ファインプレー!
キャッチボールしてたら、
ボールが、
グローブからこぼれるのを。
父が投げる、
ふんわり、
下投げでぼくの目の前。
グローブの、
先で弾いて、
転がるボールが。
「キャッチできないよ」
項垂れるぼくの、
目の前が涙でかすむ。
「どうすればいいの」
右腕で擦る瞼は、
ポロポロと流れる涙。
「このボールを使ってご覧」
渡された硬いボールに。
見上げたぼくの、
目の前に、
隣の家から出てきたおじいちゃん。
「そのボールじゃ柔らかすぎる」
父からグローブを受け取って、
代わりに投げる、
おじいちゃんの、
力強い球に、
パシンっ
グローブが鳴る。
ぼくは、
ボールを投げ、
おじいちゃんがキャッチすると、
またぼくに向かって、
投げる。
グローブは、
高く鳴って、
ボールが収まるのを、
ぼくは見つめて、
破顔する。
「きもちいい!」
「気持ちいいか」
おじいちゃんは笑って、
父に返す、
グローブと一緒に、
「それやるよ」
と指差すボール。
「いいの?」
家に入ろうとする、
おじいちゃんの背中に、
ぼくは声をかける。
「いいさ」
ぼくに、
Vサインするおじいちゃんが、
なんとも、
かっこよく見えて。
日暮れまで、
投げて、
キャッチして、
父が、
「もうへとへとだ」
と音を上げても、
「まだまだっ」
と、
投げて、
キャッチする、
ぼくは。
次の日も、
投げて、
キャッチする。
そのまた次の日も。
次の日も。
おじいちゃんに、
見てもらいたくて、
うまくなった、
ぼくを、
見てもらいたくて。
日曜日、
父の手を引いて、
手にしたのは、
グローブと、
おじいちゃんのあのボール。
家の前で投げる、
キャッチする、
繰り返す、
ぼくのところに、
玄関から出てきた、
隣のおじいちゃん。
「やってるな!」
ぼくのてのひらに、
のせた、
ピンバッチ。
「ジャイアンツのだ」
そう言って、
笑ってVサイン。
ぼくも、
ジャイアンツの選手みたいに、
ファインプレー!
いつかやってみたい。
貰ったボールと、
ピンバッチを、
キャップに付けて、
まるでプロ野球の選手でしょ、
って胸を反らす。
今日も父が、
「ヘトヘトだあ」
と言っても、
「まだまだっ」
ボールを投げるよ。




