フーガの朝
手を濡らし髪を手ぐしで解く。
白髪の交じったははのうしろあたまを ながめ))
なんの変哲もないくろいゴムを結わえて 真後ろから眺めるぼくは、
((() プロローグ
朝、目をさますとははが髪をゆっている。
朝は恨めしい、いちにちのはじまりっていう雰囲気にげんなりすると、
ははの おはよ う に はきけ がのぼる。
お はよう・
目がかすん で ぼくはめがねをぜつぼうのうち に とりあげ。
ははの後頭部に向かって こみ上げてきた胃液が 口内に:
寝間着のままかがみのまえにたつ母のかみは 脱色剤でまるで枯れたくさのように、
バッ ハなどを聴きながら、ハムを焼き、
たまごのふらいぱんに落ちる音。
油がはね、ふたをしてごまかす バッハの流れる台所で、
ぼくはちぇんばろの忙しない指の運びを想像しては気が逸る。そぞろに・
MとZが笑いながら追いかけ合う くるり回転し。、からだをよじらせ、からだを寄せ合う。
Mは音符を踏みつける。まるで打楽器,、
Zの口元から音符がこぼれる。 鼻歌のように。
ぼくのはは は、こげたふらいぱんを 、みずに浸す)))
けむった空気を四隅においやり トースターか ら とりだすパンにバターを。
あさは はずかしいぼく のこころを逆なでする、
扇の広げたる ぼくのいもうとの髪。
ぼくのいもうとは 毎朝Kに さかなのえさをやる まえに手をぱんぱんたたく,
えさのじかんよ、
との合図にKはぐるぐると水槽の中を遊泳する。
Kにチェンバロの意味などわかるものか。
だけどそんなに走り回って・
性懲りもなく Mも加わって、Z は遠目に眺 めるようであったが。
ぼくはあつい うちにたべなさいとうながされ めだまやきのめだまをくずす。
とろりと皿をよごしていく黄身が ハムのしたにまでながれこんで、ハムをもちあげ。 くちにほおばると、黄身が顎を伝っていく。
かまわずハムを咀嚼して、 人工着色の あのピンク色が砕け散っていくのを。
そうぞうしてぼくは、
飲み込まないままに パンをかじった。
染みたバターが口をぬらし
て、ぼくの手までてかてか
と、ぼくはそれをなめあげ
パジャマで手をぬぐった。
フーガの調べをMかZかと もしくは Kかと もしくは扇の広がったような髪のぼくのいもうとか、
もしくは、
ぼくの駿足かと・
なぞらえるんだ。
朝は駆け足だ。
胃液のこみあげるのも やまないで,。