表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巡導の運命  作者: 焼きだるま
12/19

第四話 黒腕(3/3)

 悪霊使いを相手に、異物である黒腕を解放したグレン。圧倒的力により勝利を収めるが――その時、上の階に居た雪夜は――


 臭いが、そこら中に散らばっている。消えては動き、臭いがしては隠れる。悪霊相手に、これが通用するのかは分からない。でも、やるしかなかった。


 さっきから、何度も同じような光景を繰り返している。そろそろ、ゲシュタルト崩壊でも起こしてしまいそうだ。


 館は広く、廊下には延々と同じ光景が続いている。ここから、ターゲットの居る部屋を見つけなければならない。一つ一つ確認していれば、気が狂っていただろう。その点、鼻が利く狼種であった自分にホッとする。


 ターゲットの匂いが一番強い場所を探している内に、私は三階に居た。一階の方から、何か喋り声のようなものが聞こえる。


 この館の部屋は全てが防音。となると、この声の主人は一階の廊下からだろう。恐らく、グレンが誰かと戦っている。


 L字の曲がり角に体を隠しながら、廊下の向こうに人が居ないかを確認していた。


 早くターゲットを暗殺して、グレンに合流しなきゃ。そう思っていた時だった――


「ネズミみぃつけた」


 後ろから、不愉快な声が聞こえた。心の底から、ゾッとするような喋り方。


 私は、すぐに振り向いて銃を構える――が、


「んぐっ――!!」


 お腹を思いっきり蹴られ、吹き飛んだ勢いでそのまま窓の下へと背中を打ち付ける。


「ネズミは軽いなぁ。チュンチュン……いや、これは雀……いや……君は狼だねぇ?わおーんわおん」


 ニヤついた顔で、ボサボサとした髪の男が、咳き込んでいる私に近付いてくる。


「僕さぁ、獣人の子の幽霊って……まだ持ってないんだよねぇ?ねぇ、一緒に行こうよ。君にも仕事を与えるし、君を沢山愛でてあげるよ。君は可愛いからねぇ?」


 男は舌で、自身の口の周りをベロりと舐めた。


「はぁ……はぁ…………悪霊……使い……」

「ご名答、僕が悪霊使いヘンリー・ハイヤース。最初から、君たちが侵入していたのは気付いていたよ。だからまずは――仕留めやすそうな君に決めた」


 私は歯を食いしばり、立ち上がった。ナイフを取り出し、構える。月明かりで、ナイフは白銀に輝く。


「舐めないで下さい……私は、あなたの都合の良い奴隷にはなりません」

「そっか……まっ死ねば僕に嫌でもつくことになるさ。取り敢えず、死んでくんない?」


 その瞬間、私の右側にあった花瓶が、何かに引き寄せられるように私に向かって飛んできた。


 咄嗟に躱したが――花瓶は壁に当たり砕け散る。そして、今度は破片がこちらへと飛んでくる。


「ッ――!!」


 急展開でも、私は四つ足で廊下を走り回る。後ろからは、大量の破片が私を追いかけていた。幾つかを、ナイフで弾いては潰したが、あまりにも数が多すぎる。


「逃げ回るのかい?いいよいいよ!じゃあ挟み撃ちだぁ!」


 すると、廊下に飾られていた花瓶が次々に割れていく。その度に、破片が増えて私の周囲を囲んでいく形となる。


 このままじゃ、負けるのは私だ――


 気が付けば、私は破片によって完全に包囲されていた。破片は、私を囲んで止まっている。男が近付く。


「どうだい?もう逃げれないだろう。幽霊になっちゃ言葉は話せないし、最後に一言くらい聞いたげるよ。なんかある?」


 私の言うことは決まっている。


「気持ち……悪いです」


 そう言うと、男は目を見開きニヤついた顔で舌を出して言った。


「いいねぇ!躾甲斐がありそうだ!」


 破片が、私に向かって一斉に飛んでくる。私が倒れる隙間はない。それは、紛れもない死であった。


 だけれど、獣人である私だからこそ、この動きができる。生身の人間であれば死だ。だけれど、その破片は少しだけ上に隙間がある。


 後ろには壁、やることは一つだ。あの破片は、意外にも小回りが効かない。一度動き出すと、すぐには方向を変えれない。今、あの破片が動けば、必ず後ろの壁に当たり粉々になる。


