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[完結]世界の終わり  作者: ワクルス
暑い季節
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リアル鬼ごっこ

俺は沢山の民衆に追いかけ回されている。

無鍬(むくわ)に乗ってるから普通の人間には追いつかれないけど……


「スピードバフ」

「スピードフット」

「強化脚」


身体能力強化系のやつにも追われてるから捕まるのは時間の問題だ。

この町のやつらは大体水夢に洗脳されてるって思っておいた方がいいな。


(分身、透明化。無鍬、ちょっと次の交差点を右折してくれ)

「カフカフ」

(何もしないって。頼んだぞ)

「バフバフ」


俺は無鍬と俺を透明化し自分達に被せるように分身を作る。

無鍬は不服そうだったが俺の言う通り右に曲がってくれる。


(よし、止まっていいぞ)

「バフバフ」


無鍬は止まり俺は無鍬から降りる。

まずは水夢を見つける所から始めるか。

何かいい方法はないものか。


「バフバフバフバフ」

「……雫がいないと何言ってるか分からんな」


何を言いたいのか分からないのが不便すぎる。

あ、そうだ。

無鍬の能力で洗脳を無効化できるんじゃ?

いや、洗脳はあくまでもクソみたいな夢を繰り返し見続けた結界、そんな風になってしまっただけだから無効化はできないか。


「とりあえず、水夢の居所を探し出さないとな」


そういえばあの放送で水夢は俺を町の外まで運べって言ってたよな。

あいつらは俺を捕まえようとしている訳だ。

仕方がない犠牲者を出すか。

俺は透明化したまま無鍬に乗り、前に行くようゼスチャーするが無鍬は俺のそんな態度が(しゃく)だったのか、そっぽを向く。


(ごめんなさい、前に言って欲しいんです)

「バフバフ」


無鍬はそれでいいんだと言わんばかりな返事をしさっきの道にもどる。

偉そうな態度のクマ野郎だな。

熊鍋の具材にするぞ。

それを雫に調理させてやる。

ご主人様の腹の足しになれるんだから本望だろ。


「人が多いな。さっきのでまぁまぁ撒いたと思ってたんだけど」


道にはまだまだ沢山の人がいた。

その中には星奏の姿もあった。

あいつも目のハイライト消えてたしな。

あの時に洗脳されてるとは思わなかったのは浅はかだったな。

丁度いいし、あいつを犠牲者にするか。


「編集」


俺は星奏の見た目を俺と瓜二つにする。

そして星奏の近くで爆音を鳴らす。

すると、周りの人達は一気に星奏の方を見る。


「いたぞぉぉぉぉ!」

「やっばバレた!」


俺の声をあたかも星奏が出したかの様にする。

これでバレる心配はないな。

星奏は周りの人達から取り押さえられ縄でぐるぐる巻きにされると町の外に向かって運び出される。


〈ピンポンパンポーン〉


この声は、水夢か。

なんで今放送を入れた?


〈高野竜は光と音を操る程度の能力を持っているため、町全体に大きな能力無効空間を作ります。能力が使えなくなり不便になると思いますがご了承の程、お願いします。ピンポンパンポーン〉


はにゃ?

俺が呆気にとられていると結界のような物が町全体を覆う。


「ていうか、能力無効ってことは無鍬の能力無効化能力も無効化されるのか?」


なんだその、無効化の無効化みたいな。

意味が分からん。

俺は無鍬から降りると無鍬は立ち上がる。


「バフバフ」


無鍬はそう鳴くと大きな道な方へ走って行ってしまった。

まだ、命令を受けてなかったからかな。

ていうか、地味に賢いな。

……待てよ?

能力無効されるんだから、雫の命令も無効化されるんじゃ?


