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[完結]世界の終わり  作者: ワクルス
暑い季節
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札幌行き

俺と星奏は獅車の前で体育座りしている。

雫はと言うとホイッスルを首にかけて腰に手を当てている。

町から出てきたであろう冒険者の目が痛い。

早く解放してくれ。


「はい、出欠とれました。夏目君が遅刻しているようだが?」

(なぁ星奏、なんで俺達おままごとをさせられてんだ?)

(雫の気分じゃないか?先生になりたい気分だったんだろ)


気分でこんなめんどくさいことするなよ。

俺は付き合ってられないと思い獅車に乗り込もうとする。


「高野君、何してるんだね?」

「いや…バスに乗ろうとしてました」


ここは一応世界観には乗ってあげてる風にするのが基本って星奏から聞いた。


「集団行動を意識しないさい。あなただけの修学旅行じゃないんですよ?」

「夏目君は今日風邪で来れないって言ってました」

「先生の方には連絡が来ていなかったですが……まぁ良しとしましょう。さぁ、藤川さんも乗ってください」

「雫はなんか先生ぽくないな」


星奏の言葉に雫は驚きすぎて変顔にしか見えない顔をする。

それに関しては俺も同意だが言わないお約束ってのを知らないのか?


「こんなセリフ、先生ぐらいしか言わないでしょ?」

「はよ、出発しろ」

「いてふ」


星奏が雫の頭にチョップを入れる。

雫は納得のいかない様子で獅車に乗り込む。


「まずは仙台に行くんだよな?だったらこの道を――」

「いや、そのまま札幌まで向かうぞ」


……は?


「ちょっと何言ってるか分からないですねぇ」

「星奏、私もそれ聞いてないんだけど」

「この貰った手紙にもう1枚手紙があってな。私達宛なんだが、これを明後日ぐらいには届けて。そうしないと札幌の貴族の人が受け取ってくれないんだって書いてあってな」


星奏パパって計画的に動くタイプと思っていたんだが意外とその場その場で何とかするタイプだったんだな。

俺と雫は眉間にシワを寄せながらなんとか笑顔を保つ。


「でも、時間内に届けてくれたら金額倍増してあげるってさ」

「サン達、前に進め!」


雫がサン達に命令をすると獅車が動き出す。


「雫、このルートで行けばすぐに着くぞ」

「お前達……ちょっとはキレてもいいんだぞ?」


金が手に入るってなら何でもしてやる。

早くあの20億あった時代に戻りたい!


「そんな事よりだ。私達はこれから10何時間かけて札幌に行く訳だがその際に起こる問題がある」

「はい!お腹が空くとかだろ」

「質問形式じゃないから別に答えなくていいんだぞ。それに不正解だ。雫がお弁当作ってくれてただろ」

「はい!眠くなるとかかな」

「半分正解半分不正解って感じだな」


眠くなるで問題になることか。

うーん…


「あっ!夜中の――」

「夜中は危ないから周りを見てくれる人が必要なんだ」


俺の言いたいことを取るなよ。

俺は大きなため息をつく。


「流石に長時間サン達を走りっぱなしにはさせれないから夜中寝かせないといけないし私も一緒に寝ていい?」

「それはずるくね?星奏、ここは平等に――」

「雫はいいぞ」


は?


「いやいや、いくら星奏と雫が恋人関係だからって流石にそれは世間は許してくれやぁせんよ」

「百合厨は黙ってろ」


酷くね?