 私は、すぐに後ろへと飛び、壁に足をつける。そして――飛び越えるように破片の上へと行く。


 破片は、何もない壁へと当たる。しかし、いくつかは私の体を切りつけた。だけれど、私の身体能力は、破片の壁を飛び越えるだけの力があった――


 気合一閃。ナイフをヘンリーに向け、落下の勢いで振るう。


「ここだああああ!!!!」


 しかし、ヘンリーには躱されてしまった。私は着地を誤り、体勢を崩す。


 すぐに立ち上がると、ヘンリーは言った。


「往生際が悪い狼さんですねぇ、躾が更に必要なようです。でも、安心して下さい。僕、言うことを聞かない子、大好きですからぁ」


 その瞬間、下から白いモヤが現れる。


「私に埋め込まれている異物。これ、新鮮なほど扱いやすいんですよ。躾をした魂はいつまでも扱えますが――今回は別に回しているので、これで相手してあげましょう。行きなさい、罪人の魂よ!」


 そのモヤは、こちらへと向かってくる。それも、直感的に触れればまずいことが理解できた。


 動きはかなり速い。私であれば、逃げる事はできるだろう。でも、それだといつかはさっきみたいに追い詰められる。二度も、同じことは通用しない。


 であれば、答えは決まっている。


 こちらから攻める!


「お?」


 ヘンリーは驚いたような顔をした。それは私が、逃げるフリをしてUターンで魂を躱したからだ。触れれば死であろうそれを、恐れず躱しそのままヘンリーに近付く。


 それができたのは、とても簡単なことだった。破片のことが決め手となった。破片はすぐには方向を変えれない。一度動き出せば、少しの間はその方向にしか動かない。それは恐らく、悪霊も同じだ。


 接触する直前にUターンすれば、当たらずに済む。あれの動きにはラグがある。


「今度は――外さない!」


 私は、すぐに距離を詰める。すると、ヘンリーは棒のようなものを取り出した。


 棒の先から、何かが薄らと現れていく。


 透明がかった薄紫。それは、死神の鎌のような形となる。どうやら、それが彼の武器らしい。私に向かってそれを振るう。だけど、私もそれを躱す。


 しかし、その時間で悪霊は私の下へと追い付いてしまった。もう一度、距離を取ることになる。


 あれを躱すのは簡単だけれど、このままじゃ挟み撃ちになり、いつまでも決着をつけれない。今、この時もターゲットが逃げ出しているかもしれない。


 ヘンリー自身は、あまり動こうとしない。どうやら、私の追跡は悪霊や、さっきのポルターガイストのようなものに任せているらしい。


 悪霊から逃げつつ、またUターンをするタイミングを伺う。しかし、その時――私の横にあった扉が突如開く。


「――!!」


 ドン、という音が廊下に響いた。ポルターガイストで、扉を開いて私に当ててきたのだ。


 悪霊は真後ろに居る。もうすぐ、私の体に触れる。なのに、私の体は動こうとしない。咄嗟のことで、脳も体も処理が追いついていなかった。


 グレンは間に合わない。近付く目の前の死に、私は抗えない。だけど、死んだのは悪霊だった――


 悪霊が死ぬなんて、自分でも意味が分からない。だけれど、確かに悪霊は真っ二つになり、私の目の前で死んだ。


 その原因は、すぐに分かった。


 私の目の前に降り立ったのは――白いコートに黒い髪。両手に、刀のような武器を持った男。私は、この男を知っていた。


 このアラスカの地で、最も有名な殺し屋。そして、裏万事グレンを鍛えた。師匠――死神と呼ばれた男だ。

 あとがき

 どうも、焼きだるまです。

 最近、思うことがあるんです。


 暑い(5月22日)


 皆さんも、暑さにやられぬよう注意して過ごして下さい。では、また次回お会いしましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