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巡導の運命  作者: 焼きだるま
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第五話 死神(2/3)

 悪霊使いをやり過ごした死神とグレンは、シスからの連絡を受け、あるところへと向かう。


 念のため、屋敷の庭を探していて正解だった。鳥かごのような休憩スペースの床、その一部に違和感を感じ調べると、ハッチのようになっており地下への階段が続いていた。


 師匠は屋敷の中だ。私は、単独で中へと入っていった。明かりはなく、仕方なく携帯用ライトを点ける。石造りの通路は、寝室に続いているとは思えない。


 感覚を研ぎ澄まし先へと進んでいると、木でできた扉を発見した。ライトを左手に、右手にナイフを持ち右手でドアノブを掴んで開ける。


 一瞬ゆっくりと開け、その後一瞬ですぐに開き切る。そこには、部屋というよりも更に通路が続いているような場所であった。


 いや、問題はそこではない。通路の横には、牢屋がいくつもあった。鳥籠をモデルにしたであろう休憩スペースの下は、人の籠がまるでペットショップのようにあった。


 牢屋の中は、幼い者や、痩せ細った者も居た。皆、足枷に手錠と首輪を付けている。声を出す者はあまり居ない。私の持っているナイフもそうだし、声帯は切られてないだろうが、この姿を見る限り声を出す余力もないだろう。


 私は、更に先へと進む。そして、施錠された木の扉を破壊して、中へと入る。奥の牢屋の中、そこに見えるのは変わり果てた姿の――ローラン・スミスだった。


 ◇◆


 庭へ出ると、音のした方へと向かう。すると、血の臭いが漂ってきた。その場所へ辿り着くと、道の上には血の跡だけが残っていた。


 その血は、突然私の周りを囲むように伸び始めた。とても早く、一瞬で私の周りには血の円が完成した。ゾクゾクする。悪い予感は、すぐに的中した。


 私は、すぐにその円から出ようとしたが、円から腕が出た途端。その腕に激痛が走った――


「痛っっっっ――――!」


 殴られる痛みであれば、心を殺せば気にならない。だけれど、それとは違う神経的な痛みであった。


 この円が原因ならば、私はここから出られないだろう。私は、閉じ込められたのだ。


 落ち着いて考えてみる。この円がある限り出られないのなら、それを壊せば問題ない。まず、ナイフや銃で撃ったり、布で拭き取るなど考え得る方法全てを使った。だけど、決してその円は崩れなかった。それどころか、通信機すら機能しない。


 幸い、横になるスペースくらいはある。座り込み、何か方法がないかを考える。銃で遠くを撃つ。円を撃つ時はできたのに、何故か不発に終わった。最悪の選択だが、声を上げてみる。だけど、誰も来ない。


 恐らくこの円の内側は、独立した空間のようなものなのだろう。異物には、空間を作り出すものがある。でも、血の異物なんて聞いたこのがない。浮かぶものと言えば、悪霊使いだけだ。


