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指先に詩をあつめて、温もった体温で  作者: 今井葉


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89/212

マッサージしたら

恐れ入ります、先生の隣の、

駐車場をお借りします。

電話をしながら、

ペコペコ、

おじきする、

父の、

丸まった背中を、

見つめるぼくは。

それでは、

明日、

よろしくお願いします。

そう言って、

深々おじきする、

父の、

薄くなったつむじを、

見上げては。



マッサージしてくれたら、

お小遣いやるぞ。

笑って言う、

父の、

銀歯がこぼれて。

ぼくは、

うつ伏せになった、

父の、

背中に手を置くと、

その硬い、

背中の筋肉の上を、

ぼくの小さな手が、

うろつく。

もっと、

強くていいぞ。

振り向いて言う、

笑う父の、

目尻の皺に向かって、

ぼくは、

しかめつらしながら、

父の、

背中に、

人差し指を滑らせる。



と、

背中に書いてみる。

気づかない背中に、

もう一度、

と、書いてみる。

ん?

ようやくぼくに、

気づいて、

振り向く父の、

横顔の染みに向かって、

なんて書いたと思う?

と、

聞いてみる。

もう一回。

そう言って、

人差し指を立てる、

父の背中に、

もう一度、

ゆっくり、

と、

書いてみる。

口を丸く開けて、

しゃがれて発音する、

父に、

正解、

とぼくは、

笑うと、

次に、

と、

ゆっくり書いてみる。



口をすぼめた、

父の、

笑う背中に、

次だよ、

と、

人差し指を滑らせる。

もう分かったかも知れない。

そう言って、

ぼくに、

振り返る、

父の背中に、

と、

書いてみる。

と、

書いて、

点々を、

打つ前に、

父は、

あそぼ、

と、

繋げて、

発音した。

遊ぶか?

そう言って、

起き上がって、

髪を撫でる、

父に向かって、

スマブラしたい、

と、

ぼくは、

まっすぐ、

見つめて言った。

スマブラするか!

そう言って、

ポケットの、

コインケースから、

百円を取り出して、

お小遣い、

と、

ぼくのてのひらに乗せる。

ぼくは、

それを握りしめて、

ポケットに入れると、

スマブラしよう!

父の、

手を取って、

ブンブンと、

振り上げる。





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