札幌行き2
端的に今の状況を説明すると
ゾンビに囲まれた、ゾンビの数がまぁまぁ多い、雫は寝てる、起こすのはなんか悪い気がするから俺も星奏も起こせない、圧倒的人数不利
と言った感じか。
「いや、雫を起こさない手はないな」
「何独り言を言っているんだ?」
俺は雫の肩を揺さぶる。
それでも雫は起きない。
俺は耳元で息を吹きかけるが起きない。
水をぶっかけても起きない。
激しく揺さぶっても起きない。
「星奏、こいつ本当に人間か?」
「酷い言い様だがそれに関しては同意する。流石に水をぶっかけられたら起きるはずなんだが」
星奏は困惑した表情を浮かべる。
雫が起きないという事は俺達は2人でこの状況をなんとかしなければならないという訳らしい。
俺と星奏は剣を取り獅車を降りる。
「ちょっと寒いな」
「まぁ東北辺りにはいるだろうからな。東北は夏でも涼しいし」
その代わり冬はやばい程寒いらしいけどな。
「竜、明かりの範囲を広げてくれ」
「はいよ。ライト!」
俺は照らしていた範囲を広げる。
周りが良く見え分かったことはここにいるやつら以外はゾンビはこの辺にはいないらしい。
後ろは見てないから確信はないがそれが唯一の救いだ。
「まぁ、下級だけだろうし大丈夫だとは思うが」
「流石にこんな所で上級は来ないだろ」
「あ、フラグ」
あ、やっちまった。
俺って結構フラグ回収する事が多いから上級が来る事も視野に入れるか。
「凍結」
「透明化」
まぁ、下級だけなら俺と星奏でなんとかなるからいいんだけどもし中級がいたら流石にちょっとしんどいな。
まぁ、1人で中級ゾンビを討伐した俺は大丈夫だろうけどな。
俺はそんな事を考えながら身動きが取らなくなったゾンビの首を切る。
なんていうか作業って感じがする。
星奏もさっきまで怖がってたのに今は口を大きく開けてあくびをしている。
星奏、お前もちょっとは手伝えよ。
ゾンビがどんだけいると思ってんだ。
「聖なる火」
俺達では無い声が聞こえるとゾンビ達の動きを封じていた氷が溶ける。
「は?」
「オマエラをタオセバ ジョウキュウ イリ デキルってキイタ」
わぁお、後ろから中級ゾンビが来ちゃった。
「スウキキョウのミタニシュウゾウ サマ。このワタクシがカノモノラをタオシテ ミセマショウ」
紫色の服を着たゾンビがやってくる。
枢機卿とか言ってたしゾンビ教関連か。
それなら紫色は司祭だな。
「なんか暑くなってきた」
「もしかしたら能力持ちかもしれないな」
「なぁ星奏、1つ聞いていいか?」
「どうしたんだ?」
「能力持ちってレアじゃなかったっけ?」
「…竜……私達は運がいいな」
「良くねぇよ!」
なんでそんな満面の笑みでグットポーズを取れんだよ。
「夜だからレーザー使えない事頭に入れとけよ」
「分かってる」
「聖なる水」
俺達が中級ゾンビに近づこうとすると魔法で俺達を濡らしてきた。
「神の冷気」
中級ゾンビがそう言うと辺りが一気に冷え込む。
更に冷え込む。
更に更に冷え込む。
「って寒い寒い。こんなんじゃ死んじまうわ。ファイヤー!」
「これは不味いな。熱気!」
俺は辺りに炎を出し星奏は暖かい風を吹かせる。
辺りの温度は1度程度と言った所か?
