えぞ、オメーら」

「ごめんごめん、親がうるさくって」


 先頭を走っていた少年はそう言った。他二人は、その少年のことを待っていたと伝えた。


「ジシュラが眠いってよ、寝ちまう前に早く行こうぜ」


 子供達は楽しそうに、空き地から飛び出し走っていく。


 アラスカの都市群は、(わず)か二年で発展していた。三年目となった時点で、既に安定した都市運営がされていた。


 第一都市、ポバティー。主要施設が密集しており、アラスカ都市群で現在最も栄えていた。また、アメリカとは別に都市群の管理を任されている独立した中央政府があった。


 異物の需要は世界であった。アラスカの地以外でも異物は見つかったが、その中でもアラスカの大地には群を抜いて異物の量が凄まじかった。


 異物の性質はものによって様々だ。大きさや形状、同一存在の有無。その多くは、各国で技術の向上をもたらした。人外対策への武器として注目を集めたのも、このアラスカの地を発展させた一つの理由だ。


 ホスピス家は異物の需要を感じとり、いち早くにアラスカの地で事業を設立した。それは大成功を果たし、今やポバティーでは有名な会社となった。


 そんな家の息子であるジシュラは、不自由のない生活で、退屈さを感じていた。


「んで、何が見つかったんだよ」


 ジシュラが聞いた。すると、最初の少年が答えた。


「行ってからの楽しみだよ、あんま大人達に知られたくないんだよ」

「その割には、みんなのこと呼ぶんだな」

「実は僕も見ちゃって」


 メガネをかけた少年がそう言った。


「お前んとこの妹が来るのは分かるとして、じゃあ俺を呼んだ理由ってなんだよ」

「しーっ!」


 子供達は、どうしてもジシュラに黙って来てほしいといった表情で訴えていた。


「はぁ……しゃあねえなぁ」


 しかし、ジシュラの表情は少し楽しそうだ。


 ◇◆


 森の中、子供達は先頭を歩く少年に付いていった。そして――


「ここだよ」


 先頭を歩く最初の少年が指を差した。


「……」


 ジシュラが近付く。そこにあったのは、紛れもない異物であった。小さなクレーターのようなものを作り出し、その中央に突き刺さっていた。


「やっぱり異物だよな?」

「……俺を呼んだ理由はこれか」


 みんな、ジシュラのことを見ていた。


「……なんで大人達に言わないんだ?」


 すると、額にシップを貼った少年が言った。


「つまんねーだろ! せっかく見つけたんだしさ。俺たちの秘密にしようぜ?」

「僕は反対だったんだけど……こいつがうるさくて」


 メガネをかけた少年の妹である少女はただ、離れて立っているだけだった。


「お前らが好く理由もわかるよ。こんな綺麗な槍、見たことがない」


 中央に突き刺さっている異物。青白く光を放つ槍は、ジシュラでも知らない異物であった。すると、最初の少年が言った。


「俺、触ってみる」

「!」


 ジシュラは咄嗟に手を引いた。


「やめとけ! 異物ってのは危険なやつもある。下手に触ったら、最悪死ぬことだってあるぞ!」


 しかし、次の瞬間――ジシュラの横を、シップを貼った少年が通り過ぎた。


「一番頂きぃ!」

「やめろ‼︎」


 ジシュラの言葉を受けず、少年は槍に触れた。閃光が走った。雷のような、眩い閃光。少年は尻餅をついていた。


「――」

「大丈夫か!?」


 ジシュラが少年のところへ駆け寄ろうとした、その時だった。


「キャーー‼︎」


 後ろの方だった。


「――‼︎っサリィ‼︎‼︎」


 メガネをかけた少年が、咄嗟にサリィと呼んだ少女に向かって走ろうとする。しかし、その場は一瞬で地に濡れた。


「――――」


 三人とも、動けずにいた。そして――


「助け――」


 少女の上半身が押し潰されていった。下半身は暴れ、最後は痙攣するように動き、潰れたトマトのようになった後は決して動くことはなかった。


「――ッ‼︎逃げるぞ!」


 ジシュラが、一番早くにそう叫び走り出した。ジシュラは知っていた。異物を欲するものは、世の中に沢山いる。全てが、優しい人間ではない。


「待っ――」


 また一人、潰されていく。


「まったく。しかし感謝するぜ、ガキンチョども。オメーらのお陰で、探してるもんが見つかったからよぉ」


 ジシュラとシップを貼った少年は、森の中を駆ける。向かう先は、町の方角。


「なんだ、何なんだよあいつ!」

「知らねえよ! でも、FCSじゃない!」

「なんかねえのかよ! ジシュラ!」

「うるっさいな! 良いから走れよ!」

「うるさいガキンチョども、まずはお前からだ」


 二人は後ろを振り向いた。そこには、三人を殺した大男が居た。その巨体からは、想像もできない速さだった。毛深く、狼のような耳を生やしていた。四足歩行で、こちらへ距離を詰めてきたのだ。


「獣人――」


 その時、二人は突如足を踏み外した。下には川、そこは崖であった。二十メートルほど下の川へ、二人は落ちていった。


「チッ……相手はガキンチョ、生きてはねえだろ。生きてたとして、町に流れ着く前に死ぬわな」


 川に流されるジシュラには、意識があった。


「苦しい……助け……――」


 ◇◆


 ――目が覚めた。咄嗟に体を起こし、水を吐いた。


「ここは、あいつは?」


 幸い、怪我はなかった。だけど、一緒に落ちたはずのあいつは居なかった。


「はぁ……はぁ……おい……どこだよ……返事をしてくれよ」


 俺は立ち上がり、歩き出す。しかし、あの大男のことを思い出した途端。俺は逃げるように町の方へと走り出した。幸い、目が覚めたこの場所は俺の知っている場所だった。


 町に着いた頃には、辺りは暗くなっていた。あの場所からは、それほど離れていた訳ではない。気絶していた時間が長かったのだ。


 フラつきながらも俺は、家に辿り着いた。

 そこには絶望が広がる。


「は?――」


 燃え盛る自分の家が、そこにはあった。

 あとがき

 どうも、焼きだるまです。

 お久しぶりです。お待たせしました。本日から、また投稿を再開できればと思います。久しぶりであること、まだ少しだけ忙しさが残っていることもあり、小さなお休みがあるかもしれません。それでも、待っていて頂けると嬉しいです。では、また次回お会いしましょう。

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