すべてが素晴らしいんだ。
すべてが素晴らしいんだ。
声を張って、
泣く、
赤ん坊みたいなぼくに、
そうささやく、
母が。
懐かしい、
なんて訪れない、
じたばた、
畳で地団駄する、
ぼくに、
あなたの、
すべてが素晴らしいんだ。
ぼく主人公のストーリーはいつから始まったの? いつからお母さんは脇役になって、ぼくが、主人公に? いつからお母さんは、詩人になろうと思ったの?
先生が褒めてくれたよ、
笑って、
Vサインする、
ぼくの、
頭を、
わちゃわちゃって撫でて、
足の速いあなたは、
きっと、
チーターとかけっこしたって、
勝っちゃうんだから、
って、
シールを、
ほっぺたに貼ってくれた。
あなたの、
すべてが素晴らしいんだ。
しっかり描いてね、ぼくのこと。主人公はカッコ良くね。ちょっとはみでちゃってるね、ぼく。でもお母さんが書いてくれたストーリーだと、主人公のぼくはかっこいいね。
今日は、
中学校まで行ってきたよ。
文化祭の、
見学に、
中学校まで行ったんだけどね、
すごく緊張したんだ、
身長の高い、
先輩たち、
英語もカッコ良く話してたりね、
金管バンドは、
ぼくもしびれちゃったな、
ぼくも、
来年は、
中学生。
本当に?
ぼくの、
小学六年生は、
いつか終わるの?
いつか、お母さんに甘えないで、自分で何でもするぼくに、なれるの? ビールを飲むお母さんのとなりで、炭酸あおるぼく。お母さんの書いた主人公のぼくは、生まれたときから身長がどれぐらい伸びた?
あなたの、
すべてが素晴らしいのに、
時々、
すごく、
心配で、
当たり前の幸せが、
失われそうになりそうな、
そんな大波に、
飲み込まれそうに、
なるんだ。
道に、
迷いそうになって、
大げさに、
おどけるあなたを、
力いっぱい、
腕を引いて、
探してたのに!
て、
ひっぱたいたくなる、
そんな瞬間があるんだ。
お母さん。
その声に、
ハッとするよ。
お母さん。
あなたを主人公にしてから、
母は、
名脇役に、
なりたいと。
あなたの、
すべてが素晴らしいんだ。




