訪れる美容室
ハサミの開くのも閉じるのも、
落ちる黒髪、
はらはらと、
肩に、
乗っては、
滑り落ちては。
「ここツーブロックに、後ろは刈り上げて」
引っ張る前髪、
上目遣いに、
「ここあまり短くならないで」
笑ってお兄さん、
霧吹きで。
ハサミの右手、
鏡越し、
見つめる、
ぼくのおでこに落ちる髪を。
「学校で部活とかしてる?」
「やってません」
「休みの日になにしてる?」
「キャッチボールとか」
「僕も野球部だったよ」
「だからボウズなんですか?」
「はは。これ? そうだね」
ボウズなんて、
なんてかっこよすぎて。
くすぐるバリカン、
唸る音と、
よじれる腰が、
つい吹き出す、
お兄さんも笑って。
「こちらどうぞ」
先のシャンプー台、
腰掛けるふかふかと、
倒れる、
手を組み仰ぐ、
天井もつかの間、
被せられる布、
洗剤の匂い。
小刻みに、
揺れる頭に、
ミントのシャンプー、
染み渡る、
涼やかさ、
シャワーの、
くぐるのも。
「お疲れさまでした」
巻かれるタオル、
温もった体温、
鏡の前で、
澄ますぼくの。
ドライヤーあてて、
しかめつらのぼくを、
笑う、
振るドライヤーの、
熱に。
ワックス、
揉み込む髪の、
はらはらと、
毛束、
落ちるおでこに、
指先、
凝らして。
「ハイ。できあがり」
鏡越し、
恥ずかしそうな、
ぼくと、
新しい髪型、
なんでも、
やってやれそうな、
そんな気負い。
アイドルにだって、
なれそうな、
そんな、
すっかりその気なぼく。
ぺこり。
頭を下げて、
揺れる前髪、
香る、
シャンプーの、
ミントが。




