表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
[完結]世界の終わり  作者: ワクルス
この世界
57/265

梅雨 2

「ただいまー。うわーめちゃくちゃびちゃびちゃじゃん」


カッパを脱ぎハンガーで干しながら雫が言ってくる。


「はい、おかえりー。じゃあ俺、お風呂に入ってくるから」


...まてなんかデジャブを感じるぞ。

この後に雫達が言う事は


「「「ここはレディファーストだろ。譲れ」」だ!」

「「はっ!」」


だと思ったぜ。

だが今回は靴下がガチで気持ち悪いんだ。

俺が入らせてもらう。


「お前らは時間がかかるだろ?でも俺はお前らより早く出れるぜ」

「お前のお風呂に入ってる時間は雫と一緒ぐらいだろ」


否定できない。どうする?


「じゃあ効率を考えてジャンケンで」

「分かってるのか?2対1だぞ?勝つ確率的にこっちが高いんだよ」


これは運ゲーつまり運が強いやつが勝つ。

俺の運を舐めるなよ。

俺はグーを出して待機する。

俺...ジャンケンしたことねぇから。

いや、した事はあったな。

じゃあ、俺...3分の1しか引いた事ねぇから。

これも違うような...


「ジャンケンポン!」


最初はグーを言わないタイプかよ。

そんなんで勝っても意味ないだ...


「で、負けるのかよ。お前ら」


雫と星奏はチョキを出したので俺の勝ちという事に。

逆になんでこれで負けるんだ。


「じゃあお先に」


星奏達は地面に倒れ込み甲子園の土を集める野球少年みたいなことをしている。

せめてタオルだけでも持ってきてやるか。



「はいよ上がったぞ。...いつまでやってんだ?」


星奏と雫はまだ甲子園の土を拾ってる野球少年みたいなことをしている。


「やっとか。雫、早く入るぞ」

「もちろん」


雫と星奏が急いでお風呂場に向かう。


「しょうがない、晩御飯ぐらい作ってやるか」


雫がよく見ていた本にレシピ本があったことを思い出しそれを参考に作ることに。

ちなみに俺は料理ができるかできないかで言うとできる方ではあるだ。

小学生の時の調理実習でよくチッ!なんでこんな陰キャっぽいやつが私よりはできるのよとか聞こえてたからなぁ。

まぁこっそりレシピ本見てたからなんだけどね。

雫並にできるかと言われるとできないと断言出来るほどだ。

俺はそう考えながらレシピ本を本棚から取り台所に向かう。


「あいつらのいつもの入浴時間は40分ちょっとぐらいで冷蔵庫の中身的にできるものは...」


俺はとてつもなく驚愕した。

なぜかって?そんなの決まっている。


「中身が...ねぇ」


朝ご飯の時は一応はあったよな?

...今日のそういえばお昼ご飯結構豪華だったな。



「竜、なんでそんなかしこまった感じでテーブルに座ってるの?」


雫は髪を乾かし終えたのかすぐさまリビングに来る。


「雫、今日の晩御飯は何にするつもりだった?」

「あぁ冷蔵庫見たんだ。別に何も考えなしに冷蔵庫の中の物を全部使った訳じゃないよ。消費期限が近かったていうのもあるけど1番の理由は...これ!」


雫がテーブルの上に置いてあった新聞紙を開く。


「生活協同組合っぽい事、始めました?」

「そう、お金は払ってあるから今日、届くはず。時間的にもうそろそろかな」


なるほどちゃんと計算していた事だったのか。

雫がチラッと時計を見る。


「...ごめん、時間的にはもう来てないとおかしい時間帯だった」

「...えっ?」


そういえば外が賑やかだなと思い傘を持ってベランダに出る。


「なんか人が血まみれで倒れてるぞ」

「ちょっと待ててね」


雫が物置部屋から双眼鏡を取り台を置く。

そしてその台に立ち双眼鏡で辺りを見渡す。


「あれは...ごめん。あの人、生協の人だ。そしてめっちゃ頭から血を出してる」


おいおいまじか。もしかして。


「いや待て、まだスーパーは開いてるはずだよな?」

「残念、もう閉まってるよ。あそこの店員、おじいちゃんしかいないから」


年寄りは早寝早起きだとは聞いていたがここまでとは。



「お腹がすいて力がでねぇよぉ」

「駄々こねないの」

「とりあえずどうするかの会議を始めようか」


やっと髪を乾かし終えた星奏がそんな事を言い始める。

なんでお前は冷静なんだよ。


I'm hungry(俺はお腹がすいてます).so, (なので)I (俺は)want to(すぐに) eat soon(食べたいです).オーケー(頭大丈夫)?」

「オーケー、オーケー。You(あなたは)should die(〇ぬべきだ)

