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参観日のクラゲ
今日の参観日、
羽を毟り取られたようなぼくを、
澄ました目線を送る、
母の。
どうかぼくの背中を射抜いてくださいと、
祈るぼくの喉が、
カラカラと、
痒くさせるようで。
ぼくは教室に、
クラゲを泳がせると、
寄ってくるぼくの肩の、
先っちょにシャープペン。
すらすらと指先に、
集合する黒鉛の、
日差しに透けるクラゲ、
母に気取られないように、
左腕に隠しながらクラゲ。
飲み干すクラゲの、
触手が絡む喉の、
先生に指された問5。
声にならない呻きで、
答えるクラゲの、
問5。
頬の紅潮する、
寄り添うクラゲの、
答えた答えに、
うなずく先生の、
右手のクラゲ。
夏の海に帰るのだと、
海を詠むぼくの、
シャープペンにクラゲ。
黒板に大海原、
光の届かない深海のクラゲ、
ぼくをいざなう、
深い青。
夏休み前の参観日に、
ご用命頂いたクラゲ、
浮かぶ波間に、
たゆたうぼくのこめかみ。
ぼくの気持ちを、
通訳してくれることには、
「ガチガチに固まってるでしょう!」
母と並んで帰る通学路の、
白線の上のクラゲ、
手をつなぐいもうとの、
触手の絡むクラゲ。
母といもうとの、
笑う声に、
震えるぼくの指先に、
参観日のクラゲ。




