天候に打ち勝つ者2
空はさっきまででは考えられないぐらいの晴天になる。
「いい感じに締まらなかったが俺達の勝ち確だな」
「ひとつ言わせて貰おう。確かに俺の武器が1つ減った。だがそれがなんだと言うんだ。まだ勝ち確だと断言するのは早くないか?」
「いや違うな。お前にはその武器しかなかったんだ」
俺は煽るように言う。
「なんか竜が今までにない程主人公感を出してるよ」
「まぁ仕方ないだろ。そういうお年頃なんだから」
2人がうるさいが俺はそのまま続ける。
「お前の雹はかなり厄介だった。雷を連発させるわでっかい氷を落としくるわで散々だった」
「そうだろ」
「だが、お前の強みはそれしかないんだ」
「何言ってんだ。俺はまだ3万も魔力を持っている。俺の強みとして魔力量の多さもあげられるだろ」
「いや、ないな。ないない」
「なんだろう。竜がこういう言い方するのなんかムカつく」
「雫、今は静かにしておいてやろう。あいつが可哀想だ」
2人ともさっきから邪魔しかしないな。
「何を言ってるんだ?お前達以上に魔力量があるじゃないか」
「じゃあお前どれくらいの魔力を今までに使った?確か上級ゾンビの魔力量は大体100万と聞いたが」
「うっ!それは…」
俺はニヤリと笑う。
「竜がなんかスッキリした顔になってる。煽ってて気持ちよくなったのかな?」
「まぁ相手より優位な立場に立って上から目線決め込んでるからな。気持ちいいんだろ」
「気持ち悪いね」
2人とも、流石の俺も泣くぞ。
せっかくかっこよく決めてんのに邪魔されるの嫌なんだけど。
確かに相手煽ってて気持ちよくなってた事は認めるけどさ。
「ちなみに俺達の残り魔力量は俺が5000で」
「私が4000ぐらいだよ」
「私はさっき言った通り1000ぐらいだ」
「お前らは合わせても1万しかないだろ。俺の圧勝だな」
「バトル漫画もので相手を数値だけで判断するやついるよな」
「そういう奴って大体死ぬよね」
「な、なんだ!?こいつ、戦道力が跳ね上がってやがるってな感じでな」
「ここは現実だ!2次元と一緒にすんな!」
煽るのはこれぐらいにしとくか。
いい感じに平常心をなくせたらそれでいいんだ。
「なんか竜が決め顔してる。絶対考えても無かった事をあたかも最初からこれを狙ってたみたいな感じなんだけど」
「雫、竜は多分大きな病を抱えているんだ。厨二病って言ってな。それはもう精神科の病院に言っても治らないんだ」
「嘘…。じゃあどうやったら竜は治るの?」
「待つしかないな。厨二病はある日、恥ずかしさとともに治ると言われているんだ」
2人ともめちゃくちゃ言うじゃん。
俺もう半泣きだよ。
俺は今、同僚の指示を受けて高野竜達を倒しに来ているのだが絶賛大ピンチです。
天候を雹に変えるために結構お高めっぽい魔力玉を使ったり能力無効玉だったりを使ったのだが全てダメでした。
どうしようかなぁ。
一旦逃げて体制を整えるのもありだけどもう1回あいつら相手にすんの厳しいな。
他のヤツらに任せるか。
俺が教祖様に着いて行ったのって別に世界を本気で滅ぼしたい訳じゃなくて仲間が欲しかったからって言うだけだしな。
よし、そうしよう。
逃げるか。
でもあいつらの場合逃がさないように壁貼ったりしそう。
うーん…そうだ!あいつらをどっかに飛ばせばいいんだ。
天才!秀才!升、ジーニアース。
「吹き飛べ!台風!」
「なんだ!?うわぁぁ」
「またなのーーーー!?」
「あぁぁぁぁあ!」
よしこれでおっけー。
後は俺がササッと逃げるだけ。
これするためにわざわざ1万程魔力使ったから魔力が枯渇気味だ。
帰ったら何しようかな。
漫画でも読もうかな?それともなろう小説でも読もうかな。
俺達は今絶賛、空中に飛ばされている。
「はぁ、またかよ」
「あいつ、私達からそっぽ向いてるぞ!」
「逃げる気なんだね」
逃げる?何を言っているんだ。
俺達に喧嘩売っといてそれはないだろ。
でもなぁ、命の安全が確保される訳だし別にこのまま逃がしてもいいんだが。
「あいつの賞金、600万はあったんだけどなぁ。それにあいつのゾンビ能力因子を売れば更にお金が。能力の内容が分かってる訳だし売れるぞ」
金か命か。
もちろん命の方が大事なんだけどさ。
俺は考え込む姿勢に入る。
「星奏、竜が多分お金か命かで悩んでる」
「これ言ったらどうなるか試してもいいか?」
星奏は雫の耳元で何か囁く。
「あ、いいね。じゃあどうぞ」
「金は命より重い!」
「よし、星奏。あいつと俺達をサイコキネシスで…えっとそうだな」
そうか。あそこなら俺達に超有利だ。
「あっちに飛ばしてくれ」
「ゾンビ相手にサイコキネシスは使えないんだ。あいつらちょっとだけ能力に耐性持ってるんだ」
「じゃああいつの地面丸ごと持ち上げろ。全魔力を使ってもいい。とにかくあっちに行ってくれ」
