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花魁

重く、よろよろと渦を巻く。

ぼくは生気のない顔をKに向けた。

背びれをぴんと立てて、気分が悪そうにさかなはぶるんとからだを振った。

Kの泳いでいるのをつかまえて、ぼくはそのKの鱗の細部までもみつめると、

からだをよこたわらせ、

血色の失っている その紅い 尾びれをひっぱる>>

渦は中心を欠いて,ちりぢりへ 散って。

その中をさかなはのみこまれる ように・・

ごらん、朱がとけてる、

すっかりしろいさかなといろをうしなったKは。

洗濯機の上の蛍光灯がちかんちかんと点滅するのを恨めしく見上げては、

よたよたと遊泳して みせる のだった。



そうしてKは水槽の深いところで暴れ回るようにして尾びれを震わせる。



ぼくは Kとの会話を嬉しく思ってここちよく耳をかたむける。

こうしていると、Kのさかならしいきょとんとした目玉がなんとも愛らしくて、

なつかしさまでおぼえたぼくは。

Kのとなりに座り込んで、

うずのおとをきいている)

からだをくねらせ、方向転換 をし、 背びれをふちどる。

その黒い血管が、

まるで寄生虫のようで。

疾うにKはうずの中心へとのみこまれてしまったのだった、・・



Kは利口そうにぼくに会釈すると、

ぼくの五体はもやもやと霧のなかを模索する。

Kの黒い血管が波立つのもうけて、 あざやかに 水深く。

未熟なKは その命が まもなく死をむかえるだろうともしらないで。

無邪気にあかい尾びれを ぼくに振ってみせるんだ、。

色艶はあざやかすぎるほどで。

興奮して金色の尾びれを追いかける。

金色 の尾びれは  いきをのんでみまもるぼくを・

あざわらうように。

ぼくは 金色の尾びれのいぼをみつめる。



ぼくはいつかこのさかなたちを食ってやるだろう、と一睨みくれた。



(エンドロール)



ぼくは洗濯機のなかからKをとりだす・

Kをハンガーに丁寧に掛けると、

洗濯ばさみをはさんだ、

ものほしに揺れるKをみて、

その姿態はあざやかなまでにあかく。

花魁の着飾ったおんなたちのようで・

いちやの夢は絶え絶えと。

太陽がKの身体を乾かす。

故郷 だった渦のちゅうしん のただなかにいたKは・・

はたはたとゆらめいて、

色あせたあかをむけるのだった。

やがて棺桶にとじこめられ眠る。

おひさまのぬくもりをとどめたまま。

朱よ。

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