「日本語で会話してくれるかな?」


運動してきてお腹ペコペコ状態なのにご飯食べれないはキツすぎる。

世界の恵まれない子供達もこんな感じなのか。

今はもういないけど。

いてたら一瞬でユニセフに行ってるわ。

ていうか星奏、シンプルな悪口を言ってくんなよ。


「どうしよう、このままじゃ餓死(がし)するよぉ」

「人は1日食べない程度なら生きていけるらしいぞ」


そんなことは知ってるわ。

お腹がすきすぎてんだよ。



「雨ってお腹にたまるかな?」

「星奏、また竜が壊れた。トンカチ持ってる?」

「いや、ここは手でやっても大丈夫じゃないか?」


竜が空腹すぎて精神を壊しちゃったかも。


「壊れてないわ。ちょっとでもこの空腹を紛らわそうとしているだけだ」

「これぐらい我慢しろよな」


星奏はそう言うとお腹を鳴らす。

少し顔を赤めるが頑張って平気な顔をしている。


「星奏だってお腹空いてるんだろ?」

「そうだが何か文句でもあるか?」

「開き直りやがったぞこいつ」


星奏は開き直ることでなんとか平然を保っている。


「もうこうなったら最後の手段だよ」

「そんなのがあったのか。早く教えてくれ」


最後の手段...それは


「歯を磨いて寝よう。じゃおやすみ」

「...ちょっと待て。考える事を放棄してないか?」

「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」


正直もうどうにもならない事を考えても意味が無いからね。

なら諦める。

無理と分かっているのに諦めないなんてバカがやる事さ。

時には諦めない事が大事な時だってあるけど。


「待て、冷蔵庫の中を見落としているという説はないか?」

「なるほど。すぐに確認する」


全く最後まで足掻くなんてバカだね。

勉強はできるのに考える脳みそがお猿さんになっちゃったのかな?

そんな事を思いつつ歯を磨きながら星奏達の会話を聞いたり、行動を見る。


「...やっぱりない。隅々まで確認しているがそれらしきものなんてないぞ」

「...ていうかさ。食堂に行けば良くないか?」

「あっ確かに...でもこの雨の中お風呂に入った後に行くのもなぁ」

「お前ってたまに女々しいよな」


竜は以外と肌とか気にしてるしね。

前、竜の聖剣を見た時の洗面台に私と星奏が使ってる物じゃない化粧水と乳液があったし。


「もう1回入ればいいだろって言われるかもだがお風呂は何回も入ると逆に臭くなるとも聞くしな。食堂に行くとなったら靴を履くだろうしまた体を洗いたくなると言うことを考えに入れると...結論、いけない」


空腹と匂いを取るなら迷わず匂いを取るのか。

...竜の方が私達より女子力高いんじゃないのかな?


「どうしたものか」

「ガスはある、水道もある、お箸もある。なのに食材がない。おかず買ったのにご飯も箸もねぇパターンか」


ちょっと竜が変な事を言ってるけど気にしない。

本当に何が言いたいのか伝わらないんだけど。


「なぁ、ずっと思ってたんだが」

「どうしたんだ星奏?」


私は歯磨きが頃合になったのでさっさっとうがいをして元の位置に戻る。


「いやな、そこのまな板とか置く所の上にある戸棚って何が入っているのか気になるんだが」


確か、そこは...あっ!


「待ってなすぐに確認する」


竜は戸棚を開け中を確認する。


「星奏...ナイス!お手柄だぞ」


竜は戸棚からカップ麺を取り出す。


「雫、考える事を放棄しなかった結果こんなのが出てきやしたぜ」


そこの存在は完全に忘れてた。

前に非常食ににとリサイクルショップで買っていたやつだ。


「星奏、一緒に食べるか」

「そうだな」

「...私も食べたいなぁ」


少し目をそらしながら言う。


「歯磨きしたのにか?」

「後でもう1回磨けばいいの」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