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透明のブルー
透明のブルーを象って、それを
イヤリングにする。そういう午
後になんとなく不満気なきみは、
いくつもそれを象るけれど、心
はそのブルーに反して一向に晴
れない。眉間に皺なんか寄せて
憂鬱そうに俯く。ブルーは段々
薄まって、やがてクリアになっ
ていく。クリアなイヤリングを
耳に嵌めてみた時、きみはにこ、
と微笑む。そうだったらしい。
きみは、ブルーとは相性の問題
だったね、と。クリアとの相性
だったね、と。それはブルーの
空から落ちてくる雨粒。ポツ、
ポツときみの頬を打って、その
粒にきみのブルーが映ってる。
やがて降り出す大雨が、きみの
ブルーを洗ってくれる。ずぶぬ
れのきみは、嬉しそうにイヤリ
ングを揺らす。首筋に感じるイ
ヤリング。きみは首を振ってみ
せる。きみは生意気そうに、鼻
を鳴らすと、濡れた髪をひとま
とめする時、空を仰いだ。ブル
ーよりも透明に近いそれは、き
みのイヤリングそのものだった。