サマーフェスティバル2
「電気系の攻撃が効かないってどうなってんだ」
「あれじゃない?私達が強くなりすぎたから敵を強くするためになんか電気攻撃に耐性がついたって感じ」
「そんなバトル漫画な世界なら良かったんだけどな。ここは現実だぞ。そんなのちょっとしかないに決まってるだろ」
「ちょっとはあるんだ」
「お前ら!口じゃなく手を動かせ!」
ボスは走りながら話してくる。
「しょうがない。王道パティーンでいこう。星奏、頼んだ」
「はいはい。サイコキネシス!」
「さーんにーいーちゴー!」
俺と雫は飛んで動物達の首元にまで行き剣を振るう。
「はい、一体目。次行くよー」
「す、すげぇや」
「あの、動物共をあんな簡単に…」
あぁ、やべぇ。今1番主人公してるわ。
これはそろそろ主人公ハーレム無双が始まるのかなぁ。
「ニャッ!」
俺は渾身の猫パンチで十数メートル吹っ飛ぶ。
「…痛い」
「唾つけときゃ治る!」
「赤チン塗ってあげようか?」
「お前ら何時代の人間だよ」
俺が立ち上がると猫パンチをしてきた猫が俺の背後にいる。
「チュールあげるから見逃して」
「ニャッ!」
「エアーウォール」
猫パンチが間一髪俺の目の前で止まる。
「ほら、こっち来い。サイコキネシス」
俺は星奏の方に飛んでいく。
「痛い。なんで敵の攻撃を最初に受けるのって俺なんだろ」
「主人公なんだからそれぐらいしろ」
「ずるいぞ!都合のいい時だけ主人公押し付けやがって」
「いいじゃん死んでないんだし」
「良くねぇよ。骨折したらどうすんだよ」
俺達が言い合っているとボスがやって来る。
「もう…むりぃ!うわっ!」
ボスは俺達の目の前で盛大に転ぶ。
俺達はさっきの猫と他の動物達がやってきたので速やかに避難する。
「ちょっと!お前ら、俺を助けろよ!俺が死んだら報酬渡せねぇだろ」
「命は金より重い」
「逆だろうが!」
動物達はボスに近づく。
「俺絶対お前らの枕元に化けて出やるからな!」
「俺っち枕使ってないんでやんす」
「そこはどうでもいいだろうが!」
他の冒険者達の言葉にちゃんと返している辺りまだまだ余裕そうだな。
それか強がってるだけかな?
(なんか向こうでめちゃくちゃ盛り上がってるし俺達が逃げた所で気づかないんじゃないか?)
(逃げるしかなさそうだしね)
(命あっての物種って言うしな)
俺達が相談しあっていると刀をもった男の人が走って来る。
「大丈夫だっちゃか?」
確か、あの人は…どっかで…
「あ、あの人。前の仙台のイベントの時に会った明田光金だ」
「あ、あれね。升を倒した時になんか強キャラっぽいセリフわ吐いた人だ」
「いたな、そんなやつ」
確か、パーティ組んでてもう1人いたんだよな。
どんなやつだったかな?