 不思議なことに、この空間に居ると段々と眠くなっていく。それも、冷や汗が出てくる。何か、とても良くないものを感じる。


 寝転び、上を見る。ここは、さっきまで居た三階の真下だ。声が届いていたなら、助けが来るだろう。呼吸を落ち着かせ、目を閉じる。音は聞こえない。とても静かだった。


 ◇◆


 俺たちは、連絡にあった場所へと向かった。鳥籠のような休憩スペースの下へ、階段が続いていた。


 師匠と共に、階段を下りていく。中は暗く、携帯用ライトを持ってきておいて正解だった。先へ進むと、牢屋が壁に並んでいた。更に奥へと進み、扉を開けた先にシスは居た。


「来たか」


 シスが出迎えそう言うと、俺たちにあるものを見せた。奥の牢屋――そこには、ローラン・スミスの遺体があった。


「……どういうことだ?」

「私が来た時には、もう死んでいた」


 すると、師匠が言った。


「罠だな」


 その瞬間――後ろの扉が突如閉まり、明かりはシスと俺のライトだけになった。


「ご名答」


 瞬間、辺りに火の玉が現れる。先程の魂のようなものとは違う。それは、確かに青く燃えており光を放っていた。


 部屋のどこからか、不愉快な声が聞こえる。


「ローランが居る限り、依頼主は面倒くさいらしい」


 俺は言う。


「FCSの隊員が、こんなことをするとはな」

「ふひ、ひひゃひゃひゃ!」


 気持ちの悪い笑い声が、部屋の中に木霊する。


「あぁ、FCS……ねぇ。いつもいつも――怠くってさぁ。あいつが俺に依頼した時、希望すら感じたんだよ。俺は、死人に興奮するんだよ」


 気持ちの悪い言葉が、続いていく。


「俺には彼女が居た。ある日、車の事故であいつは俺の目の前で死んだ。いや、生きていた。体はぐちゃぐちゃに、鮮血は地面を濡らしていた。末端が痙攣するように動いて、声にならない声で、何かを発していた。それを見た時、俺は絶頂にも似た感覚を覚えた。だが、警察はすぐに来やがった。死んだ彼女を、もっと眺めたかった」


 シスの瞳が段々と、人を見る目ではなくなっていく。


「俺はさ、死者と戯れることができないか、沢山考えたんだ。するとね、異物を記した書物にね、あったんだよ。人の魂を、奴隷のように扱える異物がね。でも、それはFCSに管理されていた。だから――」


 その瞬間、シスは声の方向へと刃を振るった。


「気持ちの悪いこと、ドカドカと語ってんじゃねえよ」


 しかし、刃は当たっていなかった。


「いやぁ、気持ちよくて喋りすぎちゃったよ。危うく、ご主人様のことまで話しそうになった」


 その時、さっきの通路から鉄格子が開いたような音が聞こえた。


「じゃあ、僕は元の体に帰るね? 君たちも死者に興奮しなよ。死者は何も言わない! 死者は、とっても綺麗で、素敵で、尊いから」


 不愉快な声が消えたと同時に、ローラン・スミスの遺体が立ち上がる。それだけじゃない。通路の方からも、大量の足音が聞こえる。


「袋のネズミか」

「どうする? グレン」

「俺は……師匠は――」


 師匠の姿は消えていた。さっきの話の最中、いつの間にか抜け出していたらしい。


「二人でやるしかないな」

「あぁ」


 俺とシスは、流れるように現れる死体たち。ゾンビとも呼べそうなそれを、次々と片付けていった。鉄格子の一部だろう。鉄の棒を持った者も居た。狭い室内に、銃声と剣戟が木霊する。青い人魂は、俺たちに突撃してくる。幸い、その人魂に攻撃の効果はあった。


 十分くらいだろうか、シスと共に地下室で戦闘を続け、地下室から出ることに成功した。


 地下室は、血の海になっていた。生存者は一人も居ない。あれは全て、逃げ場を無くすための捨て駒だったのだろう。FCSの隊員とは思えない。いや、あの話から察するに、やつは元からFCSの隊員になんぞなる気はなかったのだろう。


 悪霊使いの居場所は分からない。一度、体制を立て直す必要がありそうだ。


「一度退くぞ」

「あぁ」


 ◇◆


「……ん……」


 瞼が開いた。眠気はない。悪寒も消えていた。


「――!!」


 私はすぐに立ち上がり、辺りを見渡す。血の円は、一部が何かに斬られたようになっていた。


「……?」


 何が起きたのか、眠っていたため記憶がない。立ち上がり、円から出るとグレンと連絡を取った。すると、撤退の指示が出たため、私も敷地内から出ることにした。


 何故、円が破壊されていたのか。悪霊使いが死んだのだろうか。考えても仕方がないことなので、助かったことに安堵しつつ、私は柵を越えた。


 外へ出ると、私は事務所へと向かい歩き出す――

 あとがき

 どうも、焼きだるまです。

 気が付けば、お風呂のお湯に浸からなくても寒くない季節になりました。お布団の中も暑いです。私は、お布団に息苦しくなるくらいに包まれないと落ち着いて寝れない人なのですが、皆さんはどうでしょうか? 皆さんも一度、お布団でミノムシ体験をしてみて下さい。夏は暑さで死にますよ。では、また次回お会いしましょう。

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