動物たちの日常2
私の名前はブラウニー。
雫様の眷属に初めてなった者です。
私は雫様がいる旅館の部屋の窓際にずっと立っている。
《うへへ、眷属入りしちゃったぁ》
《イリ、あなたはそれを何日連続で言えば気が済むんですか?》
《何日でも。こんな嬉しい事はない》
この期待に目を輝かせているのはイリ。
最近雫様の眷属になったやつらの1人です。
ちょっとムカつきますがイリ達が眷属入りしたのはまぁいいでしょう。
《なんであの熊野郎も仲間にするんですか?》
《ブラウニー、お前もそれ何回言えばいいんだ?一昨日からずっと聞いてんだけど》
《だって雫様を殺そうとしたんですよ?そんなやつら生かしておく必要ありますか?》
《仲直りしたんだからいいじゃんか。あいつらが来てくれたおかげで雫様を守りやすくなってるだろ?》
それはそうなんですがちょっと嫌じゃないですか。
殺そうとして来たやつを仲間にするなんて。
自然界ではそんな事ありませんでしたよ。
人間達の常識に慣れすぎではないですか?
《ていうか、ブラウニー。これなんなんだ?》
《あぁ、それはですね》
イリは竜さんがお持ちになっていた漫画を覗き見る。
「雫、イリ…だったか?が俺の肩に乗って来たんだけど」
「今、竜が持ってる漫画に興味があるんだって」
「動物って漫画に興味持つんだな」
なんかバカにされてる言い方でしょうがここは我慢しましょう。
《おぉ、人間が書かれてる。うわぁ目大っきい》
《漫画を見た時に言う言葉としては特殊すぎませんか?》
私も雫様が読んでるものが気になって読んだ事がありますけど絶対に目が大きい事には触れてないはずです。
《これなんて読むんだ?》
《それは俺と付き合えよって書かれてあるんですよ》
《付き合うって?》
《まぁ簡単に言えばつがいになる前のお試し期間みたいな物です》
《何そのめんどくさいの。好きならちゃちゃっと子供産めばいいじゃん》
人間というのはそういう生き物なんですよ。
めんどくさいけど相手の気持ちを考える生き物です。
「そういえば星奏は?さっきから見てないけど」
「星奏は今小説に影響を受けて陰の実力者になろうと町の悪党をぶん殴りに行ってる」
「……嘘だよな?」
「……嘘だといいね」
《なぁ、ブラウニー。なんで雫様はこんなに驚かれているんだ?》
《私達がチニに思っている事とさほど変わりはありませんよ》
イリが納得したようなしてないような顔をする。
説明した私が言うのもなんですが正直、私も何を言っておられるのかさっぱり分からないのです。
《ていうか、腹減ったな》
《もうお昼ですしね》
《あいつら誘って狩りにでも行くか》
《そうしましょうか》
「雫?窓なんか開けてどうしたんだ?」
《ありがとうございます。雫様》
「いってらしゃい」
《行ってきます》
「いや、この子達がご飯食べに行くって」
「そんなレストランに食べに行くみたいなノリで狩りに行ってるんだな」
私達は雫様が開けていただいた二重窓から空へ羽ばたく。
《行ってらっしゃいませ》
《クロ、あなたはいいんですか?》
《無論です。既に昼食は済ませてありますので》
《分かりましたでは行ってきます》
クロさん、凄いですね。
もう食事を済ませてるとは。
いつ食べたのでしょうか?
