奇襲
神様、もし俺が何か悪い事をしたと言うなら全力で償います。
ですので…
「人を吹き飛ばす程の強風を吹かせないでください」
「キャー!」
「人を吹き飛ばす強風が吹くなんて、運が悪かったな」
「運が悪いで片付けるな。それより星奏、早くサイコキネシスで俺達を止めてくれ」
「あ、忘れてた。すまんすまん」
星奏がそう言うと俺達が空中でピタッと止まる。
「死ぬかと思ったよ」
「運がいいんだが悪いんだが」
「今思い出したら恐怖でどうにかなりそうだ」
走馬灯が一瞬見えそうになったわ。
これだから引きこもりが増えるんだぞ。
そんな事を思っていると風がやむ。
「下ろすぞ」
「はいよ」
「ゆっくりね」
「分かっとるわ」
星奏のおかげで生きて地面に着くことができたのはいいが。
「かなり離れてしまったな」
「早くさっきいた場所に戻るぞ」
「ちょっと待って」
俺達が元の場所に戻ろうとすると雫が何か見つけたみたいだ。
「どうしたんだ?」
「ブラウニー視点を見るとね。そこの屋上に誰かいるの」
雫はそう言い真横にあるビルを指さす。
「人だろ?なら別にいいんじゃないのか?」
「前に会った天郎を覚えてる?」
「もちろんだ。忘れる訳が無い。あんな厨二病の塊みたいなやつ」
「その言い方はなんか可哀想。まぁいいや」
「それで天郎がどうしたんだ?」
「そいつが着てた赤色の服と一緒のやつを着てる人がちょうどこのビルの屋上にいる」
あの宗教っぽいやつか。
「…ってまずい!エアーウォール!」
星奏が唱えた瞬間、雷がなんの前触れもなく落ちてくる。
エアーウォールのおかげで雷が直撃する事はなかった。
「マジで?それ気づいちゃうのか」
1人の男が歩道の柵も持ち上げるような上昇気流の発生と共にゆっくり降りてくる。
俺が前に高い所から飛び降りた時に使ったぐらいの上昇気流だろうか?
いや、それ以上だろうな。
「気づかれないようにしたつもりなんだけどそこのちびっ子にはバレちゃうのか」
「ちびっ子言うな」
「この状況でそんな事を言える雫は尊敬してやるよ」
「いつも尊敬しろ。ご飯作ってあげてるでしょ」
「じゃあその時の雫も」
「なんでいつもじゃないの?」
「星奏、言ってやれ」
「なんで私?雫の事は少しは尊敬してる所あるから竜が言え」
「いや、なんで俺が言わないといけないんだ。こんな残酷な事をさ」
「どんな事を言うつもりなの?」
「…かっこよく降りてきたのに全く相手にされないんだけど、俺」
男がそんな事を涙目ながら呟く。
無視してやろ。
「雫、お前をずっと尊敬出来ない理由はな…」
「理由は…」
「あ、続けるんだ。普通ここから相手するもんじゃないの?しかもずっと安全なところにいるじゃん。このバリアを早く解けよ」
「クソっやっぱり言えない」
「言えよ!」
なんとなくだなんて口が裂けても言えない。
「…あのぉ。俺の事忘れて――」
「雫、大丈夫だ。私はお前の事を良い奴と思っているし信頼もしてるから」
「それで許してあげるよ」
「じゃあ俺も信頼してるから許して」
「しょうがないなぁ」
「来るタイミング間違えたかな?こんなかっこよく登場したのにしくしくしながら退場すんの?嫌なんだけど。恥ずかしいんだけど。俺が厨二病みたいになるじゃん」
「さっきから独り言多いなお前」
「気づいてるなら話しかけろよ!」
気が付いてるよ。
気が付いてるけどこの状況じゃ無視するのがいいかなって。
「まぁここまで来たら最後までやったやる。俺の名前は樹田升、上級ゾンビにて天候を操りし者!ゾンビ教の枢機卿の地位に就きし者」
「厨二病とか最近流行らないって。今流行る挨拶の仕方は俺の名前は高野竜、普通の高校2年生。これよ」
「いやいや、今流行ってるのはあーしの名前は南根雫。かわいいものがちょー大好きな花の高校2年生!今はビンスタ映えスポットに来てるんだー。マジアゲアゲー!これでしょ」
「いやいや今流行ってるのは――」