俺はある方向を指さす。
「あっちって…あぁそういう事」
「ん?あーね。竜ってそういう事はすぐに思いつくんだね」
そういう事以外もだろ。
「じゃあ行くぞサイコキネシス!」
星奏がそう言った瞬間かなりのスピードで俺達をある所に向かう。
「え!?なになに?地面が持ち上がって…うんわぁぁぁぁ!」
升も無事にあそこに来れそうだ。
「おい、今月もあいつらだっちゃかよ」
「どんなけ金を使ってるんだっちゃ」
「終了5分前にこんだけゾンビを狩ってこれてる事に流石に驚きを通り事してキモイが勝つだっちゃな」
「なんとでも言えばいいっちゃ!今月も俺達の勝ちなんだっちゃ!魔力強化玉は貰っていくっちゃ」
「「「「「「クソがっちゃ!」」」」」」
俺達は仙台の町のお祭り会場のコンティニュー可能エリアにまで吹っ飛んでいる。
「ねぇ、これ着地どうするの?」
「星奏のサイコキネシスで大丈夫だろ?」
「え?私もう全部使ったんだけど」
「…は?」
おいおいそりゃないぜ。
「雫、一緒に強めの風を出してくれ」
「死にたくはないよ!強風!」
「強風!」
俺達は少し魔力が無くなるが強めの風を俺達の移動方向とは反対の方角に向けた風を出す。
「うぐぐぐぐぐぐぐ」
「うびびびびび」
「うぎゃぁぁぁぁぁぁ!」
俺達はコンティニュー可能エリアの周りにあった壁をぶち壊して進む。
そして地面に落ちそのままズズズと進む。
「うっいてててて」
「もう少し魔力を残しておけば良かった」
「竜が全部使えって言うから」
「言ってねぇよ。全部使ってもいいからって言ったんだ」
俺達がそんな事を話していると升が遅れて壁をぶち壊して落ちてくる。
「痛いなぁってここ、町の近くじゃん。ていうかいっぱい人いるじゃん」
「おい、あいつ!あんな所から落ちたのに傷1つついてないっちゃぞ!」
「もしかしてらゾンビかだっちゃ?」
「ち、違いますよ。俺は再生能力系の能力者でして――」
「ていうかあいつ指名手配犯の樹田升じゃないっちゃか?」
なんか野次馬共が話しているが関係ない。
「行くぞ!」
「もちろん!」
「私は後ろにいとくわ」
魔力なくなったからな。
後ろに下がってくれた方がまだマシだ。
「まぁいい。こうなったら本気で相手してやる。全身強化!」
升は俺達の視界から姿を消す。
「まずはお前だ!藤原誠華!」
「うっ!」
升は星奏の胸を手で貫く。
「うっうわぁぁあ!」
星奏は何か叫んでいる。
「はい、1キルぅ」
「クソっ!」
「ライトニング!」
「純水!」
「はい後ろががら空き」
「クソっ」
「グランドランス!」
「無駄無駄」
雫の魔法が升の体を突き刺そうとするが全て砕け散る。
「これで2キルゥ」
「うっ!」
升は俺も星奏同様突き刺そうとするがその手が途中で止まる。
「どうもーあの世から復活した藤川星奏です」
「なんでだ?……もしかしてここはお祭りの復活可能エリアか」
「そういう事!」
「クソっ!逃げるしか」
「させないよ!」
雫は升の右腕を切り落とす。
俺は南根雫に右腕を切り落とされる。
クソっ早く再生しろ。早く!
「ブラウニー!頼んだよ!」
俺はあいつらから背中を向けて走り去ろうとする。
大丈夫。全身強化の魔力を脚強化に回せば――。
そうすると鷲が俺の足元を引っ掛けてきて俺は転ぶ。
その隙にまた南根雫が近づいてくる。
大丈夫、腕はもう再生した。
どうせ首を取ろうとしてくるんだろ?
俺は身体能力強化の能力で首の防御力をかなり上げる。
これで俺の首は取れまい。
と思っていたのもつかの間、南根雫は俺の首ではなくまた右腕を切り落とす。
「くっ!」
クソっ!
再生能力が遅くなるのも困りもんだ。
早く治れ!治れ!治れ!
俺は首に向けていた意識を右腕に向ける。
よしっ再生が始まった。
俺は一旦立ち上がる。
「はい、油断したな」
高野竜が俺の目の前に現れる。
「はっ!」
「もう遅い!」
高野竜は俺の首元に向かって刀を振るう。
俺は首の防御力を強化しようとしたが時間が足りなくそのまま首を切り落とされる。
「コンティニュー可能エリアでもゾンビの復活はできないよな」
「でも一応外に出しとこ。近いし」
「そうだな」
俺はそのまま升の死体を蹴り飛ばす。
そして升の死体は腐りだしゾンビの姿になる。
「これで大丈夫そうだな」
<ええっと今月の優勝者は明田光金さんのパーティーです>
大会はもう終わってたみたいだ。
マジかよ。うぐっ。
「お兄ちゃん、いい戦いを見せて貰ったっちゃ。これからも精進するんだっちゃな」
刀を腰に掛けた優勝者は俺の肩を叩きサッとその場を後にする。
「なぜだろう。なんか悔しい」
「まぁいいよ。帰ろ」
「換金しとくか。こいつと能力因子」
俺達は悔し涙と共にその場を去る。




