表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
指先に詩をあつめて、温もった体温で  作者: 今井葉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/212

夏の終わり

水面に浮かぶ横たわる尾びれは。

とうに死んでしまったんです・kは。

小さな身体は特に小さく。

ぷくぷくの気泡を受けて。

水草の影に隠れる紅廟の。

動かなくなったぼくの緋鮒・Kは。



花魁の女のように。

力強く尾びれを振り泳ぐ様を。

水槽越しに。

いつまでも飽かず眺めるぼくといもうと。

夕日が反射する水面に。

飛沫をあげるよ・Kの。

降り注ぐ光から。



「わたしの寿命がきたんです」

「そんなわけないだろ。ぼくが知識不足だったばかりに…」

「祭りの日に会ったアナタとは、もう一年も一緒に過ごしました。寿命なんです」

「身体が汚れたね。水を入れ替えるから、機嫌直して」

「あの縁日の日、わたしを掬ったアナタは、今よりもちょっと幼くて…ほら逞しくなりました」

「これからも世話を続けるよ」

「寿命がきたんです」



土を被せる色褪せた鮒の身体。

目玉に纏わり付く土の。

暗闇の中に。

もう帰らない元気なあの尾びれは。

水を掻くこともなく。

土に還ろうとするのを。

呼び止めることもなく。

土を被せるぼくの。

少し大きくなった掌。



終わろうとする夏の。

遊び足りない夕方の。

耳の奥で繰り返す。

水面を叩く尾びれが。

いつまでも鳴り止まないレクイエムのように。

目の前を覆う緋鮒の。

着物鮮やかに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