俺達が必死に温めてこれだからな。
「ハヤク、ゾンビ サマのチカラにクップク スルがイイです」
「誰がするかバァカ!」
「竜って頭良い癖になんか頭悪そうだよな」
なんでそれを今言うんだ。
後でいいだろ。
俺達が凍えている中、下級ゾンビ達はドンドンとやってくる。
「俺達に近づくなんてやっぱりバカなゾンビだな。ライトニング」
「最近漫画を見たら思いついた技をやってみるか。サイコキネシス」
星奏はもう一本の剣を浮かせ自分の傍に持ってくる。
剣がやってくるのと同時に星奏の後ろにゾンビがやってくる。
「星奏!」
「大丈夫、分かってる」
星奏はただ突っ立ったままゾンビ首が切れる。
星奏のもう一本の剣がゾンビの首を切ったのだ。
「遠距離でゾンビを殺れる最強の技だぞ。どうだかっこいいだろ」
「すげぇ!漫画とかラノベとかでしか見た事がねぇ!」
「ドヤァ」
「聖なる火」
「「アッツ」」
俺達は中級ゾンビが出した魔法に焼かれる。
だが幸い服が濡れてたので体が燃えるまではいかず軽傷ですんだ。
「残念だったな。来世でやり直しな」
「ミタニ シュウゾウ サマ、モウシワケゴザイマセン」
俺は中級ゾンビに近づき星奏は周りのゾンビをやっつける。
「デモ、タカノ リュウ だけは!」
中級ゾンビは俺の顔面に手を突き出し頭を貫通させる。
「残像だ」
「ゾンビ サマ、ネガワクバ アナタをコクシしたワタシをオユルシクダサイ」
俺はそのまま中級ゾンビの首を切る。
すると周りの気温はぐんぐん上がってくる。
俺は出てた炎を消し星奏も暖かい風を消す。
そしてゾンビ達を一掃し終える。
はぁい皆さん、みってるぅ?
俺は動画撮影をしてる風に振る舞う。
さっきの戦いで濡れてしまった服をそのままにする訳ないよな。
つまり着替える必要があるって訳。
まぁ俺も着替えないといけないんだけどさ。
その前に星奏の着替えを覗いていこうと思うよ。
これはまぁ仕方ないよね。
だって星奏がいるのは獅車を挟んだ向こう側。
星奏の裸は前にも見た事はあるが興奮しなかった。
それは俺があいつを異性として見れてないからだ。
でも、下着姿を見ればその考えも変わるはず。
俺は音を消し姿を消しそのまま星奏がいる所に向かう。
雫の下着姿はアウトだけど星奏はいいよね。
うんうん。
「竜、まだか?私はもう終わったぞ」
あ、そんなサービスシーンはくれないんですね。
俺は肩を落としながらさっきまでいた位置に戻る。
「もうちょっとで終わるから待ってろ」
「男の癖に遅いな」
「今の差別発言だぞ」
「はいはいLGBT、LGBT」
ちゃんとQプラスもつけろよ。
俺は軽口を叩き合いながらも着替えをすませる。
「ふぅ、さっきはどうなるかと」
俺は獅車の後ろの少し座れるスペースに腰掛ける。
「竜、コーヒー飲むか?」
「飲む飲む。牛乳持ってきたんだろうな?」
「勿論」
星奏はバックからインスタントコーヒーとヤカンを取り出す。
ヤカンに魔法で水を入れ道路に火をつけヤカンを浮かせて沸騰させる。
「そういえば気になった事があるんだけどさ」
星奏は改まった感じで俺の方を見る。
「お前の大阪での友達ってどんなやつなんだ?」
「唐突だな」
「いいだろ別に。暇だし気になったんだし」
そういうもんか?
まぁいいか。
「名前は川端康宗、俺らと同い年。俺と出会ったのは小学3年生ぐらいだったな。お前と雫が出会った年と同じだ」
お前達の話を聞いてる時に驚いたよ。
だって出会い方と時期がほとんど一緒なんだからさ。
「出会い方もお前らと一緒でさ。あいつが教室で1人静かに本を読んでた俺に話しかけてくれたんだ」
「偶然としか言えないぐらい一緒だな」
「まぁな。あいつは本当にとにかく純粋なやつって感じだ」
「例えば?」
「そうだな。人々が綺麗事だって言い捨てる言葉を本気で言う奴だったよ。世界平和とか努力は必ず実るとか」
「幼稚な奴だな」
「本当にその通りなんだよ。車に轢かれそうな白猫を体を張って助けたと思ったらビニール袋でさ。俺はゲラゲラ笑ったけどあいつは良かったってホッとしてたんだぜ?正義のヒーローごっこかよって思ったわ」
「お前、最低だな」
「急に辛辣ゥ」
誰でも笑うじゃんそこは。
命張って猫を助けたと思ったらビニール袋だったんだぜ?
まぁでもあいつは他の奴と違って面白いやつだったな。
お前らと同じくらい軽口を叩けて一緒にいて楽しいやつだ。
「お前と違って康宗ってやつ、本当に良い奴だな。他にも良い奴エピソード聞かせてくれ」
「そうだな……」
俺は雫が起きるまで康宗の話をする。




