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指先に詩をあつめて、温もった体温で  作者: 今井葉


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理科準備室の詩集

片一方の靴下の、

机の下に隠れて縒れた、

泥だらけの。

忘れられた消しゴムと共に、

ゴムの抜けかかった、

片一方。



忘れられたぼくの出欠、

一人きりの理科準備室。

進まないドリルの、

進まない漢字の羅列。

遠くの笑い声に、

密やかなぼくの吐く息が。



指先に集まった詩。

ノートの端っこに集まった詩。

チャイムと共に折りたたむ。

蝉しぐれを受けながら。



くしゃくしゃのハンカチ、

鼻を拭うぼくと、

一人きりの理科準備室。

左手に潜むMの、

指先から韻文。

くしゃくしゃのノートと、

黒く丸まった消しゴム、

誰も見ないノートに、

ぼくの詩集。



夏の空気に震えるぼくのため息、

水槽のK・

K‘と。

尾びれを掻いて、

瞬足のK・

K’と。

理科準備室に響くポンプの、

唸る音に。

耳の奥で繰り返す、

送られる空気の、

唸り。



騒ぎ出す廊下に、

忘れられたぼくの詩集。

上がる笑い声に、

詩の切れ端が、

空気に彷徨って、

弾けて消えるシャボン玉のようで。

シンクロする蝉しぐれを、

背中に、

もう一度書く、

韻文に、

泥だらけのぼくの気持ちを乗せて、

風が乾かす汗と、

夏を描く、

理科準備室の詩集。



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