《前からずっと思っていたけど寒いな。この時期はもっと暑くなるはずだろ?》
《この辺りの地域ではこれぐらいはまだ暖かい方らしいですね。叡犂さんから聞きました》
《嫌いになった原因なのに話しかけに行ったのかよ》
《この辺りの地域は全く知りませんから。何も知らない状態で雫様を守れるはずがございません》
《その辺は割り切ってるんだな》
当然です。
雫様が第1なのですからその他の事なんて二の次です。
私達がしばらく飛んでいるとドム達がいる所を見つける。
《よぉ、調子はどうだ?》
《この空腹感がすごく気持ちいい》
《俺が本気を出すとこの辺一帯の生物がいなくなってしまう》
《なるほど、調子が悪いようですね》
《違う!獲物が見つからないだけだ》
それは困りましたね。
どうしましょうか。
《じゃあさ、サンさん達に協力してもらおうぜ》
《あの人達ですか。どこにいるんですかね》
《雫様に連絡してもらおう》
イリって意外とこういう時に機転が利くんですね。
少し意外です。
《雫様、サンさん達は今どの辺におられるのでしょうか?》
《えぇっとね、ちょっと待ってね》
サンさん達がお腹を空かしている所を1度も見た事がないのでどういう狩りをしているのか興味深いです。
《えぇっとね。ちょっと視界覗かしてもらうね》
《分かりました》
《そこから真っ直ぐ行ってあの3つの丸の機械、信号機って言うんだけどそこを右に曲がって真っ直ぐ行けばいるよ》
《雫様。私はもう信号機の存在は知っていますのでその様に言わなくても伝わりますよ》
《ごめんごめん。伝わらなかった時の事をまだ覚えちゃってたからね》
他の人達みたいな扱いをしないでください。
私だって成長しているのですから。
私は雫様に言われた通りに進む。
イリ達も私に続いて来る。
少しするとゾンビ達の交戦しているサンさん達を見つける。
《大丈夫ですか?》
《ん?あぁブラウニー達か。俺様達は大丈夫だぜ》
《この僕がいるからね》
《違います。私がいるからでございます》
《違う。俺様がいるからだ!》
《それはない!》
《それはございません》
サンさん、他の2人からそんな感じに扱われているんですね。
《雫様から要がある事は聞いてる。今は食事中だからちょっと待ってろ》
《《《《え?》》》》
食事中…と言っても目の前にあるのはゾンビ達なのですが。
《こいつらすっげえいいんだよ》
《腕とか食べても食べても直ぐに生えてくるから最高だよね》
《そうですね。食事向きではあると思います》
なるほど。
もしかしてサンさん達ってかなりヤバい感じなのですか?
《実は俺達も腹が減ってて》
《そうなのか?じゃあ一緒に食うか?》
ゾンビとは言え人間の形をした物を食べたら雫様から嫌われそうなのですが。
うーん…
《背に腹はかえられませんね》
《じゃあ決まりだな》
サンさん達は腕を噛みちぎり人数分集まるとそれを咥えて走り去る。
私達もサンさん達について行くためにこの場からすぐに去る。
《ほら、お前達の分だ》
《ありがとう。お前らって結構強かったんだな》
《これでも先祖はどこかでトップを張ってたからな》
《まぁ、俺の力の前にはその優秀な遺伝子も無意味だろうな》
《おっじゃあ僕とやる?》
《俺の力は今、古の戦いで封印されてしまっている。なので力を取り戻せたらその時にまた頼む》
すっごい早口ですね、チニ。
セミすら捕まえられなかった癖にイキがらないでください。
私はサンさん達から貰ったゾンビの腕を食べる。
《腐ってるけど食べられなくはないな》
《もしかしたらお腹壊すかも。その時はどんな痛みが僕を楽しませてくれるのかな》
ドム…少し黙っててくれませんかね。
あなたは黙っていれば普通なんですから。
《そういえば、最近雫様はいい夢をご覧になるようです》
《いい夢か。俺は腹いっぱい食って寝たい時に寝て沢山子供ができる夢を見たいな》
《夢の中で寝てどうするんだ。まぁ分からなくはないけど》
《正直それ以外にいい夢って思いつきませんよね》
《確か、雫様は沢山の人から褒められるっていう夢を見たらしいです》
《それの何がいいんだろう》
《よく分かんね》
人間と私達は何かが違うのでしょうか?
《俺なら沢山のヴィランを俺の古に封印されし力を用いて一掃する夢を見たい》
《雫様に沢山虐められる夢を見たい》
こんな形で気付きたくなかったけれどもこの2人は意外と人間に近いのかもしれない。




