夢の学校生活
何故か俺は今、学校の教室で授業を受けている。
何を言ってるか分からねぇと思うが俺も何を言ってるか分からねぇ。
ただ、眠くなったから布団に入って寝ただけなんだ。
…なんだじゃあ夢か。
待って、夢の中で夢って自覚したら明晰夢っていう自由に夢を操れる夢を見れるんだよな?よし、じゃあ俺好みの女の子と○○○する夢でも…
俺がそういう妄想をしても辺りは何も変わらない。
なんだよ嘘かよ。
情報に踊らされるとはまさにこの事だな。
「夢にしてもこんな鮮明に見えるもんか?もしかして今までの方が夢なのか?夢オチとか最低かよ」
伏線なしの夢オチはマジでゴミだからな。
何回そんな作品を読んできたことか。
ていうか、夢だったって事はあいつらの存在も無いものになるのか。
あいつらに会えなくなるかな…それは寂しいな。
授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。
俺は出した覚えのない教科書を机の中に入れる。
「よ、竜。お前、今の授業寝すぎやろ」
この声は…
康宗?
俺は声がする方を向きそいつの顔をよく見る。
「…なんで康宗が?」
「どないしたんや?俺が死んだ夢でも見たんちゃうか?」
そうか、やはりさっきまでのゾンビがいる所が夢の世界だったのか。
俺の髪の毛の色は…灰色のままだ。
康宗は黒髪黒目なのに。
「鏡ある?」
「いや、持ってへんな。星奏達ならもっとるんとちゃうか?」
は?星奏達いんのかよ。
俺の悲しみを返せ。
ちょっとだけ泣きそうになったんだぞ。
ん?待てよ。
なんか俺の知らない記憶があるな。
康宗と俺はたまたま同じタイミングで転校をすることができ、そして高校で星奏達と出会ったって事になってるのか。
多分ここが夢って事はほぼ確定か?
いやよく分からんな。
証明のしようがない。
俺達が今見ている世界は夢かもしれないし現実かもしれない。
それを証明しようとも出来ないってなんかの本で書いてあった気がする。
俺も1回考えたけど結論は出なかった。
星奏と雫は俺が知ってる金髪で青い目と薄い茶色で赤い目だった。
この2人と康宗の差は一体?
「星奏、雫。竜が鏡を貸して欲しいって言うてたで」
「なんだ?前髪を整えるならあのトイレで前髪をいじってて邪魔なやつみたいにすればいいだろ?」
俺がそんな奴に見えたらお前はもう末期だ。
「女子の所もそんな感じなんやな」
「そうだよ。正直めちゃくちゃ邪魔。前髪整えるなら教室でやって欲しいね」
星奏と雫はまぁ変わりなさそうだな。
星奏は俺にグチグチ言いながらも手鏡を俺に渡す。
俺の目は紫色のままだった。
まぁ別に黒髪黒目の方でもどっちでもいいのだが。
俺は用が済んだので星奏に手鏡を返す。
「ていうか昨日の竜、めちゃくちゃ足引っ張ってたよな」
俺は昨日、こいつらとゲームをした事になっているらしい。
「お前達が合わせてくれなかったからだろ。星奏が一番うまいんだから俺に合わせろ」
「下手くそに合わせる技量は無い」
「竜があそこで煽りエモートをしたのが悪いんやろ」
「あれがなきゃ勝ってたのにね」
やばい、オンラインゲーム系の話はよく分からないんだ。
存在するはずのない記憶のおかげで意味がわかるのがどこか気持ち悪い。
「しかも、あのタイミングでのウルトなんてささる訳ないだろ。クソガキッズでも分かる事だぞ」
「そこまで言うならいいぜ。テストの点数で勝負だ。負けた方が戦犯って事な」
「竜に有利すぎじゃない?私達も星奏側で参加させてよ」
「俺達はそれぞれの最高点数で出し合って勝負で竜は1人で俺達に勝てばいいってことや」
「まぁ、なんでもいい。どうせ勝つのは俺だ」
康宗は理系科目は結構得意だけど俺以下だし星奏は結構マシ程度、雫は論外だしな。
「勝ったな。風呂食ってくる」
「一級フラグ建築士がフラグを建てたぞ」
「よっフラグの匠」
「はよ回収せんかい」
酷い言われようだな、全く。
でも…居心地いいな。
「次の授業は水夢さんの話をする授業だ」
「本当だ。やった!」
「しかも水夢さん自身がリモートで喋ってくれるらしいよ」
「今日は最高だな。竜の足でまといの話なんてどうでも良くなるほどだ」
俺は足でまといじゃない、知らんけど。
水夢ってやつは俺の存在しない記憶の中にいたな。
とりあえずなんかすげえやつって感じらしい。
「おりがたぁい系の話か。寝よ」
「竜、まさか水夢さん直々に話してくれるのに寝るなんて失礼極まりないよ。侮辱罪だよ。死刑死刑」
「お前らも絶対寝るだろ」
「そんな訳ないやろ!水夢さんの話を聞かずに寝るなんてバカ以下!生きる価値なんてないんや!」
…お前誰だ?