「おい、無――」

「いたぞぉぉぉぉ」

「やっば、逃げろ!ウインドダッシュ」


俺は魔法で走るスピードをあげ大きな道には行かず近くにあった細い道に向かって走る。

俺は体力がそこまであるほうじゃない。

早めに隠れる場所が欲しい所だがどうするべきか。

星奏はぐるぐる巻きにされたまま放置されていた。


「助けてー!」



途中、俺と同様に風魔法で足を早くするやつに出会って死にかけた。

俺は息を切らしながらもなんとか建物に隠れることが出来た。

あの時に壁を出してその壁の上に乗って降りた風に見せかけてなかったら死んでたな。

やばいな、心臓の鼓動が鳴り止まない。

足もガタガタと震えてる。

でも、あの2人を洗脳されたままにさせるかよ。

水夢、お前は絶対に倒す。


「威勢のいいことを思った後で恥ずかしいけど、もうそこまで魔力残ってねぇんだよな」


俺はかっこいいからずっと付けるようにしていた魔力測定器を見る。

残り魔力量は…4割程度か。

町の外に連れて来いなんて言う時点で水夢は指名手配されてるタイプのやつ。

そん中で俺に恨みを持ってるやつらはゾンビ教ぐらいしかいないか。

じゃあ上級ゾンビの可能性が高いな。

この魔力で挑んでも負けるだろうな。

魔力水なんて持ってる訳ないし。

ギルドに行けば置いてありそうだよな。


「目標、ギルドに行って魔力水の強奪。そして、出来ることなら無鍬の回収」


あいつがいればなんとかなりそうだ。


「まずは……」


俺は建物の窓から外をチラッと見る。

そこには沢山の俺を探している人間達の姿があった。

その姿はまるでゾンビみたいに見えた。


「ここから出ないとな」


全く、これじゃあ本物のバイオハザードじゃないか。

いままでそういう要素全くなかったのに。



俺は高野龍之介、今は華蓮さんのお世話をしている。

なぜかと言うと、俺が眠れなくなるコーヒーという物から普通のコーヒーにすり替えたらあっという間に寝てしまって2週間が経ってしまったのだ。

最初は直ぐに起きると思ってたけどまさかこんなにも寝るとは。

ていうか、結構若く見えるようになったな。

今なら30代前半位には見える。

本当はそれぐらいの年齢だったのかもしれない。

俺は華蓮さんのリビングにあった長時間、意識が無くなった時に誰でも簡単に出来る栄養と水分を補給できるチューブを腕に刺す。


「うっうぅ」

「あ!大丈夫ですか?」


華蓮さんが起きたみたいだから急いでお風呂を沸かしに行く。


「あれ? 私、どのくらい寝てた?」

「2週間ぐらいです」

「え!?」

「いやぁ、まさか、コーヒーをすり替えただけでここまで寝るとは思いませんでしたよ」

「なんだ、君のイタズラか」


華蓮さんは起き上がり体を伸ばし始める。


「そういえば、なんで君はお風呂場にいるんだい? まだ朝だけど。君は朝シャンする人じゃないだろ?」

「汗臭いので早くお風呂に入って頂こうと」

「失礼だね。早く入るから待っといて」


俺はリビングに戻り今日のクエストに向けての準備を始める。

華蓮さんはパソコンを起動していた。

これはあれだ、中毒ってやつだ。

こういう時は変に取り上げずに現実に戻りやすいような環境を整える事が重要なんだ。


「華蓮さん、外で汗をかきに行かない?」

「汗臭いって言ったのはどこの誰だい?」


ちゃん付けじゃない事に気付かないなんてこれは完全な中毒だ。

どうやったら治るんだろう。

長年の知恵を絞れ。

俺だって一応生きてきてこの方四十数年。

中毒に対する知識だってある程度は――


「あ!竜くんが札幌に行ってる」


なんだ竜の居所を掴んでただけか。


「……え!?」

「札幌はまだ私達も行ったことがない。それに、ゾンビ教のやつらの生き残りだっているだろう」

「竜が…まずい」


俺は慌てて、クエスト用にと準備していた持ち物を取り玄関に向かう。


「待ちたまえ、龍之介君」

「早く行かないと竜が…」

「いいかい?よく聞きたまえ。札幌まではかなり距離がある。君の能力での身体能力上昇も負荷がかかる。そんなポンポン使っていいものじゃない」

「竜が!」

「なんのために私がいると思っているんだ?」


なんのためって……なんか俺に協力してくれるからいてもらってるだけなんだが。


「私とドライブデートといこうじゃないか」

「は?」


こんな状況で何を言ってるんだこの人は。

ガソリンなんて殆どを貴族が所有してるんだぞ?

車なんて動かせるわけが無い。


「車なら町を出ればそこら辺にゴロゴロあるだろ。それにガソリンは貴族が所有しているって事は貴族から買えばいい」

「そんなのどうやって? 絶対高価に決まっている。俺達の持ち金全部合わせても到底買える値段じゃないことは確かだろ。ガソリンとかの石油燃料は火力発電の供給が再開したように貴族が大事に保管しているはずだ。普通の金額じゃまず買えない」


華蓮さんは鼻で笑いながら自身のデスクの上に置いてあったUSBを取る。


「これを売る。魔力強化玉の製作法」


華蓮さんはドヤ顔で俺の方を向く。

そして、華蓮さんは俺に近づき肩を叩く。


「焦る気持ちになるのは当たり前の事なんだろうが落ち着きたまえ。これを手に入れれば金がかなり入ってくる。そんな物、金をそこら辺からむしり取ってる貴族ヤツらだって欲しいと思わない訳が無い。そこをつく」


魔力強化玉は消耗品ではないが1個1個が高価で持ってるやつが少ない。

しかし、材料費はたったの1万円で済むという。

独占企業が法律で禁止されてた理由が痛い程分かる代物だ。

それを売るのか。


「いいのか? そこまでしても返せる物は何も無いぞ」

「言ってるだろ。私は君が好きなんだ。まぁ、ちょっとわがままを言っていいならキスぐらいしたい物だね」


竜の親としての務めを果たさなかった責務を果たそうとしている俺にとっては安すぎるな。

済まない、辰美(たつみ)

最低なのは分かっているがちょっとだけ浮気させてもらうぞ。


「その程度なら嫌という程してやる。早く行くぞ。竜に死なれたらあの世で妻に会わせる顔がない」

「かっこいいね。流石、私が見込んだだけはあるよ」


俺は華蓮に近づき、華蓮の顎を少し持ち上げる。


「その前にお風呂入ってきていい? ちょっと汗で気持ち悪くなってきた」

「あ、はい」


完全に覚悟を決めてたのに……でもまぁ、竜を助けに行けるなら別にいいか。

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