百合厨にも人権はあるだろ。


「いいか?雫の眷属の動物は基本昼行性だ。つまり雫は昼に活動させた方がいい。それにお前の能力で光を出してもらわないと困る。まぁ私も一緒に起きてやるから安心しろ」

「まぁそういう事なら別に言う通りにしてやってもいいけど」

「自称天才には難しかったかな?」

「星奏、それは喧嘩売ってるって事でいいよな?俺より馬鹿なヤツ」


俺は揺れて足場が不安定な獅車中で立ち上がる。


「お前が私に勝てると思うのか?」


星奏はクックックッと笑いながら立ち上がる。


「2人とも、ここで暴れないで。狭いんだから」

「「だってこいつが!」」

「お昼ご飯……サン達にあげちゃおうかな」


俺と星奏は睨み合いながらすぐに腰を下ろす。


「だってこいつが俺の事バカって言ってきて」

「私はバカなんて一言も言ってないでーす」

「小学生並みの喧嘩は辞めてよね。みっともない」


どちらかと言うと中学生じゃないかな。


「こんなどうでもいい事で争ってる時間はないんだ。寝袋の準備をしないと」

「昼から寝るなんて生活習慣狂うぞ」

「お前は一睡もせずに夜中起きてられると?」

「俺なら楽勝だな」

「一睡もせずゾンビ達を倒せると?」

「ごめんなさい」


俺と星奏は寝袋を敷く。

星奏の寝袋は獅車の2分の1を埋め尽くすほどの大きさであった。


「時間も時間だしお昼ご飯にしない?」

「「するぅ」」



お昼ご飯を食べ終わった後、雫は俺のガイドどおりの道を進み続け出発から10時間以上経過した。

俺と星奏は夜中に向けて睡眠をとっていた。

正直、星奏が邪魔すぎて寝にくかった。


「竜、そろそろ起きて」

「うみゃ?後5分」


寝ぼけた俺が雫にそう返すと雫は俺の体を激しく揺らす。


「起きるから許してくれ」

「よし、ようやく起きた」


ちょっと起こし方乱暴じゃないか?

当たりは暗くなってきたので能力で明かりをつける。

俺は伸びをしてから横を見ると星奏はまだ気持ちよさそうに寝ていた。


「星奏はまだ起きないのか?」

「星奏は激しく揺らした程度じゃ起きないよ。今どうやって起こすべきか悩んでるの」

「そんなの簡単だ。まぁ見とけ」


人は眩しい光を浴びると起きるからな。

それを利用して。


「フラッシュ」

「うわっ」


星奏が飛び起きる。


「ほら、起きろ」

「うぇっ?あ、うん。ちょっと待ってろ」


星奏はかなりビックリしている様だ。

まぁいきなりピカって光ったら誰でもビックリするよな。

星奏は獅車を降りる。

水の音が聞こえる事から魔法で水を出して顔を洗っているのだろう。


「おぉ、あの星奏を一瞬で起こすってすごいね」

「どやぁ」

「じゃ、おやすみ」


雫は星奏が使ってた寝袋に入りアイマスクをして寝る。

サン達も雫と同じタイミングで眠りに入る。


「準備できたぞ」

「どれくらいの範囲を明るくすればいい?」

「獅車を中心として2、30メートルあれば大丈夫なはず」


結構時間が時間だし魔力結構食いそうだな。


「後はゾンビが来ない事を祈るばかり」

「十中八九来るだろうな」

「この辺の近くに町はなかったはずだから多分結構いるよな」

「それに東日本の町は農家にお金をかけてるから冒険者が少ない事も相まって町から遠い所は人の行き来がほぼないんだ」


星奏パパは農家に金かけてたんだ。

冒険者にかけてると思ってたんだがな。


「西日本に比べて土地が広いからな。土地が安いんだ」


なるほど。

壁で町と外を仕切ってるからほぼ意味ないと思うんだけどな。


「まぁ大丈夫、大丈夫。ゾンビが来ない事を神に祈り続ければきっと願いは叶うさ」

「信者キャラって最後まで神を信じるけど最後は神を恨むよな」

「確かにそういう敵キャラいるよな」

「もしかしたら天郎とかもそうかもな」

「確かに天郎はそれっぽいな。でも升は違う気がする」

「ていうか――」

「皆まで言うな。分かってる」


札幌にもゾンビ教の枢機卿連中がいるかも。

もしいたら絶対に戦闘になる。

そうなったら今度は負けてしまうかもしれない。

いや、大丈夫だな。

今までだってなんの準備なしに戦って勝ってきたんだ。

大丈夫、大丈夫。


「竜、剣を取れ」

「あ、フラグ回収早いな」

「その通り。ゾンビに囲まれちゃいました」


神よ、なんで私を見捨てたのですか。

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