俺がどんなやつだったか思い出そうとしてると明田が来た方角から1人の女の子が走ってくる。
「ちょっと明田さん、私と走る速さ合わせてって何回言ったら分かるんですか」
「ごめんっちゃ。細川さん、許してっちゃ」
走ってきた女の子が明田をポコポコ殴る。
年齢は明田が18で細川って人が16とかそれぐらいか。
「ふぅ、なんか助かりそ――」
ボスが安堵していたけど猫はボスに食らいつく。
「ボス!」
「居合、閃光」
明田がそう言うと一瞬でボスに食らいついた猫の近くに行き猫の首を落とす。
「あれ?俺、まだ生きてる?死んでない?」
ボスはかなり困惑してるようだ。
俺達もしてる。
「もう、またなんですね。明田さんはどれだけ事件に巻き込まれればすむんですか。ソルバインド」
細川って人がそう唱えると地面からひも状の土が出てきて動物達の動きを縛る。
「うわっ、剣が!」
「ここまでか」
動物達と戦ってた他の冒険者の剣が俺達の近くに来る。
「ワン!」
犬はお手をする様に冒険者達を潰そうとする。
「トーナド!」
細川がそう唱えると犬は天高く打ち上がる。
「助かった…」
「ありがとうでやんす。貴方様は俺っち達の命の恩人でやんす」
「ちょっと照れるますね」
「可愛いっちゃね」
「可愛いって…ちょっと照れるじゃないですか」
うわぁ、なんか場の空気ほとんど持ってかれちゃったなぁ。
星奏と雫も立ち尽くしてるし。
なんというか、俺達の中で誰が主人公か言い争っていたけどこれを見るともう俺が主人公だなんて言えないな。
「ちょっと罪悪感があるっちゃけど恨まないで欲しいっちゃよ。ウサギ斬り」
明田はボスの周りにいた動物達の首を颯爽に切っていく。
「明田さん、上の子を頼みました」
「わかったっちゃ。昇龍剣!」
明田は上に向かって十数メートル飛び細川が飛ばした犬の首を切る。
ていうかその技名どっかで聞いた事あんな。
剣じゃなくて拳だった様な気がするんだが。
「あ、ありがとうございます!あの、なんとお礼を――」
「本当にありがとうでやんす。もうダメかと思ったでやんす」
「ありがてぇ…ありがてぇ…」
「いやいや、これぐらい普通っちゃ」
なんか俺達、その場にいるモブみたいだったな。
俺達はドっと気疲れしたのかその場に腰を落とす。
「なんか疲れたな」
「だね。今日は晩御飯食べに行く?」
「賛成。なんか今日は疲れた」
明田は俺達の方を見ると思い出したのか俺達の所に近づいてくる。
「確か、高野竜さん…だったちゃよな?」
「なんで俺の名前を知ってるんだ?」
もしかして、俺有名人になってしまったのか。
それにしては町中とかでは全然話しかけられなかったな。
もしや、マニアックな人は知ってる隠れ著名人的な感じか。
まぁ、それはそれでありだな。
まぁ、サインでもして――
「有輝から聞いてたっちゃよ。いやぁ、まさかあの時のあんただったとは思わなかったっちゃ」
「あ、うん。そうだね。そうだよね」
有名人なんかじゃなかったのか。
「俺は明田光金って言うっちゃ」
「宮風さんが言ってた子なんですか?どこかで見たような…」
細川は俺達の近くに寄ってくる。
「大会の時に壁をぶっ壊してきたやつらっちゃよ。あ、こちら細川藤恵って人っちゃ」
「よろしくお願いします」
「おかしな認識をされちゃってるね」
「なんか嫌だな」
この感じ…漫画とか小説で見たことあるぞ。
仲間に誘われたりするんだよな。
星奏、雫、俺はお先に重要キャラ化してくるわ。
でも、お前達のこと絶対忘れないからな。
俺、絶対にお前らの事裏切らないから。
細川はポケットから何か探知機の様な物を取り出す。
「あ、明田さん、ゾンビの反応がありました。ここから先十数メートルの所に少しだけどいます」
「わかったっちゃ。それじゃあっちゃ、竜、星奏、雫」
明田はそう言うと一瞬でこの場を去る。
「ちょっと!私と走る速さ合わせてって何回言えばいいんですか!もう。それじゃあまた会う機会があったら会いましょう。アロー」
細川は明田が殺した動物達を回収すると直ぐに明田が行った方に向かって走る。
細川には多分親戚とかにフランス人がいるのかな?
「なんというか、散々な日だったな」
「もうこんなのに参加しないと誓うから私を悪者にしないでくれよ」
「言われなくてももうしてるよ」
「本当にすまん」
「早く帰ろうぜ。今日は星奏に罰ゲームでもしてもらおう」
「さんせーい」
「本当にやめてくれ」
俺達は立ち上がる。
「じゃあボス、報酬を」
「…報酬は俺の気持ちさ」
ボスはそう言うとすぐに逃げる。
「…本当に散々な日だな」
「…まぁ、いっか」
「竜、あの氷の服出して。私も着たい」
「はいはい」
「あいつ、逃げやがってやんす!許さないでやんす」
「金は命より重い!」
「捕まえろでやんす!」
他の冒険者は元ボスの方に向かって走る。
「俺、絶対皆の事裏切らないから!」
「もう裏切ってるやつに言われたくないでやんす!」
普通の夏を満喫したいなぁ。