「もういいよ!お前らは俺の挨拶を聞いておけば良かっただけなの!分かってる?俺はお前らの敵!いいか?」
「私も自己紹介をさせてくれよ」
「別にいらねぇよ。藤原誠華だろ。知ってんだよ。情報はもう沢山あんの。もういいか?」
升はゾンビとは思えないほど顔を真っ赤にして怒る。
ゾンビって血が通ってるんだな。
「じゃあもういいや。で、俺達に対しての要件はなに?早くして、忙しいから」
「敵って言っただろ!お前らの命を狙いに来たんだよ」
「なん…」
「だっ…」
「て?私だけセリフ短いな。てだけかよ」
「私なんてだっだけだよ」
「話を脱線させるな!」
升は深呼吸をし心を落ち着かせる。
「とりあえず…死ね!」
升は星奏のエアーウォールを殴りいとも容易くそれを壊す。
「あ、どうも」
「覚悟はいいか?――」
「俺はできてる」
「俺のセリフを勝手に言うな。津波!」
升は手先から大量の水を出す。
「星奏!」
「任せろ、サイコキネシス!」
俺達は空中に浮かび上がる。
「うわ、あんな水流に当たってたら今頃窒息死してたわ」
「こわいな」
「これぐらい真正面で受けろよ!」
「そんなの私達が馬鹿正直に受けるわけないじゃん。情報持ってる癖にそんな事も理解出来ないんですかー?」
雫、めっちゃ煽るやん。
可哀想と思わんの?
「とりあえずお前からだ!南根雫!。脚強化!」
升は雫に向かって飛んで行く。
「落石!ドッカーン!」
雫は飛んできた升の頭に1mぐらいの岩石を魔法で作り落とす。
「グベェファ!」
変なダメージ音と共に升は地面に落ちる。
俺達も地面に降りる。
「早く首を取らせてくれない?俺達今、イベント中なんだ」
「ボスイベントが発生したらそっちを優先しろよ」
升は岩石から頭をだし所々の傷を再生する。
「とりあえず、大剣を持ってて騎士っぽい私が前衛で」
「頭がよくて運動もできる俺は星奏の後ろで」
「それを言うなら星奏も頭がよくて運動もできるけどね」
雫の言う通りだが俺は星奏より頭がよく星奏より運動ができないんだ。
「で、私はどこにいればいいの?」
「俺と同じぐらいの場所でいいだろ。離れてても助けに行けないし」
「なんかバカにされてる気分」
「戦闘中に作戦会議をするな!いいか?俺はボスだ!ボスなら怖がれ!」
「ボスなら主人公に倒されるだろ」
「じゃあ主人公の仲間!」
「設定甘すぎないか?」
「うるさいうるさい!とりあえず俺にだけ集中してろ!」
めんどくさい彼氏かよ。
「もういい!ボスらしい事をしてやる。来い!我が同胞たちよ!」
するとゾンビ達が2、3体現れる。
「意外と少ないな」
「まぁ今、ゾンビを倒すイベント中だしな」
「タイミング悪すぎだろ」
「このタイミングを選んだのお前なんですけど。お前がビルから降りてこなかったらこんな事にはならなかったんですけど」
「うるさい!ライトニング!」
「水」
俺は魔法で純粋な水を出し升の雷魔法を防ぐ。
「知ってるか?純粋な水って電気を通さないんだぜ」
「知っとるわ。中学で習う範囲だろ」
俺は独学だからどの辺の範囲かは知らん!
「そういえばお前、自己紹介の時になんて言ってたっけ?天候を操りしもの…だったか?天候を操ってる様子全くないじゃん」
「自己紹介で言ってるくせに使わないとか恥ずかしくないんですかぁ?」
「ざぁこざぁこ」
「星奏、お前がメスガキのセリフを言うな」
「言わせろ。流石に私が可哀想だろ」
「あぁもうどうなっても知らんぞ!」
升はそう言い服の中を漁る。
そして、水晶玉を取り出す。
「流石の俺もキレた。知ってるか?いじめられっ子はキレると彫刻刀を持ち出すんだ。その姿は今までの鬱憤を晴らすかのような笑みを浮かべてな。」
意味不明な例えを言うと升は不敵な笑みを浮かべる。
すると突然、周りが急に寒くなり小さな氷の粒が降り始める。
「雹」
空から小さな氷の塊が降り注いでくる。
そして空がゴロゴロとなり始める。
「ここからは俺のステージだ」
これは…バカにしすぎた罰かな。