康宗が生きる価値がないなんて死んでも言う訳が無いだろ。
もしかしてあの頃の康宗はいなくなったのか?
バカみたいに綺麗事を言ってたあの康宗が。
成長ってだけでこんなに変わるか?
いや変わらない。
あいつの意思は本物だ。
子供の戯言じゃない..
誰が言っても響かないような言葉で俺は感じたんだぞ。
俺が感じたんだ。
ひねくれて周りの事なんて何も考えなかった俺が。
「お前は…誰だ」
「竜、どうしたん?もしかして厨二病でも発病したんか?高校生にもなってな」
「竜、早く治せよ」
「みっともないよ」
この2人は本当にいつも通りだから何も思わないな。
でもまぁ確信した。
ここは夢の世界だ。
証明しなくても分かる。
夢じゃなきゃ康宗があんな事を言うはずがないだろ。
俺は机に膝を置いてうつむく。
「竜、どうしたん?具合悪いんか?」
なんだこのパチモン感は。
もしかして俺の夢が誰かに操られてるのか?
夢はその人の記憶を整理するためにあると言われてる。
それが本当だとすると絶対にありえないことが起きた。
つまりこれは誰か能力者が俺に攻撃を仕掛けて来たのか。
いや、これは攻撃なのか?
あの2人だけじゃなくパチモノとはいえ康宗も一緒に暮らしたいっていう俺の願望が夢の中だけど叶っている。
これは本当に攻撃なのだろうか。
小鳥がちゅんちゅん鳴いている。
朝が来たのだろう。
「ふわぁぁぁ。うぐぐぐぐ」
「雫、おはよう」
「はやっ。竜、いつもよりも起きるの早いね」
「ちょっとゴミ以下の夢を見たもんでな」
「悪夢を見て怖かったんでちゅね。一緒にねまちょうか?」
うん、この2人は夢のやつとそこまで大差ないな。
唯一違う点は水夢ってやつを崇拝しているかいないかって感じだ。
「星奏は多分まだまだだから。私達だけで朝ごはんのバイキング食べに行く?」
「そうするか。でもこの旅館のバイキング飽きてきたんだよな」
「流石に1週間以上いるしね」
「暑い所にいたくないからってやりすぎたか」
俺は一応雫の事を観察する。
なんか最近2人ともやたら機嫌いいからな。
星奏なんか機嫌良すぎて町の悪党を影で狩ってくると言うぐらいだからな。
星奏はただの病気か。
「今日何する?」
「うーん、本でも読んどくわ。雫は?」
「朝は私も本かマンガでも読む。昼は星奏の診察をしないとだから」
「それ俺も手伝うわ。流石に旅館の中で修行をし始めそうになったのはやばいからな」
星奏は本当にどうしたんだろう。
昔のクールキャラ気取りはどこ行ったのやら。
俺達はバイキング席を取り食材を取りに行く。
「そういえばさ。水夢って人凄いよね」
「…へ?」
《おまけ》
星奏の夢
私は大きなビルの屋上で仁王立ちをしながら下を見下ろす。
時刻は深夜、今日も犯罪の魔の手から皆を救う影の執行人が舞い降りる。
「今日も行くんですね」
「はい、水夢師匠。私、師匠の下で学んだ全てを世界のために使いたいんです」
「ありがたいことを言いますね。死なないように頑張ってください」
「もちろんです」
水夢師匠は私が返事をするとあっという間に立ち去る。
「星奏様、準備が整いました」
私の配下の者が報告にやってくる。
「今日は薬物を流してるやつらだな」
「はい。こちらが今回の相手の情報です」
「もういい。既に知っている」
「流石、星奏様」
さぁ、執行の時間だ。
水夢師匠、見ててください。
「誰かぁ!助けてくれぇ!」
「いやぁぁぁぁ!」
下から竜と雫の声がするな。
「星奏様、どうされました?」
「少し遅れると伝えてくれ」
「かしこまりました」
全く、世話の焼けるやつだな。
「全く、仕方の無いヤツらだ。むへへへ」
「「早く起きろ」」




